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第四十話

 月涼と仁軌が仲達の遺体が捨てられた場所へ向かう中、延妃と藍は、右大臣宅に到着し屋敷の中で右大臣の謀反の証を探すのだった。そして、奏たちは、待つだけの時間にいら立ちが募る状態であった。『絶対に何もするな!』といった月涼の言葉が気になるが、奏としても何とか打開策を考えたかった。


 「奏様…。本当にこのまま待つだけしかないのでしょうか?」

 「ああ。月涼に考えがあるのは、間違いない。だが、このままと言うのも…。表立って動くのはまずいが何かやれることが有るはずだ。」


 輪と奏の会話に少し蚊帳の外気味のルーリーが意見してきた。


 「あのさ…。月涼が何もするなとは、言ったけど…。ここにいる必要はないよね。それに藍達が帰ってくるとはいえ、謀反の証を持ってきた後、どう動くかを最優先で考える方が良いんじゃないの?」


 ルーリーの言葉にハッとした奏は、重慶と輪にこの場を任せると言って、陣営に大急ぎで戻って行った。取り残された二人は、あっけにとられて自分達だけどうすればいいのか?と途方にくれるのだった。重慶に至っては、悔やんでも悔やみきれない…。と自分の浅はかさに嫌気がさす。


 「重慶あんたは、藍を待ちな。謀反の証とやらが確保されたらすぐ、延妃の命を守ってやらなきゃならないだろ?娘の命なんて何とも思っちゃいない父親だろうし、無事に皇后の元へ連れてってやる人が必要なはずだ。そう思わない?」


 重慶は、頷いて待つしかない状況に耐え、輪は、ルーリーがついて来いと言うのでその後をついて部屋を出た。


 「ルーリーさん、いったいどこへ連れて行くのです?」

 「良いからついといで、とにかく着替えを済ませなきゃね。」

 「えっ?着替えですか?」

 「ああ。ただただ、部屋でうなだれてても仕方ないだろ?」

 「はい。そう思ってます。」

 

 ルーリーは、輪をこの宿の宴会場に酒を運ぶ仕事に紛れ込ませるのだった。『こういう場は情報の宝庫だ。耳をしっかり働かせて、何を話してるか接待しながら聞いてきな。』ルーリーからそう言われた輪は、きっと役に立つ情報をつかんで見せると意気込んで、宴会場に足を踏み入れるのだった。

 一方、月涼と仁軌は、仲達の遺体があるであろう場所までたどり着いていた。


 「ふう。さすがに寒いですね。」

 「ああ。この辺りは特にな…。おい。あそこを見ろ月涼!!」


 検討をつけてきた場所で歩き回って、少し傾斜になっている場所を覗き込んだら、筵にくるまれた人のような大きさのものが、雪が残る草むらに転がっているのが見えた。二人は、急いでそこに駆け降りて確認しようとしたが、少しだけ躊躇する。『どうか五体満足の姿で!!あるように』と願いながら仁軌が筵に手をかける。固唾を飲み込む月涼…。

 ゴロンと転がるように筵がはがされて、仲達の遺体であろう姿が見えた。


 「ああ!!良かった。首ついてますね!!」

 「ああ。月涼。なんとかなるぞ。」


 仁軌が冷たくなった仲達を抱きかかえ一緒に馬に乗せた。


 「月涼、とにかくこのままこの場から離れよう。まず、体を温めるのが先決だ。近くの川に温泉が湧き出ている所がある。そこに向かうぞ!!」

 「はい。」


 川辺に付いた仁軌は、仲達を下す。そして、ドボンとその川の中に放り込まれて沈んでいくのだった。そこへ、仁軌も一緒に入り、沈んだ仲達を抱きかかえ温めるために、背中をさすり始めた。


 「仁軌さん。それで意識が戻るんですか?」

 「ああ。仮死状態にする薬だから、もうそろそろ、戻るはずなんだが…。そうだ、お前に持たせた荷の中に酒があるそれを取ってくれ。気付で口に入れる。」


 月涼が仁軌に酒を渡すと仁軌が口に酒を含み、仲達の口に無理やり含ませるのだった。


 ゴホッゴホッ…。せき込んだ後、仲達の目がうっすらと開き、仁軌を見つめる。


 「た…、助かったのか?」

 「仲達さん。お帰り…。ったく心配させないでくださいよ。」


 月涼のこの言葉で、安心して、また気を失う仲達だったが、今度は、ただの疲れですぐ目を覚ますのだった。

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