第三十九話
仲達の亡骸は、秘密裏に城外へと運ばれた。第一皇子は、首を取って城壁に掲げよと言ったが、大臣全員が揃って、それを止めたのである
「お待ちください!!そんなことはなりません。籠城して戦うとしても準備もないままでは、到底無理です。それに、遺体を確認した医師が、病の可能性も示唆しておりました。もし、首をはねて、伝染しては城内がどうなるのか?やっと、落ち着いてきたばかりなのですぞ。」
さすがに左大臣が第一皇子に苦言を呈する。他の大臣もそれに同調し、その場は凍り付いていた。大臣全員の反対で、遺体は、そのまま筵にくるんで出すことが決定し、今後の事を話し合う会議が始まるのだった。一方その頃、黄黄が月涼の元へたどり着き、仲達の文を見せるのだった。そして、黄黄は、人型になって、仲達の最後の様子が気になることを月涼に訴えていた。
「月涼の文を読んですぐ、すごく思いつめた顔をしたんだ。それから…懐から文を書く道具と一緒に何か手にもってた…。それで、その文を書き終えた後、目を潤ませて頭をなでてくれて…。もう会えないかもって…。」
月涼は、その話を聞いてしばらく考え込んだ後、重慶に聞くのだった。
「重慶、遺体を秘密裏に城外に出すなら、どこに出すか分かるか?」
「それなら、私の方が知っている。」
重慶より先に仁軌が答えた。
「どこですか?仁軌さん。いますぐそこに向かいたい。」
「城の北側城壁から出て、迷いの森と呼ばれる万年雪が積もるところだ。」
「案内できますか?」
「ああ。急ごう。これには、多分、私の出した案がかかわっている。」
二人の会話についていけなくなった、他の者たちが『いったい、手紙になんと書かれていたのか?』と聞くのだった。月涼は、『手紙には一言だけだ。傷一つなく遺体の回収を頼む。』だと伝えた。
「ちょっと待て!!仲達は、すでに亡くなっているという事なのか?月涼!!」
奏が真っ青になって叫び、輪の嗚咽が静かな部屋に広がった。
「そんな!!死を選ぶようなところまで来ていたのか?」
重慶がわなわなと肩を震わせ、自分のせいで、奏の忠臣を失わせてしまったことに呆然とする。そんな中、月涼は、いたって冷静に仁軌と出かける準備を始めるのを見て、月涼につっかかった。
「お前は!!悲しくないのか!!なぜそんなに淡々と動けるんだ。」
「うるさい!!非常事態なんだ。とにかく仲達さんの所に急がないといけないんだ!。傷がついてからじゃ遅いんだ!!奏は、黙って、藍と延妃が無事に帰ってくるのを待ってくれ。仁軌さん行こう。」
月涼は、奏の手を振りほどいて仁軌を伴って、馬に鞍をかけて、最低限の荷物を積み込んだ。そして、奏に、自分が帰ってくるまで、絶対に行動を起こすなと念を押して出かけるのだった。
後に残された奏たちは、呆然と月涼と仁軌を見送るしかなかった。
月涼は、馬でかけながら仁軌にさっきの『案とはなんだ?』意味を教えてくれと言った。仁軌は頷いて、仲達と交わした話をする。それは、『どうしても城外へ出れなくなった時に自分が渡した丸薬で行う苦肉の策』として出した案だったと。だが、それは、かなり危険で、遺体見分を行うものが味方じゃないと失敗してしまう可能性が高い策だという事だった。
「やっぱり、だから遺体の回収を頼んできたんですね。傷一つなくという一言でなんとなく察していましたが…。」
「ああ。首でも取られてから、城外に出されてたら即アウトだ!!」
「急ぎましょう!!」
「ああ!!急ぐぞ。」




