第三十七話
月涼の言葉に仁軌と藍は、顔を見合わせて『スピード感?って言っても外から仕掛けるには限りがある。』と同時に思うのだった。外の攻撃である扇動作戦と同時に、中でも陽動作戦が取れればいいわけだが、囚われている仲達ができるわけでもない。
「陽動作戦がしたいってことだよな?月涼。」
「そ。もう一度潜り込んで、火花でも上げて、宮中が火事?見たいに思わせる。それを合図に砲撃してもらえたらな…て思うんだ。後は、どうやって潜り込むかなんだよね。今頃、秘密の通路も見つかってそうだし…。」
そんな、話し合いの中、月涼たちの部屋に突然人影が現れ、一同が警戒した。
「ルーリー誰も通すなって言わなかった?」
「ふふふ。まあまあ…妾です。それから、その役は、妾が致しますわ。秘密の通路も、半分は、健在って感じよ。」
「えっ???延妃?」
「はい。妾です。月涼。あの後、まあ、有ることない事いろいろ言って、皇后に寝返る振りをして…。そこで、父が謀反を本当に起こそうとしているのが分かりましたの。それで、その証拠を見つけてきたら信じると言われましたの。ですから、手伝いますので、妾も助けてもらえませんこと?」
重慶は、月涼にも言われていたこともあり、延妃のこの言葉は、真実味を帯びた一言だった。延妃に『謀反の証拠は見つかりそうなのか?』と食い気味に重慶が聞く。
「延妃?証拠は、どんなものでどこにあるのか?分っているのか?」
「それが分かればここに来ていないわ。重慶…。一人じゃ無理だと思って。ここに来れば、月涼がいるんじゃないかと思って来ただけなの。月涼なら…知恵を貸してくれそうって、大正解だったわ!!しかもあなたにも会えた。皇后は、あなたがいないのをいいことに、他の皇子から委任状を出させて、第一皇子を国王の代理として任命したわ。だから、お父様が謀反を起こすのは、時間の問題よ。一刻も早く見つけないと行けないの。それから、国王の死は、西蘭国の医師のミスという事にしようともしている。その責任者として見せしめに仲達様を殺して、第一皇子が正式に即位後に首を送り返す予定よ。」
この話に、仁軌が怒りを顕わにし、また、自分がしたことに猛省する。『くそ!!俺が仲達を巻き込んで、命の危険までさらしてしまった。』言葉にできない腹立たしさが自分に向かう。その状況を冷静に見ながら月涼は、延妃に謀反の証拠を見つけることを優先して、最初から作戦を練り直そうというのだった。
「仁軌さん。終わったことより…今だよ。仲達さんは、まだ生きてる。西蘭国から有益な状況を引っ張り出すためにも少しの間は、使い道を考えて生かしてくれるかもしれない。いきなり始末だけはしないはずだ。まず、謀反の証拠だけど、右大臣の屋敷と考えたから外に出してもらえたんだよね?延妃。」
延妃は、頷いて『多分、屋敷の右大臣の部屋のどこかにあるはずだ』と言うのだった。だが、それがどのようなものか分からないし、部屋自体に入ったことが無いため、隠し場所が見当もつかないという事だった。
「部屋の探し物は、藍が得意分野だな。なあ?」
月涼の言葉に藍が目を輝かせて『うんうん。得意分野だぜ。』頷く。その後、延妃に屋敷の場所と大まかな見取り図を描いてもらい、藍に持たせて、延妃と共に右大臣の屋敷へ向かわせることにした。右大臣の屋敷は、この宿から馬で、30分ほどの場所にある。右大臣が宮中から出られない今がチャンスだった。
「さあ、手始めに藍に動いてもらっている間に、こっちの作戦を練り直そう。」
一同が頷いた後、藍と延妃が出発するのだった。




