第三十五話
宿には、藍も奏も陣営をこっそり離れて、やってきて仲達を除く一同が会していた。
「仁軌さんは?」
藍は、仁軌がいないと部屋を見回した。
「ああ。さっきついてから、浴場に向かうように言ったよ。言っちゃなんだが…。張り付けされてたもんだから汗やら何やらで…もうな…やばかったんだわ。体中の痛みもひどいみたいだし、後から医師に診てもらう予定だ。」
なるほどと皆が納得して、『仁軌の事は置いといて』今後について話し合いをしようとなった。まず、いきなり月涼が地図を広げて、その中央になにやら見慣れぬ石をコロンと転がして置いた。この石は、何の意味があるのだ?と言う前に藍が『あっ』と大きな声を出した。
「つき!!これって通信石?じゃ…。」
月涼がコクリと頷き、その石にさっと手をかざすと石が発光し、人影のようなものが現れた。するとその人影が話し始める。西蘭国の者たちだけがかなり驚いてたじろぐが、藍も重慶も誰が出てきたかに注視していた。そんな二人に奏が、これは、いったい何なのか?と聞く。その問いに藍が『これは、遠く離れたものと連絡を取ることができる石』だと言うのだった。この石は、青華国では、普通に扱われているもので、珍しいものではないことも付け加えた。奏は、『こんな便利なものが他国にはあるのか…我が国は、いかに遅れているのだろう?』と少し落ち込むのだった。そんな奏の事は、無視するかのように、月涼は、石から映し出された人物に話しかけ始めた。
「義母上さま…お久しぶりでございます…。」
「ほんに…いつぶりか…なんという不埒な嫁がいたものだ。どこで、遊んでおる?皇后見習いを掘り出して?」
「あ…。はははっはははは。いや~。まあまあ、その話は、リュートが帰ったらって…義母上様も言ってたじゃないですか?ね?そうだったでしょう?」
「そなた。拡大解釈にもほどがあるの?」
「まあまあ、ね。ちょっとその話は、後にして、すこーしですね。義母上がスカッとすることを頼みたいなーって思っておりましてね。聞いてもらえませんかね。」
「事と次第によるの~。本当にスカッとするんじゃろうな?」
「ええ。えええええ。もう、絶対です。義母上の大好きな事ですから。」
この会話を聞いていて、藍は、どんどん青ざめていく。そのほかのメンバーは、何を頼むかの想像もつかずいったい、何故、藍だけが血の気が引いたような顔に、なってるのか分からず藍に問うのだった。『何をどう頼むのだ?』藍は、問われても生唾を飲み込むことしかできない。そこへ仁軌が風呂から上がってやってきて、通信石に映し出されたソニアを見るのだった。
「や!!これはこれは、ソニア様ではないですか?お久しぶりですな。」
「なんじゃ。仁軌か。私の下に付けと言うたのに…そんなしょぼい国に戻りおって、じゃからそのような目に合うのじゃ。」
「え?何を知っておられるのですか?」
「はっ、そち。張り付けられておったであろう?妾のいう事を聞いて居れば、そんな目に合わずに軍艦に乗って悠々自適で指揮官であったであろうに…。ばかものめ。」
「ふー、さすがの情報力ですな。恐れ入ります。」
奏も輪もルーリーもこの会話についていけないどころか、どうしてこんなに離れた国の者に詳細な情報が、手に渡っているのかと驚きの連続であった。そして、この会話にもっと、驚かされるのである。
「嫁よ。スカッとする頼み事…。受けてやろう。その代わり、仁軌をもらうぞ。」
「えーっと。それは、仁軌さんと交渉してください。それに頼み事は、義母上様のストレス発散で、損はないですし…。」
「なんと、ずうずうしい嫁じゃ。」
「なあ。月涼…。さっきから言ってるスカッとする頼み事ってお前、ソニア殿に砲撃でも…させてあげるつもりなのか?」
仁軌のこの言葉に月涼は、ニヤリと笑うのだったが、他のメンバーは、『えーーーーーっ!!』と雄たけびをあげるのだった。




