第三十話
重慶の示した系図は、普通に知れ渡っていることだっただが、よくよく聞いてみるとおかしな点も多く存在した。皇后を含め、後宮に入ったものは、婚姻間近の者ばかりであったことだ。通常、後宮は、皇太后の采配で、秀女選抜が行われることから始まり、前国王の後宮に居た者は、残るか出宮するかが決められる。だが、棚からぼた餅の様に国王になった為、国王は、それを無視して、国王になる前の妻たち数名と片思いして、どうしても手に入れたかった重慶の母親や目を付けた大臣の娘たちを有無を言わせず、後宮に居れたのである。重慶の母も先代の国王が亡くなってすぐ、後宮に無理やり入れられた一人だった。
「ちょっと待て、お腹に子がいるかもしれない妃も調べずに、後宮に居れていったってことか?」
「まあ、そういうことだ。だから、俺がここにいるってことだ。普通は、始末するよな?とにかく…あほう様だな。気に入れば手に入れてしまいたい。その一心しか頭にない奴だ。」
あきれるやら何やらだが…これで、ルーリーの持ってきた情報が『嘘ではない』ということが分かるというものだった。第一皇子はかなりの美男子という事実は、紛れもない事実で国王の子供ではないのだろう。そして、噂の放蕩者と言う方が完全に嘘であり、世を欺くことであると言う事だ。
「重慶。第一皇子と会ったことが有るのか?」
「あるけど…。子供のころに参加していた正月の宴会ぐらいだな。年も少し離れているから交流もない上に、派閥が違うからな…。お互い警戒して、会ないように努力していたよ母親たちがな…。」
「その第一皇子の噂の真意は?確かめたことが有るのか?」
「いや。だいたい皇位に興味がないからな…。大酒のみで女好きと言う話ばかり、右大臣から聞くぐらいで、それを鵜呑みにしていたかな?」
重慶の話で腑に落ちる部分もかなりあったが、自分の中の仮説が正しいのか?まだ足らない部分が多すぎた。『欠片がそろわない』そう思うしかなかった。
「で?何を根拠に考えが間違っているんだ?月涼。」
「ああ、まだ、仮説だし…何とも言えないがな。お前を含め…国王に子供はいないと言う事だ。」
「はああ?いくら何でも…それはないだろう?皇子、皇女合わせて何人いると思っているんだ?それ全部違うって言いたいのか?」
重慶は、あまりにも大胆な月涼の仮説に大笑いをしてしまうのだった。
「仮にそうだっとして、今、その仮説が必要なのか?お前らしくもない…。不必要な仮説だと思うがな。」
そう言われた月涼は、重慶の書いた系図に少しづつ自分の立てた仮説と補足を加え、勢力図に書き換えていき現在の宮中の状態を予測し始めた。その仮説を聞いていくうちに重慶の顔が少しづつゆがみ始める。それを横目にしながら、ルーリーが一言発言した。
「皇位簒奪。」
一同、顔を見合わせ、目を瞑り生唾を飲み込む。その答え合わせに出た答えは、全員が頭に浮かんだが言葉に出すのをためらったそんな言葉だった。
「一応聞くが…誰がそれをすると思っているんだ?あっいや違うな…一人だけか?無理やり大義名分を作れる者がいたよな。だからか…月涼が待てと言ったのは…。」
重慶がそうつぶやいてから下を向いて、『月涼に止められていなければ、確実に内乱の時に殺されて、利用されていたのだろう。』自分の置かれた立場は、『いかに砂上の楼閣だったのか?』と自分の甘さを痛感せざる得なかった。
「お前は、甘い…。」
月涼の言葉に『うん。』と小さく頷く重慶だった。




