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第二十五話

 小梅が無事に延妃を救出して、延花宮に戻ると早速、右大臣がやってきた。延妃の身体を気遣うどころか、開口一番に言った言葉は、『この役立たずめ!!』であった。延妃につかみかかり、怒鳴り散らして罵るだけ罵る右大臣を小梅が、割って入り止めるのだったがそのまま、跳ね飛ばされてしまった。


 「小梅!!大丈夫?父上、妾とて…気を失って攫われたので、何も覚えて居りませぬ。それとも、殺されて、遺体で帰ってきた方が良かったのですか?」

 「もうよい!!役にたたぬ!!娘で終わりおって。国王崩御で、後宮の者たちが皇后宮に集められている。お前は、今から医師の診断を受けて、懐妊の兆しがなかったら尼僧として、寺で過ごすことになる。覚悟しておけ。」


 右大臣はそう言い放って、ずかずかと音を立てて延花宮から出ていくと入れ替わりに、宦官がやってきて、通達文を広げて延妃に庭で、跪く様に促した。そして、仰々しく皇后からのお達しを述べた。


 「国王崩御により、すべての妃は、その位と宮殿を国家に返上とする。よって、今より、皇后以外に位はないものとする。不服は、認められず後宮の規則に従うべし。これより、身なりを整え、皇后宮に参られたし。」


 宦官たちは、持ち回りで、すべての後宮の宮殿で先ほどの通達をしており、延花宮は、主がいなかった為、最後となっていた。皇后の宮殿に集められた後宮の者たちは、尼僧となるものと次の王の後宮に入れるものに選別されていった。国王の渡りがあったものは、否応なく尼僧として寺に行かされるのことが決まっていた。皇后がかわいがっていた妃は、話し相手として、皇太后宮に残してもらえたが延妃は、皇后にとっては、政敵の娘であり、そこに入る余地はなかった。


 「延妃。懐妊はなかったのか?」

 「はい。皇后さま…。実は、ここだけのお話がございます。どうか…人払いをお願いできませんでしょうか?」

 「は?何故?右大臣の娘の頼み事など聞かねばならぬ?ごり押しで、入宮してきたかと思えば、後宮のしきたり無視で、お渡りも何度もしていただいた身ではないか?まあ、懐妊できず悔しかろうが、あまりに短い後宮での日々…。仕方はないのう。」

 「で、ですが、その懐妊の件で…。」


 言葉を濁しながら、皇后に頼み込む延妃に皇后も折れて人払いをした。


 「実は!!夜伽は、失敗に終わっております。」

 「何?なんと申した?一度もなかったとでも申すのか?」

 「は…はい。陛下は、その、お酒を飲まれるとすぐに眠ってしまわれて…。お役に立つ状態ではなく…。最後まで終わったことがございませんでした。」

 「そなた?自分で申して居ることが分かっておるのか?終わったかどうかの確認があったであろう?」

 「はい。恥ずかしくて、自分で偽装いたしました。」

 「いや、待て。初めは、そうかもしれぬがその後も何度も…。しかも病に倒れる前まで、其方の所しか行っておらぬのじゃぞ。」


 皇后が声を荒げて、延妃を攻め立て始めたが延妃は、強かに死人に口なしだとばかりに話し始めた。『自分は、父親とは不仲であり陛下との子を持ちたくはなかった。』という事を強調しつつ、陛下が役立たずなのをほかの妃に知られたくなくて、自分の元へ通ったということを事実と噓を巧みに織り交ぜながら、皇后の同情を買うように泣きながら話続けた。


 「先ほども役立たずの娘と罵られて、殴られそうになったのを侍女が立ちはだかって、助けてもらいました。このまま、宮中を去るのは、口惜しい…。純潔のまま尼僧になるなんて。母を見捨てて、私を利用するためだけに呼び出した男を父と呼ぶのも嫌なのです。」


 利用して捨てようとする父親に、一矢報いてやるという思いを前面に押し出す延妃を信用してよいのか?悩む皇后であった。


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