第二十三話
藍と別れた後の月涼は、延妃の無事を確認しに第一皇子宮の洗濯場の宮女舎にやってきた。入れ替えの多い宮女舎では、あまり、新しい宮女に興味も持たれないので、怪しまれずに潜り込めていた。月涼は、延妃が寝ているのを確認するとそっと声をかけて起こし、外に出るよう促した。その後、延妃に現況を説明し、何とか脱出する方法を考えようと言ったのだが延妃はそれを断った。
「駄目よ。まだ、ここから離れるわけに行かないわ。それだけ包囲網を敷き始めているなら、宮女の入れ替わりとかも調べ始めるはず。そんなときに脱出しようとすれば、見つかりに行くようなものじゃない?それよりは、延妃として自分の宮に戻る方が良いと思うの。やっぱり、自分だけ脱出するなんて…下の者たちを見捨てるなんて…。」
月涼は、延妃の言ったことも一理あるとは思ったがそれでは、『何のために罪をかぶらないように、脱出させたのか分からない』と延妃に言い、とにかく連れ去られたが逃げて、戻ってきたことにする芝居を打とうと提案した。
「どうやって?そんな大掛かりな事を?」
「開いている後宮の宮殿がありましたよね?」
「ええ。澪妃のいた宮は、誰にも使われなくてそのまま、残っているわね。流行り病で亡くなったから、誰も使いたがらなくてそのままのはずよ。しかもあの通路の出口ってその宮の庭なのよ。だれも使わないから重慶がそこから外に出れるルートを考えたのよ。」
月涼と延妃は、まず、その宮に向かうことにした。いつまでも宮舎の外で話していては、見回りに声を掛けられる可能性があったからだ。何とか辿り着いた二人は、これからの事を話し合った。
「とにかくだ誰が延妃の部屋にいたかを問われるはずだけど…。明典には、なんと説明していたのですか?」
「次に皇帝になるはずの人だと…。だから、誰にも秘密にせねばならぬとかって適当に。」
「はあ~。重慶が効いたら怒りますよ。それこそ、謀反を起こすと言っているようなものじゃないですか?」
「そうよね…やっぱり、でも、あの時は、こんなことになるなんて思ってもみないし。まさか本当に危篤になって、亡くなるなんて…。」
延妃は、そう言ってしばらく考えた後、明典も背格好ぐらいしか覚えていないはずだという事や、名前も知ってはいけない事。顔も見てはいけないと念押ししていたことを月涼に行った。それと必ずベールをつけて入宮してたから、見たとしてもきちんとは分からないはずだともいうのだった。
「なんだ…。それなら藍をだますような仮面だっていらなかったて?ことですか?」
「まあ、そうなるわね。でもそれとこれとは別で、貴方が月涼かどうかが分かるか問題でしょ?そっちは?すぐばれてたけど…。」
「いや、今、そういうんじゃなくて、来てた人を誰にするかです。」
なんだか話がすり替わって、呆れるような話になってきたので、本題を戻そうとした月涼に延妃がパチンと手を叩いて『思いついた!』と言った。
「罪を被ってもいい人が必要なのよね?そして、ここにいない人。」
「ええ。そうです。」
「いるわ。私が逃がした宦官…。多分、外で始末されているはずの男。」
この言葉には、月涼も大いに驚いた。どんな経緯があって、そんな男の話が出てくるのか?逆に興味津々にならざる終えなかった。その男は、重慶がお金を渡握らせて、延花宮に入る手伝いをさせていた宦官だという事だった。最初は、金に目がくらんで、手伝っていた男は、小梅の事を気に入り始め、ちょっかいをかけ始めていた。宦官と言えど性欲がないわけではない。そのうち、小梅を呼び出して、脅し始めていたのだ。それを知った重慶が、西蘭国に渡る前に始末したと言っていたことを今、思い出したのだった。




