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第二十一話

 「藍!!起きろ!!」


 『誰かが自分を呼んでいるなあ。眠たいのに…。退屈なんだし、なんもできないし…。寝かせてくれたらいいのに。あーそうそう、妓楼の奥の座敷牢は、快適だったよな。月も会いに来てくれたりしてたし。』そんなことを考えながら呼ばれる声を無視して、また、爆睡する自分の襟首を引っ張って、更に首をぐらんぐらんする者がいる。


 「なんだよ~。俺にこんなことしていいのは、一人だけだぞー。」

 「その一人だ!!ばかやろ~!!」

 「えっ?」


 さっきまでの夢心地も吹っ飛び目をこすって、目の前にいる人物を見た藍は、叫び声をあげそうになった。その口をすかさずふさいで黙らせた後、両手でバチンと頬をたたいた人物は、月涼だった。月涼がいることに面食らった藍は、状況が分からな過ぎて惚けそうになった。


 「叫びそうになった後に今度は、惚けてんのか?藍。」

 「だ…だって、何でここにいるんだよ。どうやって来たんだよ。延妃は?」

 「そのことは、後で、説明する。それより、仁軌さんが捕まった。」

 

 月涼は、第一皇子の宮に忍び込んで、時間を稼いでいたが…俄かに、宮の者たちがあわただしくなった。はじめは、国王崩御だろうと思って様子を見ていたが、それとは別の動きがありそうだと踏んで、黄黄を使って情報を仕入れていた。そんな矢先、黄黄が持ってきた情報は、仁軌が内乱の首謀者として捕縛されたという事だった。慌てた月涼は、危険を顧みずここまでやってきたのだ。


 「ここからは、時間の勝負になる。藍。」

 「わかった。分ったけど…。あ、あれ?仲達さんは?」

 「仲達さんも連れていかれた。私がここに着いた時には、遅かった。丁度、捉えられて引っ張ていかれるところだった。お前だけでも見逃してもらえて助かったよ。輪は?どこにいる。」

 「輪は、医師の宿舎に行った。仲達さんが出国の準備を急がせるようにって。」


 月涼は、輪や医師たちも捕縛対象かもしれないと考えていた。内乱だけではなく事を大きくして、西蘭国に喧嘩を売ったその騒ぎに乗じて、政権を正当化する可能性を考えたからだ。事は、急を要するが駒が足りない。そう思った月涼は、藍を脱出させて重慶を連れてこさせることにした。

 ある程度は、考えていた現在の状況だったが第一皇子の動きが思ったより、早かったことで月涼自身、久しぶりに焦っていた。延妃を抱えてしまったことも大きな誤算でもあった。こんな状況で、藍を行かせるのは、心もとないが仕方ない対応だった。


 「藍。輪や医師たちは、もう、捕まっている可能性が高い。捕まっていなくても確実に軟禁状態のはずだ。まず、ここをお前だけで脱出しろ。西蘭についたら奏に状況を伝えて、西蘭国の使者を返還するように国として要求させてくれ。その後、重慶を連れてくるんだ。いいな。命がけだが頼む。早馬は、黄黄が用意しているはずだ。くれぐれも気を付けてくれよ。」

 「わかった。俺は、藍だぜ!!へへへ。月の素晴らしいパートナーだ。しくじるわけないじゃん。それより月は、この後どうするの?」

 「延妃をまず逃して身軽になる。その後は、状況に合わせて動いて、仁軌さんと仲達さんを助ける方法を探る。ちょっとした目くらましの方術も使える。私の事は、大丈夫だ。とにかく敵に見つからないように。橋は、閉鎖されてると思う。必ず闇ルート船を探すんだぞ。」


 月涼は、手元にあった小銭と金銭に変えれそうな簪を藍の懐に押し込んでから、『早くいけ』と背中を押した。その時だった。仲達を連れて行ったはずの兵士が屋敷に戻ってきた。


 「おーい。女官殿。宮中に上げれとお達しがでている。どこにおられる?女官殿!!」

 

 

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