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第二十話

 仁軌は、宮中の使者に支度して直ぐに出仕する旨を伝えた後、出仕用の衣に着替えて屋敷の警備を増やすように侍従に伝えた。


 「とりあえず、間一髪だったな。仁軌。」

 「ああ。あのまま、宮中にいたら西蘭国の者も国王の死と関連付けられる可能性も出てた。今、宮中に残っている西蘭の使者は、どれくらいいる?仲達。」


 仲達は、輪と話しながら宮中に残っているだろう西蘭国の医師や薬師について考えた。ざっと見積もっても10人も居ないかもしれないという感じだった。北光国の要請を受けて到着から、医師と薬師が徹底的に対応し、水質検査や食中毒等の対応もしたため、対処療法が功を奏して蔓延していた病の人数は、10日ほどでかなり減ったことが確認され帰国体制を整えつつあったからだ。


 「重体の者の処置がのこっている医師とその薬師が数名ぐらいか?後は、帰国の準備のため宮中の外の宿舎に戻っているはずだ。内乱に巻き込まれる前に帰国させようと思う。それは、今から出仕して、仁軌が伝えてくれないか?」

 「ああ。仲達の帰国は、無理だと思うが…。今日、宮中にいなかった者たちは帰国できるだろうからな。出国手続きだけしてくるから。俺が帰ってくるまでここで待っててくれ。」


 仁軌は、そう言い残すと屋敷を後にした。残された仲達は、輪に秘密裏に屋敷を出て、薬師の宿舎に行き出国準備をさせてるように指示した。一刻も早く出国させた方が良いという判断だ。


 「輪。外には、仁軌の屋敷の警護だけでなく見張りもいるはずだ。うまく動けるか?」

 「お任せを。指示後、すぐに戻ってまいります。他に伝えることは、有りますか?」

 「いや。とにかく、素早く動けるようにだけしておくことを伝えてくれ。突然、出国停止される可能性もある。内乱を他国のせいにして、国民感情を煽って政権を取りやすくするのに利用されては困るからな。」


 輪は、頷いたかと思うともう、その場を離れて宿舎に向かっていた。残された藍は、退屈そうにポツンと顎に手を当て肘をついて机の前で座っていた。常に動いている藍にとって、待機ほど、退屈なものはない。できるなら輪の代わりに、宿舎に忍び込みに行きたかったのだが仲達が目を光らせて、藍が部屋から出ないようにしていた。


 「藍。まさかとは思うが勝手に、月涼を探しに行こうとか思ってないよな?女官の変装のままだし、とりあえず後宮女官だしとか…。そんなこと思っていないよな?」


 仲達の言葉に自分の行動を見透かされた藍は、ドキッとして、顔が青くなった。『なんで分かったんだ?この人…。怖すぎる。』心の中でそんな風に思いながら仲達の顔を見上げて答えた。


 「そ、そんなこと…。あははは。考えていませんよ。見張りもいるし明典さんの件もあるし…ね。僕が行ってかき回すことになったら、大変なのは、よーく、分かってますから。はは…はははは。」

 「図星か?全く、お前は、釘を刺さないと何しでかすか…。月涼よりマシだがお前も、もう少し命を大事にしろ。」

 「大事ですよ~。分っていますとも。」

 「白々しい。そんなことより動きたい方が先で仕方ないんだろう?だがな、先ほど自分で言ったようにまず、明典の動向が見えない事には、確実に巻き込まれて、逆にお前が犯人に仕立て上げられるんだぞ?月涼の事だ。次の指示をお前に出すはずだ。そんな気がする。だから、今は、我慢して待て。いいな。藍。」


 藍は、渋々、仲達の顔を見て頷き。退屈そうに寝転がった。『月…。絶対、楽しんでるよな。こんな状況、大好きだもんな。』そんなことを考えながら藍は、そのまま、寝落ちするのだった。その横で、仲達もまた、疲れが出ていたのか転寝をしてしまうのだった。

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