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第十九話

 仁軌の邸宅で会した一同は、これまでの経緯を話しあった。そして、これからの方向性も考えるべくお互いの意見も出し合い始めたのだが、いかんせん、元凶の月涼がいないため話が前に進むことはなかった。


 「ちょっと~。もう月を誰かが捕まえてこないと話が進まないよ。」


 藍が口火を切って文句を言う。その通りだと皆が口をそろえて言い始めるわけだが、本人がいないのだからここで、皆で文句を言いあっても致し方ない現状である。そんな状態の中、『にゃ~』と鳴いて猫が入ってきた。黄黄だ。首輪には、月涼の文らしきものをつけている。これには、仲達が嬉々としてこの場の打開ができるといそいそと黄黄を抱き抱えて、首輪の文を外して読み始めた。


 「何、書いてあるんです?一人で読んで考えてないで教えてくださいよ~。」

 「あ、ああ、まあ、ちょっと待て。」

 「おい仲達、もったいぶるな。」


 これには、仁軌もいらいらしながら仲達を急かして言った。ふーっと一息ついてから仲達が話し始めた途端だった。


 「なんだって?」


全員で声をそろえて言い返す。


 「いやいや、ちょっと待て。月涼は、いったいどこにいるって?」

 「だからな。第一皇子の元にいると書いてある。」

 「はあ?延妃は?どうしたんだよ?」


 仁軌が矢継ぎ早に聞き返す。


 「延妃も一緒だと…。」

 「おいおい。延妃は、顔が割れてるんじゃないのか?」

 「そんなこと私が知るわけないだろう?仁軌。」

 「あっいや、そうかもしれんが…。いったい。どうやったんだ?」


 そんな二人の会話を聞きながら藍がボソッっとつぶやいた。


 「なるほど…。隠れるにはちょうどいいってことか。」

 「なんでだ?藍。」

 「考えてみてください。このお騒ぎの中で、宮中から脱出を試みるより宮中の人間に成りすまして、落ち着いてから出る方が安全じゃないですか。しかも第一皇子は、西蘭国の支援も断っている状態です。そうだったよな?輪?」

 「ええ。そうよ。直接は、面通りさせてもらえていない状態よ。」

 「それなら、第一皇子の下働きに化ければ、何とかこちらの騒ぎの目は欺けるというもの。」

 「でも、どうやって、潜り込んだのか…。」

 「まあ、月のことだから、その辺は、こっちが想像するだけ無駄だよ。」


 藍のこの言葉に一同頷いて納得した。


 「とりあえず、月涼の居場所は、分かったがこれからどうするかだな?適当なところで手を引きたいところだが…。仁軌。国王の容態はかなり危ないのか?」

 「ああ。今晩が山だと聞いている。」

 「仮に亡くなったとして、次期国王は、すぐ、決まる状態ではないよな?重慶も国外にいるわけだし、大臣たちがどう動くか?今の状態だと有力なのは、やはり第一皇子になるのか?」

 「こればかりは、大臣たちの動き次第だからな、それぞれが推す皇子たちが宮中に揃って初めて、本当の皇位争いが動きだすと思うが、宮中に重慶がいないのが分かれば、これを機に一気に畳みかけて皇位を奪いに出る皇子がいるのは確かだろうな。」


 そんな話し合いの中だった。宮中から仁軌の屋敷に一報がやってきた。国王の死だった。


 「仁軌殿。急ぎ宮中に上がられたし。西蘭国の使者殿は、全員宮中から撤収との命令が出ましたのでこちらに居られる方は、そのまま仁軌殿の屋敷にお留まりくださいませ。」


 その場の全員が顔を見合わせて思った『その時が来たか!!』であった。


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