十六話
月涼は、今回、何故危険を冒してまで入宮したのかを藍に説明した。まず、延妃に罪を着せようとするものが、周りにいる事が見えて来たことからだった。当初は初夜を逃れるため、王を眠らせたまでは良かったがその後、それを数度行った後に、その事情を知る何者かに利用されて、王が熱病で倒れたということだ。
延妃の薬は、ただただ、深く眠らせて記憶を少し操作するぐらいの薬で、それ以上の効果はないはずなのにどこかで、この薬がすり替わったということだ。本来なら、薬を使えること自体おかしいが、まあ、大臣の娘の特権を利用して、周りを買収しているのでそこまでは、良いとして…。延妃の周りにいるスパイをあぶり出す必要がある。
「まあこういう事情で、乗りこんっだってことだよ。」
「それにしたって、王様が倒れても夜伽があってて、ことは?誰かがここにきてたってことだよね?そこから聞かないとスパイよりそっちの方が変だよ!!」
「それは、だな。花花。じゅ・・・じゅ・・・重慶じゃ。」
「へっ?重慶!!あいつ!!後宮にまで手を出してるのか?月。知ってたのか?」
「い~や。延妃と知り合ってから聞いた。それと手を出してたわけじゃなく。外へ連れ出してくれてたみたいだ。変装の仕方教えて、お忍びで気晴らしだとさ。重慶と延妃は、幼馴染らしくてな、無理やり、後宮に入れらたのを知って、時折慰めにきてたってとこだ。おおぴらに連れだせないから~。延妃が最初についた嘘の変な小細工が、明典の誤解を生んだみたいだが放置のままだってことだ。」
この件に関しては、なんとなく納得した藍だった。普段の明典の行動や言葉を聞いていると思い込みが激しいところがあるのが見え隠れする。良くも悪くも主の言うことをまるまる信じているというわけだ。
「で?どうやってあぶりだすつもりなの?つき?」
「さっき、酒を頼んだろ?」
「ああ。わざわざ、明典さんに行かせてたな。」
「重慶が来るようになってから、酒を頼むのは、初めてだ。王が来ている時だけ頼んでいた。奥向きの事は知らなくても酒には、媚薬をという暗黙のルールが出来上がっていたから。それを守って、明典が入れて持ってくるかどうかだ。薬は、小梅から明典に渡されるようになっている。そうだったよな?延妃。」
「ええ。小梅がいつも持ち歩いていますわ。酒と言えば相手を眠らせたいという意味です。」
「その薬が、何の薬にすり替わっているかを確認しに来たんだよ。湯治では正真正銘、眠るための薬だと確認している。だが、宮中に帰れば?と思ってな。」
藍は、月涼の話を聞きながら、既に、王は、病床なわけだから、そんな危険を犯すだろうかと考えた。犯人の目的は、終わったんだから寧ろ、始末されててもおかしくないのでは?とも思った。
「でも、延妃様が疑われる状況は、もう出来上がってる。わざわざ危険を犯すかな?それなら始末してしまう方が早くないのか?」
「それも考えた。だが、この延妃の宮で、誰も欠員が出ていない。それに裏を返せば、その薬は、常にこの宮になくてはならないし、使われ続けていれば、公の場で、どんなタイミングでも延妃に罪を着せれるって事だ。そして、そのスパイは、きっと宮中に進言に行く為の連絡を待っているんじゃ無いかと思ってる。」
藍は、なるほどと頷いて、それならこの後、持ってくる酒がどうかをまず確認する事で納得するのだった。