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第十四話

 早速、毒見を始めた小梅は、酒の毒見で簡単にひっくり返った。盃の酒を舌をつければいいものをごくりと一口で飲んだのだ。見るみる内に顔が赤くなり、ポテンと倒れて寝たのである。

 それを見ていた延妃は、やれやれと言った感じで口を開いた。


 「このものは、私の子供のころから傍にいるものなので多少の態度は、許してきたのですが…。こんな風に失態も多く。申し訳ございません。涼麗様。」

 「ふふふ。お酒に弱かったのですね。小さめの盃とは言え…。あの勢いで飲み干すとは。」

 

 月涼が延妃の顔を見てクスリとさらに笑うと延妃も笑った。


 「ルーリー。小梅殿を他部屋に運んでおやり、水も用意しておいておあげ。」

 「ハイ。涼麗様。」

 「では、延妃さま、改めて、乾杯いたしましょう。」

 「ええ。」


 酒が進み、酔いが回って話が弾むと延妃は、いろいろなことを話した。自分の置かれている状況など事細かくしゃべり続けた。よほど、ストレスが溜まっているであろうことは、簡単に分かった。後宮に入宮したくなかったことなどだ。こんなに簡単に情報が手に入るとは…。女でよかったと心の中で笑う月涼だった。

 そんな情報の中で引っかかったのは入宮前の恋人の事だ。これが誰であるかだけは、泥酔していてもかたくなに話さなかったのは、よほどの者であるに違いないと思った。


 「貴族は、惚れたからと言って、その者と結婚できるか分かりませんものね…。おいたわしい限り。」

 「ええ。ええ。あんな老人に嫁がされるなんて!!父を恨んでも恨み切れません。でも、どうしても初夜が嫌でしたの。だから…。本当に内緒ですわよ…。行為がある前に眠ってもらいましたの。その後は、さも、終わったかのように用意しておいた血糊を少しね…。」


 酔った勢いとは、恐ろしいもので事の顛末を喋る喋るである。こんなことがばれたら親子で首が飛ぶどころではないのだがそれ程、嫌だったのだろう。月涼もあっけにとられて笑うしかなかった。


 「それより、どうやって眠らせましたの?夜伽には、入室前に検査もございましょうに?」

 「そこは、あれですわ。父の力で、そのようなものは無しにしてもらっていますの。そんな検査をせねばならない家柄ではない!!とか何とかって、いいがかりをつけさせていただいて。ふふふ。父にはね、その気になる薬だと嘘をつきましてね~。父ったら、馬鹿ですわね。『娘が本気になってくれた』と言って手放しで喜んで協力してくれましたわ。娘の気持ちなんかより出世の事だけの人ですもの逆手に取れば、簡単でした。あんな、父を怖いと思っていたなんて…。バカみたいですわ。」


 一気にまくし立てて話した後、延妃は、おいおいと泣き崩れて月涼の胸にすがって顔をうずめていた。


 「困ったお姫様だな。何の薬を使って眠らせたか聞きたかったんだが。」


 ぽそりとつぶやいた月涼の言葉が延妃の耳に届いていた。すくっと顔を上げて月涼の顔を覗き込むぽつりと言った。『クワンソウ…勿忘草』その後、そのまま、深い眠りについた延妃だった。

 

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