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第十一話

 会議が終わった後、医師たちが配置されたのは、後宮、城下町とそのすぐ先の町だけだった。最も、西蘭国が懸念した河岸のそばの町までは、熱病は広がりを見せていなかったのである。これには、医師も小首をかしげるしかなかった。熱病などの伝染病は、通常、貧困層の住む場所から始まり、勢いが止められなくて城下まで来るのが普通だったからだ。それが、反対なのだ。医師たちは、口々に言った。


 「いったい。どうなっているんだ?城下から先に広まる感染症など聞いたことが無いぞ。」

 「しっ。誰かに聞かれたら大変ですぞ。早く、症状を抑え込んで帰れるようにしなくては…。巻き込まれては、こちらの身が…。」


 医師たちは、小さく頷いて持ち場に行き黙々と仕事を始めた。薬師たちも、急いで症状に合わせた薬を調合する。皆、不穏な状況をつかみ取っていたのだ。輪もついて早々、それを感じていた為、薬師たちに軽率な行動と言葉に気を付けるように伝えた。そして、仲達からの指示のために動き出していた。


 「右大臣様。派遣された薬師でございます。重職の方々に症状が出てきていないか?確認に参りました。皇子様方とご家族の方々などで、症状が出ているかも確認せねばなりませんのでご案内くださいますでしょうか?」

 「では、第二皇子から伝令を出しておく。迎えが来るので、ここで待ちなさい。」

 「はい。え?第一皇子様からでは、ないのですか…?」

 「奥の事だ…順番は気にせずとも良い。迎えに従いなさい。」

 「はい。」


 輪は、右大臣の様子を鑑みて、隠し事があることはすぐに分かった。『とにかく従わないといけないけど…。口の軽いものを探すしかないわね。あ~。こんな時に藍がいてくれたら…。こういう仕事が早いんだよね。藍だったら。』頭のなかでは、そんなことをつぶやいていた。

 しばらくすると使者が輪を探しにやってきた。


 「輪薬師様でしょうか?」

 「ええ。第二皇子の使者ですか?」

 「はい。私の後についてきていただけますか?それからこちらの花房を胸帯にお付けください。第二皇子宮に出入りするための牌のようなものです。第一皇子は、紫、第二皇子は、青など色が決まっておりますので、それぞれの使者から手渡されるかと思います。失くさないようになさってくださいませ。」

 「わかりました。」

 「では、参りましょう。」


 輪は、案内された第二皇子宮で、症状の聞き取りと症状に合わせた処方箋を用意した。


 「ご協力ありがとうございました。こちらの宮の専属の医師の方とお話しして、処方箋をお渡しいたしますが深刻な症状でもありません。ですが、食器等は、必ず煮沸して使用ください。飲み水も一度、沸騰した湯冷ましを飲料くださいませ。それでは、退出させていただきます。」

 

 輪は、聞き取り調査後に考えていた。『第二皇子は、熱病が始まってから宮から一切出ていなが初期症状が出ている…考えられるのは、やはり、月涼様のいう通り伝染病ではないのでは?裏付けが必要だわ。』そんなことを考えていると見慣れた顔を見つけてしまう輪だった。


 「あっ!!」

 「だめ!!」


 見慣れたその顔の者にいきなり口をふさがれてじたばたする輪。その者は、輪の耳元でそっとつぶやく…。

 

 「駄目だよ…。輪。お互い知らぬ存ぜぬの予定だろ。」


 刻々と頷いた後周りの目がないか気を配ってから輪がわざとしゃがんで見せた。その者も同じようにしゃがんでまるで地面から何かを拾うようなしぐさをする。


 「ハイ。房が落ちましたよ。大事な牌の代わりです。」

 「ありがとう。どちらの女官様ですか?」


 そんな会話を大きな声で話しながら後で、会う約束をするのだった。

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