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第十話

 港で別れた後、消息を絶っていた月涼が北光国の宮中入りしたのは、その二日後だった。月涼の合流により仁軌は、仲達と内大臣に謁見し、薬師の手配や足りない薬についての会議を開いていた。薬師の中には、輪も潜り込ませている。奏の侍従であり、医学にも精通しているため借りてきたのだ。藍とも仲が良いため伝達もしやすい。二人が顔を合わせると夫婦漫才のようなことを始めるぐらいの仲だ。


 「では、医師を3名、薬師を3名で薬は、とりあえず症状に合わせて対処できるようなものを用意してきました。」

 

 仲達が大臣たちに書面にて説明しながら医師たちを紹介する。仁軌は横で頷きながら、月涼と並んで立っていた。


 「して、そちらの仁軌殿の隣に居るのは?仲達殿の侍従か何かか?」

 「はい。彼は、早馬を乗りこなせるためいつでも連絡が取れるようについております。到着後、少し会議が遅れたのは、この物が持ってくる薬剤の為でした。」

 「おお~。良い家臣をお持ちの様ですな。」


 大臣たちは、納得しながらも月涼の存在を気にしていた。月涼は、そんな大臣たちの顔を見て、さらに人数を確認していた。『おかしい…。一人足りないな。』そうつぶやくと仁軌を肘で小突いて、耳打ちする。

『仁軌さん、右大臣がいません。一番の大御所である右大臣が。』仁軌がその言葉にハッとなる。


 「左大臣、僥倖殿?少しうかがっても良いか?」

 「うむ。どうかした?仁軌。」

 「本日は、右大臣は、体調不良化何か?ですか。」

 「いや。ご本人ではなく。側妃である延妃が体調不良だとかで後宮に足を運んでおる。すぐに、こちらに来ると知らせは来ておるから…もうそろそろ来るはずじゃがな。」

 「そうでしたか。もしや右大臣も熱病をり患したのかと心配いたしました。」

 「いやいや。大丈夫じゃ。右大臣殿は、風邪もひいたことが無いはずじゃ。はははははは。」


 左大臣が冗談を言っていたその時、右大臣が入室してきた。


 「これはこれは、使者殿。遅れましたな…。娘…。いや、延妃様が風邪なのか?はたまた良い兆しなのかと慌てました故。」

 「良い兆し?もしや…。それが本当なら、病床の陛下もお喜びになって目覚めるやもしれませぬな。」

 「いえいえ。残念ながら…。少し、風邪を引いたようですので、湯治にでも行くように勧めました。温めれば芯からの毒も消えましょうと…。」

 「なるほど。…右大臣、内輪の話は、それぐらいにして、使者殿か連れてきてくださった医師や薬師をどちらに配置するか決めようではありませぬか。ささ、こちらに。」


 右大臣が着席して改めて、会議が始まった。月涼は、ある程度、会議の中にある会話での駆け引きを確認した後、仁軌に延妃の湯治先を確認するために先に出ると伝え、そして、もう一つ、仲達に指示を出していた。第一皇子の噂と動向が宮中で、どう伝えられているかを確認するように輪に指示を出せと言うものだった。その後、月涼は、また姿を消すのだった。


 「全く、忙しいやつだな。一所にずっと居たためしが無い。まあそれが月涼らしいと言えば、そうなるがな…。仲達。」

 「ホントにそうだな。だが、月涼がここで放蕩者の噂である第一皇子を調べよってことは、仁軌さん、何か知っているんじゃないのか?ここまで巻き込んでいるんだ…。ちゃんと教えてくれ。」


 仁軌は、怪訝な表情の後、コクリと頷いて仲達の目を見るのだった。


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