記憶
過去のことを思い出すだけで、わたしは後悔する
ああ、もっとうまくやれなかったものかと
中年を過ぎたころから、そんな思いにとりつかれる
人間、学ばないと堕落するものだ
わたしの同級生は、みんな、エリートになった
ぐすぐすしているのは、わたしだけだ
もっとまじめに勉強していたらと思っ
いまさら後悔してもお沿いけれども
ひとり、自宅てタバコをくゆらせるとき
記憶が矢のように過ぎ去っていく
どれも、若いころの記憶で
他のことは忘れてしまった
忙しい毎日の中で自分がどんどんすり減っていく
若いころの夢は消えてしまい
いまは、仕事で忙殺されている
家族はいるけれども、なにか孤独だ
記憶の闇のなかで、わたしは埋没する
幼いころの夢は、物理学者だったけれども
いまの仕事は、会社の事務員
ただ物理の勉強は、たまにやっている
子供か二人いて、まだ学生をやっている
子供には、志を経ててほしいけれども
なんだかふわふわしていて頼りない
やはり、わたしに似ているのだろうか
鳶色の記憶に支配ざれるとき
わたしは、ジンを一杯野村
全てが忘却のかなたに気えてゆく
ああ、人生はままならない