第8話 恋愛は難しい
サッカーの練習が休みの日、俺は香織と図書館で勉強することにした。休日の図書館なんて初めて来たけど、予想通り静かなところだった。
香織は俺の隣で一生懸命に参考書を使って勉強している。俺も彼女の真剣な姿勢を見て、やる気が出てきた。香織と一緒に勉強するのは、なんだか新鮮で、いつもより集中できる気がする。
「香織、この問題、分かる?」
俺は小声で彼女に尋ねた。香織はすぐに俺のノートを覗き込んで、
「ああ、これね……こういう風に解くのよ」
香織は優しく教えてくれた。
彼女の説明はとてもわかりやすく、俺はあっという間に問題のポイントを理解できた。
「ありがとう、香織! 助かるよ」
俺は感謝の気持ちを伝えた。
勉強している間、香織は時々俺に笑顔を向けてくれた。そのたびに、俺の心はなんだか暖かくなった。
香織の説明に感心しながら、俺は思わず感謝する。
「香織は凄いな、こんな俺でも頭に入る教え方をしてくれる」
大きな声で言ってしまった。香織は、俺の声に驚いて、指を唇に当てて「静かに」と言った。
「あわわ」と俺は焦りながらも謝った。でも、本気で感謝しているんだ。
「本当にありがとう! 香織にはいつも感謝しているよ」
俺ははっきりと言った。
香織は少し照れくさそうしながらも。
「別にそんな大したことしてないわよ」
「いやいや、大したことしてるよ」
俺は強調した。香織のおかげで、俺は勉強がずっと楽になったんだから。
香織は少しの沈黙の後。
「ほら、手を動かしなさい」と言って、俺を再び勉強に集中させた。
「ちぇ」と俺は口に出しながらも、「はい」と言って勉強を進めた。香織のそばで勉強すると、なんだか頭がクリアになってくる。彼女はいつも俺のことを考えてくれていて、その優しさがとてもありがたかった。
2時間後、俺たちは一区切りついて、図書館の中を散策することにした。香織は本棚の間を歩きながら、気になる本を手に取っていた。
彼女が手に取ったのは恋愛に関する本だった。
俺はスポーツの本、特にサッカーに関するものを選んだ。
「相変わらずね」
香織は微笑みながら言った。
俺たちは本棚の前で小声で話しをした。香織が恋愛の本を選んだことに少し驚く。
「それってどんな内容なの?」。
「心理的な意味でのことよ……人の感情とか、恋愛における心理学とかね」
「むむむ、難しいことはよくわからん」
香織は俺の方を向きながら。
「あなたは彼女がいたことあるんでしょ? もう過去形だけど」
「それは言うなよ……」
香織の視線がなんだか重い。
「だから少しは恋愛の気持ちがわかると思うけど、私は経験がないから」
香織は言った。彼女の声には少しの憧れと、不安が混ざっていた。
「えっと、まあ、確かに経験はあるけど、俺も全然恋愛の達人じゃない……フラれて、寝取られたし」
俺は香織の真剣な表情に、俺は少し緊張した。
「そう……でも、私、恋愛について色々学びたいの! だから、この本を読んでみようと思って」
香織の目には好奇心が輝いていた。
「まさか、香織に好きな人がいるのか?」
俺は半分冗談で聞いた。すると香織は思わず手に持っていた本を床に落としてしまった。
「どうしたんだ?」
俺は本を拾いながら聞いた。香織は顔を赤らめて、「なんでもないよ」と答えたが、体は震えているように見えた。
「いや、体が震えすぎだろ。大丈夫か?」
俺は少し心配になりながら聞いた。
香織は「大丈夫だから」と答えたが、彼女の様子は明らかに普段と違っていた。寒いわけでもなさそうだし、エアコンの効きすぎなのかもしれない。
しかし、香織は「とにかく何でもないから」と言って、そそくさとその場を去っていった。
俺は一人残されて考える。
「何かまずいこと聞いたか? いや、冗談で聞くようなことではなかったな……やってしまった」
香織の反応は、まるで好きな人がいるようなものだった。でも、俺があまり詮索してはいけないような気がした。うん、それがベストだろう。
その後、俺たちは図書館で勉強を続けた。でも、香織はどこか集中していないように見えた。何か心に引っかかっているのかな、と俺は思った。
夕方になって、図書館から出た俺と香織は一緒に帰り道を歩いた。
すると、香織が笑顔で感謝が込められた言いようで。
「今日はありがとう」
「いや、それはこっちのセリフだ! わざわざ勉強に付き合ってくれて、俺のために」
香織はちょっと微笑んで。
「いや、私も楽しかったわ! いつもと違う環境で勉強するのは新鮮でした」
「そっか、よかった」
香織と一緒にいると、いつも新しい発見がある。勉強だけじゃなく、彼女との会話も楽しい。
「そうね、だけど私の復習にもなるしいいわ」
香織は言った。そして、少し躊躇しながら続けた。
「それに私……あまり友達がいないから」。
香織の突然の告白に驚いて、俺は「そうなの?」と聞き返した。香織はいつもクラスでしっかりしているし、多くの人と話しているように見えたからだ。
香織は俺の返答に苦笑いをしながら。
「逆に多いタイプに見える?」
「いや、そういう風には見えないよ! 香織は優しいし親切だし、こんな俺にでも勉強を見てくれるから、凄いいい奴だよ」
俺ははっきりと言った。
香織は何も言わなかったが、俺の言葉に少し顔を緩めた。彼女はいつも他人を思いやるが、自分のことはあまり語らない。今日は少し違った面を見せてくれた。
香織は何も言わなかったが、俺の言葉に少し顔を緩めた。彼女はいつも他人を思いやるが、自分のことはあまり語らない。今日は少し違った面を見せてくれた。
「それなら俺が友達になってやるよ」
香織は驚いたように「友達?」と繰り返した。
「そうだ! もう休日の日に出かけるぐらいだからな! もう俺たち友達だろ? これから暇なときは付き合ってやるよ」
俺は笑いながら言った。
香織は「でも」と言って、自分を卑下し始めた。
「私は根暗で、小林さんみたいに可愛くなくて、明るくなくて、流行りのものも全然……」
俺は香織を遮った。
「梨沙は関係ないだろ? あいつはあいつ、香織は香織だ! それに、俺はお前のこと可愛いと思うぜ?」
香織は驚いた顔つきで。
「か、可愛い……私が?」
「そうだ」
俺は自信満々に答えた。
「ふふ、ありがとう! それじゃあまずは友達からいきましょう」
「まず?」と俺は聞いたが、香織はそれ以上は何も言わなかった。
「まぁ、それは置いといて、それは当然だろう」
そこで俺は「まぁ、それは置いといて、次も一緒に勉強しよう」
そう言って香織との次の約束を繋げた。
「ありがとう! じゃあ、次も付き合ってね、優矢君! それで……次のテストも頑張ってね! 私が教えてあげたんだからね」
「努力します」
俺たちは仲良く話しながら帰った。彼女の気持ちを聞けて、俺は安心した。
でも、家に着く頃には、俺はふと考え込んでしまった。
「あれ? やっぱり俺……ヤバい状況になってないか?」と自問自答した。理恵、梨沙、そして今は香織。俺の周りの女の子との関係が、どんどん複雑になっているような気がした。
「まぁ、いいか! とにかく、香織との勉強は楽しいし、彼女も喜んでるみたいだから」
俺は自分に言い聞かせた。でも心のどこかで、これからの関係がどうなるのか、少し心配になっていた。
家に着いたとき、俺は深いため息をついた。新しい友情と、それがもたらす新しい悩み。でも、それもまた青春なんだろうなと俺は思っていた。
やっぱり距離感がおかしいのは気になるけど。