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第22話 素直になれよ

 俺の記憶は、幼い頃の理恵との日々にさかのぼる。公園での無邪気な遊び、学校での日常。理恵とは長い時間を共に過ごしてきた。お互いを良く知っているはずなのに、彼女の本心はいつも謎だった。


 俺が好きだと告白してくれた理恵。それに、香織と梨沙も。こんなにも自分を必要としてくれる人がいるなんて、正直驚きだった。


 理恵はいつも足が速く、小さな俺は彼女に追いつけなかった。だから、代わりに彼女を支えることを選んだ。困っている時にはいつも助けた。理恵は男っぽくて、そのせいでいじられることもあった。そんな時、俺は彼女を庇っていた。それは自然なことだった。


「やめろよ、理恵をいじるな!」


 俺の声はいつも力強かったと思う。


 理恵は俺にとって、ただの幼なじみ以上の存在だった。しかし、今、俺の心は複雑だ。梨沙と香織も含め、彼女たちの感情に正直に応えることができるのか。俺は自分の心を見つめ直す必要があった。


「理恵、お前のことは……」


 言葉が出てこない。俺の心はまだ答えを見つけられていなかった。





「ねぇ? 優くん……さっきのはなに?」


 理恵の声が、俺の過去の回想から引き戻す。


 隣に歩いている理恵を見て、俺は改めて彼女がどれだけ成長したかを実感する。彼女は本当に可愛くなった。もはや、ただの幼なじみとして見るのはもったいないくらいだ。


 子供の頃の俺は、理恵においつこうとしても追いつけなかった。だから、俺は遠くから理恵を支えることを選んだ。いつの間にか、理恵は俺が追いかけても届かない存在になっていた。その変化に気づかずに、俺は自然と理恵から距離を置くようになったのかもしれない。嫌いになったわけじゃない。ただ、俺自身が理恵から離れていったんだ。


 でも、理恵は違った。理恵はむしろ俺に近づいてきた。同じ高校を選ぶほどに。


 俺は何を言っていいかわからない。理恵への答えはまだ見つけられていない。


「理恵、その……」


 言いかけるが、言葉が続かない。


「いや、別に何もないよ」


 そうやって誤魔化す。でも、心の中はまだ答えを探し続けていた。理恵との今までの関係、梨沙や香織とのこと。すべてが頭の中で混ざり合って、俺の心は混乱していた。





 俺たちは学校の周辺を歩きながら、静かに会話を交わしていた。理恵は、今朝の一連の出来事について、自分の考えを語り始める。


「嘘だと思う! さっきのようなことがあって、何もないなんてあり得ないよ……梨沙ちゃんの告白も、変だったけど……」


 理恵は一瞬考え込むと、確信を込めて言葉を続ける。


「梨沙ちゃんの告白は本気だよ! 女の私には分かる。だから……」


 理恵の言葉に、俺は心の中で混乱していた。本当に梨沙の気持ちは本気なのか? 俺はまだその答えを見つけられていない。


 そんな時、目の前に「汐崎君」と声をかける女性が現れる。香織だった。彼女の姿を見て、俺はさらに動揺する。今朝のことが頭をよぎり、冷や汗が出るほどだった。


「香織さん……」


 声をかけるが、香織の表情は読み取れない。俺はどう反応していいか分からなかった。


 理恵も香織の存在に気づき、俺と香織の間の微妙な空気を察する。彼女の視線が俺と香織を交互に見ている。


 香織は少し緊張しているように見えたが、落ち着いて話し始める。


「汐崎君、ちょっと話があるの……時間大丈夫?」

「なんだよ、香織?」


 理恵は俺の顔を見て、何か言いたげだが、最終的には何も言わずにうなずく。


 三人で少し離れた場所に移動し、香織は話し始める。彼女の言葉には、俺への真剣な思いが込められていた。理恵も静かに聞いている。


 香織の話を聞きながら、俺は自分の心の中で答えを探そうとする。梨沙との関係、理恵への感情、そして香織とのこれから。俺の決断は、この三人だけでなく、俺自身の未来にも大きく影響するだろう。


 俺は深呼吸をして、自分の心に正直になる決意を固める。この複雑な関係の中で、俺が本当に望むものは何なのかを見極める必要がある。それが、俺自身にとっても、彼女たちにとっても一番の答えになるだろう。

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