第2話 幼馴染
朝、心が重いまま登校すると、突然の声に足が止まった。
「あーれ? 珍しいねー、優君?」
振り返ると、そこにはいつも通りの明るい表情の理恵が立っていた。彼女の髪は太陽の光を浴びて輝いており、いつものポニーテールが元気いっぱいの印象を与えていた。彼女の明るい茶色の目は、いつものようにキラキラと輝いている。学校の制服を着ていても、その元気な姿勢は一際目立つ。
こいつは学年でも有名なほどのスポーツ万能で、陸上部のエースとして活躍している。その明るく前向きな性格は、クラスメイトからも先生からも評判がいい。
「なんだ、お前か」
俺は彼女に応えた。理恵と俺は、幼いころからの付き合いで、家も隣同士。彼女の家族とも家族ぐるみでの付き合いがある。理恵は俺にとって、妹のような存在であり、いつも俺のことを気にかけてくれる。
俺が小さい頃からの夢を追いかけるサッカーに、彼女はいつも応援してくれていた。俺がサッカーの試合でプレーするときは、いつも彼女の姿が目立つ。彼女の励ましの声は、いつも俺に力を与えてくれる。
彼女の明るさは、いつも俺を元気づけてくれる。今日の朝も、彼女の声に俺は少しだけ心が軽くなった。
俺は少し気が晴れるような気持ちで答えた。理恵は俺の気分を察するように、少し心配そうな表情を見せた。
「何だってひどいなー! あれ?今日は朝練ないの?」
理恵が訊ねた時、俺は思わず肩の力を抜いてしまった。
彼女は俺の反応に頬を膨らませ、少し拗ねたように見えた。どうやら、俺の素っ気ない態度に少し怒っているらしい。
「悪い悪い」
俺は急いでフォローした。理恵のこういう反応は、彼女が俺のことを本当に気にかけてくれている証拠だ。彼女のこの小さな拗ね方が、いつも俺を和ませてくれる。
「あぁ、そうだな行かないとな」
理恵はすぐに心配そうな表情に変わった。
「大丈夫? 何かあったの?」
彼女が俺の顔をじっと見つめた。
俺は少し躊躇したが、彼女なら話してもいいかなと思い、昨日の出来事を話し始めた。理恵は真剣に俺の話を聞いてくれ、俺の心は少しずつ軽くなっていった。
理恵の存在は、いつも俺の心を救ってくれる。彼女の反応一つ一つが、俺の心を癒やしてくれるんだ。
俺は昨日のことを話し始めた。
理恵は俺の話を静かに聞いてくれた。彼女の表情はいつもの明るさから、真剣なものへと変わっていった。彼女なら、俺の話をしっかりと受け止めてくれる。俺は心の中のもやもやを、少しずつ彼女に話していった。
話し終えると、理恵は静かに言った。
「大変だったね」
俺が美咲と別れた話をすると、彼女の反応は驚きを隠せないものだった。
「でも美咲さんが、まさか……」
理恵は呟いた。
美咲は理恵と同じ陸上部で、二人は顔見知りだった。陸上部での彼女の姿は、俺にとっても見慣れたものだったが、理恵と美咲がどれほど親しいかは知らなかった。
「でも、そういうことがあるよね! 人の気持ちは変わるし」
理恵は言った。こいつの声は、驚きを越えて、俺を励ますものだった。
「優君は、これからもサッカーに集中すればいいと思うよ……サッカーでいい結果を出して、美咲さんに見せつけちゃえばいいじゃない!」
理恵は軽く笑いながら俺を励ました。
理恵の言葉には、いつもの明るさと力強さが戻ってきた。彼女のこの前向きな態度が、俺の心を少し楽にしてくれた。
「ありがとう、理恵」
理恵の存在が、こんなにも心強いとは思わなかった。
理恵は俺の肩を軽く叩いてくれて。
「元気出してね」
その一言が、俺の心に響いた。
優しく言ってくれた。彼女のその一言が、俺の心を少し軽くした。理恵の優しさが、今の俺には身が染みる。
ついでに色々と聞くことにした。
「なぁ、俺って暑苦しいか? 汗臭いか?」
俺の声には、どうしても悲しみが含まれてしまった。理恵には、本当のところを聞きたかった。
彼女は首を横に振って答える。
「ううん、そんなことないよ、暑苦しいのって、ほら! 気合があるってことじゃない? 元気がないときにも何とかしてくれるかなーって、というかそっか……別れたんだね」
理恵は小さく呟いた。
なんだ? 馬鹿にしているのか?
「なんだ、嬉しいのか?」
俺は少し苦笑いを浮かべながら聞いた。理恵の反応が気になった。
俺は強がって笑いながら。
「そうだよなー! 人の不幸は何ちゃらって言うしな!」
「それを言うなら、人の不幸は蜜の味よ」
「うぅ、勉強が出来るアピールはいい! あー! なんで、フラれたんだ俺は」
「じゃ、じゃあ……わたしにもチャンスはある?」
ん? 何だ? 最後の方は聞こえなかった。
理恵の声は小さく、最後の部分はほとんど聞き取れなかった。
「あぁ、何が言いたい?」
俺は彼女を見つめ、耳を澄ました。しかし、彼女は何も言わず、少し赤くなった顔をうつむかせた。
理恵のその反応に、俺は少し驚いた。彼女が何を言おうとしていたのか、まだ理解できなかったが、彼女の態度には何か意味があるように感じられた。
「な、なんでもないよ!」
理恵は急に話題を変えた。
「ほら、早く行かないと朝練があるんでしょ? サッカー馬鹿なら早く行かないとね」
「馬鹿ってなんだよ」
俺は軽く返したが、内心では彼女の言葉に感謝していた。
「まぁいいや、ありがとうな! 少し元気出た、じゃあなー!」
「じゃあねー練習頑張ってね!」
言いながら、理恵はいつもよりも明るく笑っていた。その笑顔が、俺の心を少し和らげてくれた。
理恵と別れて、俺はサッカー場に向かいながら、あいつの最後の言葉を思い返していた。一体、理恵は何を言おうとしたんだろう? その思いがずっと頭の中を巡っていた。
あいつの笑顔が、なんだかいつもと違うように思えた。理恵は何かを隠しているような……でも、それが何なのかは、さっぱり分からなかった。
でも、あいつの存在が俺にとってどれだけ大切か、それは改めて感じた。理恵はいつも俺のそばにいて、何かあるたびに支えてくれる。今日も、あいつの言葉が俺を少し元気づけてくれた。
サッカー場に到着すると、俺は心を切り替えて、朝練に集中した。理恵のことを考えながらも、サッカーに集中することで、心の中のもやもやをクリアにしていった。
サッカー場に到着すると、俺はすぐに心を切り替えて朝練に集中した。サッカーの練習はいつも朝が早い。俺はキャプテンとして、準備や後片付けを一人でやっている。誰もこんな仕事をやりたがらないけど、俺は好きなことだから、それでいいと思っていた。
グラウンドを整えながら、理恵の励ましの言葉を思い出した。彼女の言葉はいつも、俺を前向きにさせる力がある。
しばらくすると、チームメイトたちが次々と現れた。朝の静けさが、徐々に活気に変わっていった。練習が始まると、俺は完全にサッカーに没頭した。
パスを出し、ボールを受け、シュートを打つ。全ての動作が、俺の心の中のもやもやを払拭していく。理恵の言葉を胸に、俺は練習に全力を注いだ。
ゴールを守りながら、俺は自分の役割を果たすことに集中した。キャプテンとしての責任感もあり、チームを引っ張ることが俺の役目だった。ボールを止めるたびに、自信が湧いてきた。
練習が進むにつれて、俺の心はサッカーに完全に向いていた。理恵の励ましもあり、俺は一層練習に打ち込むことができた。サッカーはいつも、俺を支えてくれる。
練習が終わり、俺はベンチで飲み物を飲んでいると、明るい声が聞こえた。
声の主はサッカー部のマネージャー、中村梨沙だった。彼女はいつも通り、俺に向かって歩いてきた。梨沙の髪型は独特で、茶髪の髪はゆるいウェーブがかかっており、軽やかに肩に流れていた。そのスタイルは彼女のギャルっぽい雰囲気を強調していて、彼女の明るい個性を際立たせていた。
彼女の服装は、その明るい個性にぴったり。スポーツウェアにトレンドを取り入れており、派手な色使いのジャージに、スタイリッシュなアクセサリーを合わせていた。彼女の周りにはいつも、陽気でおしゃれな雰囲気が漂っていた。
梨沙は、いつも俺をからかうのが得意で、彼女のスキンシップはいつも激しい。彼女が近づいてくると、いつも冗談を言いながら軽く肩を叩いたり、腕を組んだりしてくる。その明るい笑顔と無邪気な行動は、チームメイトにも愛されていた。
「おっはー! 今日も元気だね、キャプテン!」
彼女は俺の肩を叩きながら言った。その明るい笑顔とゆるいウェーブの髪が、彼女の楽しげな性格をよく表していた。
「おう、ありがとうな、梨沙」
梨沙はサッカー部のムードメーカーで、部員たちからの信頼も厚い。彼女の存在が、チームに活気をもたらしている。俺にとっても、彼女は頼もしい存在だった。
彼女は俺の横に座り、水を飲みながら話し始めた。
「今日の練習もすごく良かったよ! キャプテンのプレー、いつもながらカッコいい!」
梨沙の言葉には、いつも元気をもらう。
「やめてくれよ、いつも通りだろ」
「あれ? なんか元気なくない? さては……失恋でもしたな?」
「んぐ!」
「おいおい! どうした? まさかあんた……本当に?」
飲んでいるものを吐き出してしまった。
たく、こいつは変に勘がいい時があるんだよな。
俺は、仕方なく梨沙にも話すことにした。