表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/23

第12話 そんなの気にすることないじゃん

 場所を移して梨沙と一緒に公園のベンチに座ってた。

 俺は理恵と美咲のことで頭がいっぱいだった。


「どうすればよかったんだろうな……」


 俺は思わず口に出した。


「気にすることないよ!」


 梨沙はそう言ったが、俺の中のモヤモヤはそう簡単には晴れなかった。


「でもさ、俺が何か違うことをしてれば……」


 俺が話そうとしたとき、梨沙は突然ベンチから立ち上がった。


「よし! カラオケ行こう!」

「は? カラオケ?」

 俺は戸惑った。


「うん、こういう時は遊んだ方がいいよ! 私の奢りだから、安心して!」


 梨沙は笑顔で言った。


「でも、今……」

「こういう時は遊んだ方がいいよ!」

「でも、今こんなことしてていいのかな……」


 梨沙は笑ってたけど、俺は遊んでいる場合なのかと心の中で思っていた。理恵と美咲のことが頭から離れなくて、カラオケで歌ったって、本当に楽になれるのか?


 でも、梨沙は俺の腕を引っ張ってくる。


「私の奢りだから、安心して!」

「そういう問題なのか?」

「そういう問題よ! ほら、あの時のお礼はするって言ってじゃん」

「それがカラオケかよ!」

「そうだよ? 何か文句ある? ほらほら行く行く!」


 その元気な態度に、ちょっとだけ引っ張られてみる気になった。

 カラオケで歌うことで、少しは心が晴れるかもしれない。でも、心の中はまだモヤモヤしてる。理恵と美咲のこと、あいつらのことばかり考えちゃって……。


「カラオケで、少しは気分が変わるのか? こいつが遊びたいだけじゃ……」


 俺は思いつつ、梨沙について行くことにしたんだ。



「カラオケで少しは気分が変わるかもしれない」と、俺は心の中で思う。梨沙と一緒にいると、いつもなんとなく楽しくなるから、今回もそうなるかもしれないよな。


 でも同時に、「でも、心の中のもやもやはそんなに簡単に消えるものじゃない」とも思ってた。理恵と美咲のことが、まだ俺の心に重くのしかかってる。カラオケで歌っても、それがすぐに晴れるとは思えないんだよな。


 梨沙は元気いっぱいで、「今日は楽しもうよ!」って言ってるけど、俺の心は完全にはついていけない。なんだか、心が二つに割れてるみたいだ。


「カラオケでちょっとは気分転換できるといいな」と思いつつ、俺は梨沙について歩いてた。まぁ、何事も試してみる価値はあるか。そんなことを考えながら、俺たちはカラオケボックスに到着した。



 ◆◆◆



 カラオケの個室に入った瞬間、なんだか緊張してきた。カラオケ自体久しぶりだし、女の子と二人っきりっていうのもドキドキするよな。


 梨沙は俺の隣のソファに座って、選曲を始めた。


「んー、なに歌おうかな~♪」


 鼻歌まじりで言ってる。梨沙はいつも通り元気いっぱいで、その様子を見てると、俺も少しリラックス出来るような、出来ないような。

 でも、俺の頭の中にはずっと疑問が渦巻いてた。なんで俺たちはカラオケに来てるんだろう。こんな時に、何歌っても心は晴れないような気がして……。


「おい、梨沙」


 俺は彼女に声をかけた。


「やっぱり……なんで俺たちはカラオケに来てるんだ?」


 梨沙は選曲を一旦中断して、俺の方を向いた。


「えっ、だってさ、優矢がちょっと元気なさそうだったから、気分転換になるかなって思って」


 梨沙は笑顔で答えた。


 その答えを聞いて、俺はなんとなく納得した。梨沙はいつもこうやって、俺を気にかけてくれるんだ。でも、どうしても理恵と美咲のことが心に引っかかってて……。


「お前……俺のために?」

「うーん、そうだね! サッカー部のマネージャとしてこういうメンタルケア? もしっかりしないとね」

「メンタルケア……そんなことまで考えているのか?」

「優矢は難しいこと考えなくていいのよ! 私がしたいからしてるだけだし」


 素直な疑問。メンタルケアという難しい言葉に逃げられた。

 俺は少ない脳みそをフル回転させて考える。

 うーん、まぁ、俺のことを心配してくれているんだろう。


 梨沙は再び選曲を始めた。俺も何か歌を選んでみようかな。

 少しは気が紛れるかもしれないし……。


 とりあえず、俺もマイクを手に取って、画面を見つめたけど、心の中はぐちゃぐちゃだ。


「何を歌おうかな……」


 俺はカラオケの曲リストを眺めてた。

 理恵と美咲のことが頭をぐるぐる回ってて、歌詞の一つ一つがなんだか重く感じられる。普通なら気軽に選べる曲も、今はどれもピンと来ない。


「うーん、美咲と理恵……」


 俺の頭の中は後悔でいっぱい。カラオケの画面を見つめながら、ずっと考えてた。


「優矢、何か選んだ?」

「あ、うん、ちょっと待って」


 梨沙が聞いてきたけど、どうしても心が重くて、歌いたい曲が見つからない。

 というか、俺はそこまで歌が上手くない、カラオケに来ないのもあるけど。

 結局、俺は適当にポップな曲を選んだけど、マイクを握る手はなんだか震えてた。本当に、これでいいのかな……?


 梨沙は俺を気遣ってくれてる。それは分かる。でも、理恵と美咲のことが頭から離れなくて、カラオケで楽しむ気になれないんだ。


「とりあえず、歌ってみるか……」

「あー遅い! 私が先に歌うね!」

「あ、おい」

「いいじゃん、二人しかいないんだし楽しもうよ」

「へいへい……」



 曲が始まると、俺は少し緊張しながらもマイクを握った。梨沙の隣で、梨沙が楽しそうに歌ってるのを見て、俺も自然と口ずさんでみた。

 最初は心が重かったけど、徐々に歌に集中するうちに、少しずつ気持ちが軽くなってきた。梨沙の笑顔を見ると、なんだかこっちまで元気が出てくる。


「意外と楽しめるかもな」


 理恵と美咲のことはまだ心に残ってるけど、少しは頭を切り替えられた気がする。


 俺は一曲終わると、梨沙に「何を歌うの?」と聞かれる。

 梨沙の提案で来たカラオケだけど、思ったよりもいい気分転換になってる。



 カラオケでの時間が過ぎていく。

 梨沙が恋愛の曲を選曲して歌っている。かなり切ない歌だ。

 好きだった二人が色々あって失恋したが片方が未練があるという。

 どこかで聞いたような内容だな。てか、こいつも俺の前でそんな曲を歌うなよ!

 心の中で突っ込んだが、曲が終わった瞬間。


 梨沙がマイクを持って、全力で俺に。


「元気を出せよ! サッカー部のキャプテン!」


 梨沙は大声でマイクを通して言ってくれる。

 俺は耳を塞いで、「うるせー」と言った。

 近くでマイクで大声を出されると、耳が痛いんだよ。


 梨沙は俺を指差しながら。


「何があったかは分からないけど、細かいことでクヨクヨしてんじゃないぞ! キャプテン!」


 いや、そうだよな。ただ……あぁ、もういいか。


 梨沙は俺の言葉を遮って「それじゃあ1曲目いってみよう!」って言った。彼女のテンションは俺とは全然違う。俺はただ、彼女が歌うのを聞いていた。何となく、その明るさが伝わってきて、少し心が軽くなった気がする。


 歌が終わると、俺は無理にでも笑顔を作ってみた。


「おう、上手いじゃん」

「えへへ、ありがとう!」


 梨沙の笑顔は、なんだか俺を元気づける。


 カラオケで歌う梨沙を見ていると、理恵と美咲のことで頭がいっぱいだったけど、少しずつ心が開けてきたような気がした。梨沙のおかげで、心のもやもやが少し晴れたような気がする。


「次はまた俺が歌ってみるか」


 俺はマイクを握った。理恵と美咲のことはまだ心にあるけど、少しは気分を変えられそうだ。


 梨沙はカラオケボックスの中で、まるでステージの上にいるみたいに歌ってた。彼女の声は部屋じゅうに響き渡って、なんだか俺まで元気をもらってる感じがした。


「それにしても梨沙って、こんなに歌が上手かったっけ?」


 俺は内心で感心した。彼女の歌声は、明るくて力強くて、何だか俺の心を軽くしてくれる。


「どう?楽しめた?」


 歌が終わると、梨沙はって聞いてきた。俺は「ああ、意外とな」と答えた。理恵や美咲のことが頭から離れないけど、梨沙と一緒にいると、なんだか気持ちが晴れる。


 梨沙の明るさが、俺の暗い気持ちをちょっとだけ晴らしてくれる気がした。彼女のエネルギーが、俺にも少し伝わってきたみたいだ。



 そして、しばらく歌い終わった後。カラオケボックスの中で、梨沙が俺の横に座った。


「お前、俺のことを考えてくれてるんだな……」


 俺は感謝の気持ちを込めて言った。


 梨沙は笑いながら。


「当たり前じゃん! 私たちは友達だもん! それで……優矢が頑張ってくれないとサッカー部は優勝が出来ないでしょ? 私はあんたに惹かれてサッカー部のマネージャになったのよ」


 梨沙の明るい笑顔と、そんなに簡単に折れない強さが、俺にも力をくれた。


「ありがとう、梨沙! お前がいてくれて、本当に助かるよ」

「な、なにを急に?」

「いや、こんなに明るくて可愛いマネージャーが俺なんかの相手をしてくれているし……こんな嬉しいことないぜ」

「……あ、あんたにしか」

「ど、どうしたんだよ?」

「ううん、何でもない! あーよかった……私もあんたがキャプテンでよかったよ! だから、いつまでも真っすぐな優矢で居てね!」


 俺は素直な気持ちを伝えた。

 梨沙はそう言いながらも、嬉しそうに笑っていた。


 カラオケでの時間は、梨沙のおかげで、俺にとって大切な時間になった。彼女の励ましとサポートが、俺を支えてくれていることを、改めて感じたんだ。


「梨沙、ありがとうな」

「いいってことよ、楽しんでくれてうれしい!」



 俺は彼女に感謝の気持ちを伝えた。梨沙は再びにっこり笑った。

 カラオケでの時間は、思ったよりも楽しくて、俺の心も少し軽くなった。梨沙のエネルギーに感化されて、俺も心から楽しむことが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ