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第10話 元カノ美咲と幼馴染理恵の対決

「なんだよ、やめろよ!」


 俺は思わず止めに入る。理恵と美咲、二人の間に割って入った。


「なに熱くなってんだよ?」


 そう言ったが、二人の表情は硬かった。


 しかし、美咲は笑いながら「もしかして嫉妬してるの?」と挑発した。

 理恵は形相を変え、「なんでそんなこと言うの?」と美咲に詰め寄った。


 美咲は冷静に、「そのまんまの意味よ」と答えた。

 彼女の声には挑戦的な響きがあった。


 俺は混乱していた。こういう時、どうすればいいんだ?俺はただのサッカー馬鹿だ。女の子同士のこんなややこしい関係には、手を出すべきじゃないのかもしれない。


 でも、黙っていられなかった。理恵も美咲も、俺にとって大切な存在だ。このまま二人が険悪になるのは見たくなかった。


「おい、お前ら、落ち着けよ」


 俺は声を荒げた。でも、二人の間の緊張は緩むどころか、さらに高まっていた。


 えっと、なんか理恵が涙を流し始めたんだ。何だよ、急に。俺、こんなの見たことないぞ。彼女の顔には、なんか「裏切られた」っていう深い悲しみがあふれていた。あー、俺には難しいな。女の子の涙って、なんでこんなにややこしいんだろう?


 で、美咲の方は、ふーん、どうしたのかな? 冷たいような、でもなんかさみしげな声だぜ。彼女、いつも強気なのに、今日はちょっと違う。なんか、言ってることと目の光り方が合ってないみたいだ。えっと、どうすればいいんだろう? 女の子の心って、サッカーボールより複雑だ……いや、そんなこと考えている場合か。


 理恵も美咲も、俺にとっては大事なんだけど、この二人の間で何が起こってるのか、ちっとも分かんねえな。ああ、こんなこと考えてる場合じゃないか。サッカーの練習に集中しなきゃいけないのに、まぁ……まずは、これを解決しないと。


 俺はただポカンと立ってた。理恵と美咲、二人が目の前で言い争っている。このギスギスした空気、マジで何なんだよ?


「なんだよ、この雰囲気は……」


 俺は心の中でブツブツ言った。サッカー場なら、こういうややこしいことはない。ただボールを蹴るだけ。シンプルでいい。


 美咲が理恵を挑発していて、理恵は怒りっぽい顔をしている。俺は「おいおい、なんでこんなに熱くなってんだよ……」と思った。でも、俺が何か言うと、もっとややこしくなりそうで、言葉が出てこない。


「俺はこういう時、どうすればいいんだろう……」


 俺は心の中で混乱してた。こんな状況、サッカーの試合じゃ考えもしないぞ。


 そして、二人の勝負? 行方は思わぬ方向へ。


 ◆◆◆



 俺は今、グラウンドにいる。えっと、どうしてここにいるのかって?実は美咲の提案で、陸上の対決が始まるんだ。なんでこんなことになっちゃったんだろう。


 理恵は陸上部のエースで、全国大会にも出場して、いつもいい成績を収めている。だけど、美咲はそうじゃない。普通のレベルだ。この勝負、いったいどうなるんだ?


 まじで、なんで俺はこんなところにいるんだろう? 理恵と美咲がなんかすごい対決を始めるからということだけど。


 理恵はもう、陸上部のエースって感じで準備してる。ストレッチとかめっちゃ真剣にやってて、かっこいいな……あいつ、いつもこんなに集中してるのかな? 全国大会に出たっていうから、流石だよな。


 それで、美咲は……うーん、なんかちょっとビビってるのか? でも、意外とやる気を出してる。こっちも負けてないって感じか。一回深呼吸して、なんか自分を奮い立たせてるみたいだな。……本当に場違いじゃないか俺?


 二人がスタートラインに立った時、なんか空気がピリピリしてきたぞ。理恵はクールに、美咲はちょっと緊張してる。





 理恵は、自信満々で、美咲の隣で屈伸しながら、また挑発している。


「いい機会よね!」


 理恵はにやにやしてる。あいつ、いつもこんなに強気だっけ?


 美咲はちょっと緊張してるけど、負けてない。


「それはこっちのセリフよ……足が速いからって調子に乗らないで」


 美咲も言い返してる。そして、「そんなんだから相手もできなくて振り向いて貰えないのよ?」って、かなり意地悪な笑い方してる。理恵はムッとしてるけど、無視して準備を続けてる。おいおい、それは言ってはいけないだろ。俺が目の前にいるんだからな。



 理恵はスタートラインに立つと、自信に満ちた表情を見せた。彼女の目は、挑戦への確信できらめいている。ストレッチをしながら、挑発的な笑みを浮かべて、美咲に向けて「いい機会よね!」と言った。その声には、勝利への自信が溢れていた。彼女の動きは流れるようで、一つ一つのストレッチが完璧に計算されているようだった。理恵の態度は、まるでこれからの勝負に対する余裕を示しているかのようだ。


 一方で、美咲は少し離れたところで静かに準備をしていた。彼女の動きには緊張が見えるが、目は固く前を見据えていた。一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせるように頭を振った。美咲の表情には、緊張感の中にも決意が見て取れた。彼女の目には、挑戦に対する不安と期待が交錯している。美咲は、少しの間、静かに自分を奮い立たせるように、心の中で自分に言い聞かせていた。



 二人がスタートラインに立つと、グラウンドには緊張感が満ちた。理恵の落ち着いた自信と、美咲の緊張に満ちた決意が対照的だった。理恵の挑発的な態度に、美咲は少しムッとしながらも、それを無視して自分のペースを保つよう努めていた。理恵の自信と美咲の決意が、これから始まる対決への期待を高めていた。



「んじゃいくぞ! よーい……ドン!」



 俺が合図を出すと、二人は同時に走り出した。理恵はめっちゃ速い。美咲も頑張ってるけど、理恵のスピードはすごいぞ。美咲も全力で走ってる。二人の足音がグラウンドに響いてる。




 理恵と美咲は一斉にスタートを切った。理恵の走りはマジですごかった。彼女の足は風を切るように動いていて、一歩一歩がめちゃくちゃ計算されてるみたい。彼女の顔、めっちゃ集中してて、まるで他に何も見えてないようだった。


 一方の美咲は、理恵に追いつこうと必死に走ってた。彼女の走りには理恵ほどの優雅さはないけど、その努力と根性ははっきりと見て取れた。美咲の顔は、一生懸命さでいっぱいで、前にしか見えてないようだった。でも、理恵にはどうしても追いつけない。


 理恵がゴールラインを越えると、ちょっと余裕のある表情が見えた。でも、美咲はゴールすると、もうぐったりとしてた。彼女の顔、めっちゃ疲れて見えたけど、何かを成し遂げたって感じもあったな。


 レースが終わって、理恵が美咲のところへ戻ると、二人は何も言わずに見つめ合った。なんか、その瞬間、言葉はいらない感じがした。俺はただ立って、その光景を見ていたよ。


「お疲れ」と俺は言ったけど、なんか、言葉にするのがもったいないくらいの瞬間だった。



 俺は立ち尽くしてた。理恵と美咲が走り出す瞬間、俺の心はめちゃくちゃ複雑だった。理恵の走りは、いつもながらにすごい。彼女の才能には、いつも尊敬の念を抱いてる。でも今日は、なんか違った。彼女の走りに、新しい何かを感じたんだ。まるで、彼女の中に秘められた何かが爆発してるみたいだった。



 一方、美咲……もすごかった。理恵には及ばないけど、その努力、その根性には、心からの敬意を表したい。こいつの必死の走りを見てたら、なんだかこっちまで熱くなってきた。美咲の一生懸命さは、理恵の天才性とはまた違う、何か心を打つものがあった。


 レースが終わって、理恵が勝ったけど、美咲にも拍手を送りたくなった。二人とも、めちゃくちゃ頑張ったんだから。理恵が美咲に勝ったことに、なんか複雑な気持ちがあった。理恵の才能は素晴らしいけど、美咲の努力も同じくらい価値があると思う。



 レースが終わって、理恵が勝ったんだけど、美咲の反応が印象的だった。



「くだらない」


 彼女が言った時、その声には色んな感情が混ざってたような気がする。


 俺はちょっと驚いたよ。美咲って、いつもクールで、何事にも動じないタイプだと思ってたから。でも、その「くだらない」という一言には、失望や羨望、それに多分、ちょっとしたみたいなものも感じられたと思う。


 美咲の目は、理恵の方を見てたけど、その眼差しは何かを探してるようだった。多分、理恵が持っているもの、自分が持ってない何かを……上手く言葉であらわせないけど。


「くだらない」


 そう言いながらも、美咲は自分自身に何かを聞いているように見えた。こいつの中には、自分がやってきたことへの疑問とか、自分がどこへ向かっているのか、そういうものを感じたんだ。


 美咲はいつも強がってるけど、実はもっと深いことを考えてるんだろうな。その一言が、彼女の内面を少し見せてくれた気がする。




 美咲が「くだらない」と言った後の彼女の様子は、なんとも言えない複雑なものがあった。彼女の表情には、普段の冷静さはあるけど、なんか微妙に揺れてるように見えたんだ。


 美咲の「くだらない」という言葉に、理恵が怒ったように反応した。


「それは負けた人が言う台詞? 聞いたよ?もうこの際だから言うけど、優君を裏切って他の人と付き合っていたなんて最低だよね! 私なら……そんなことしないのに!」


 美咲は、理恵の言葉を聞いてふっと笑った。あの笑い方、なんだか意地悪くて、俺もちょっと腹が立った。


「何がおかしいの? 何が笑えるの?」


 理恵が怒りに震えて言った。


 美咲は理恵に向かって言い放つ。


「あなたも優矢と同じ。暑苦しいわね? あなたも陸上がなくなったら……何が残るのかしら?」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は反射的に反応してしまった。


「うるせー! お前に理恵の何が分かる?」


 思わず声が出た。美咲の言葉は、ただの侮辱だった。それは俺にも理恵にも向けられた言葉だったから。


 理恵も驚いたような顔をして、美咲をじっと見つめてた。美咲の言葉は、ただの挑発じゃなくて、何かもっと深い意味があるように聞こえた。



 俺は、美咲と理恵の言い争いを見て、心の中で大きく揺れてた。怒り、戸惑い、そして彼女たちへの思いやりや同情が、俺の中で渦巻いていたんだ。


 美咲の「陸上がなくなったら何が残る?」っていう言葉に、思わず「うるせー!」って反応してしまう。俺たちへの侮辱みたいに感じて、ついカッとなってしまった。でも、すぐに戸惑いが押し寄せてきた。なんで、こんなに怒ってしまったのだろうと。


 理恵が美咲に向かって言った「私ならそんなことしないのに」って言葉に、なんか心が痛んだ。理恵の中にある深い感情が、俺にはよくわかるんだ。理恵の気持ちを思うと、何か言わないといけないと思ってしまった。


 美咲に対しても、なんか複雑な感じがした。こいつの言葉の背後にあるものを考えると、ただ怒るだけじゃなくて、悲しむ気持ちも生まれた。彼女も何か抱えてるんだろうなって思った。


 俺は、二人の間に立って、何を言えばいいのか、どうすればいいのか、さっぱりわからなくなっちゃった。ただ立ってるだけで、心の中はめちゃくちゃだった。


 ――やっぱり美咲とはもう絶対に元には戻れない。

 今は美咲より理恵を守らないと、そう強く思った。

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