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6 再会

 最終日、ホテルの朝食を食べ終えて部屋に戻ったら、それは起きた。


 チェックアウトしようと荷物をトランクにまとめて置いたのだが、そのトランクが部屋のどこにもなかった。


 チームで朝食を食べてロビーで顔を合わせる時間には間に合わず、その中の一人に連絡した。


「丸山か…すまない、用事ができてロビーに行けない。そう皆に伝えてくれ」

 これを理由に俺は断った。


 俺はホテルの電話を置いた。


 ホテルで死ねば多額の費用がかかるから亡くなるのに適切な場所に移動しようと計画していたこともあり、トランクがなくなったのは好都合とばかりにそのまま予定を続行し、俺は出かける準備をした。そして部屋から出ようとした瞬間、後ろから頭になにか当たった。


 カチッ


「元気そうだな」

 俺は頭にピストルを突きつけられた状態で、男に話しかけられた。


 その声に俺は驚いた。


 それは数年前に亡くなった友人の声だった。


「まさか…」


 俺はつい、声に出してしまった。


「まさか?ああ、そうだ。そのまさか、だよ。ほんとはこの場で殺したいほど俺はオマエを憎んでいるけどな、殺すな、と言われたからオマエにチャンスをやる」


 殺すな、声が頭に響く。


 その声は俺の返事を待つこともなく、


「時間がない。今日、オマエは体調不良で出張を延長するんだ。そして13時に指定の場所にこい。誰にも言うなよ。オマエの行動は全て筒抜けなんだ」


「じゃあな。」とその声は言って扉から出ていった。


 そう、声は数年前に俺が見殺しにした、友人のしげの声だった。


 死んだはずだ。

 俺は落ち着けと心のなかで呟いた。


 確認してみるか、いや、確認したら二度と会うことはできないだろう、そう思った。


 とりあえず携帯で自宅に電話する。

 今、こちらは朝8時だから、向こうは夜の22時くらいだ。


 呼び出し音が何回か鳴って、「海斗さん、こんばんは」と美桜さんの声が聞こえた。


「美桜さん、急に夜、電話してすみません」と言ったら、美桜さんはもっと奇妙なことを言った。

「私もちょうど電話しようと思っていたので、全然問題ないです。少し前に会社の人から海斗さんの体調が悪いと連絡がありました。体調、大丈夫ですか?」


 俺は驚いた。

 誰かが自宅に電話している。

 自宅を知られている?


 美桜さんに、「誰、から電話はかかってきましたか?」と聞いた。


「丸山さんとおっしゃいましたよ」

 丸山!?

 さっき話したばかりだけれども…。


「それで大丈夫なんですか?」と美桜さんは聞いた。


 俺は「あぁ、連日の会食でちょっと胃腸が悪くなって…数日、出張を伸ばすかもしれないが、心配しないで」と言った。


 美桜さんは心配している声で、「わかりました、無理しないでくださいね」言った。


 その次に、丸山にもう一度電話した。

「あ、西園寺さん、大丈夫ですか?」

 丸山も心配している。


「…そのことなんだけど、自宅に電話した?」

 俺は丸山に聞いた。


「はい、病院から電話あったんで、会社とご自宅に連絡させていただきました」

 丸山は丁寧に説明してくれた。


 そして丸山はもう一度、聞いた。

「それで、体調はどんな様子ですか?」


 俺は少し考えて、言った。

「朝、胃腸が痛くて病院に行ったんだが、今はホテルに戻ったんだ。だけどやっぱり体調悪いから病院にまた行くことになった」


「そうなんですね。西園寺さん、連日、出張ですもんね。休みの手続とかなにかあれば連絡ください。対応します」と丸山は言って電話を切った。


 俺はその日、予定していた計画をやめることにした。


 しげが生きてる?


 どういうことだ。

 もし生きてるとして、俺に会いに来る理由は何だ?


 指定の場所の紙をみて、さっき丸山が言っていた病院だった。


 俺は13時にその指定の場所(連絡のあった病院)に行った。


 病院の受付で名前を名乗ると別室に連れて行かれた。


 そこで目隠しをされて、別の場所に車で連れて行かれた。

 車は2台乗り換え、案内する人も変わり、

 最終的にどこかの建物の地下に連れて行かれたことだけわかった。


 連れてこられた地下の部屋の前まできてやっと目隠しを取ってもらった。


 入れと俺を連れてきたアメリカ人?が言った。


 俺は扉をノックして、開けた。


 そこには、長い髪の毛、無精髭を生やし、ピストルをもったしげがいた。


「来たか。待ってたよ」としげは言った。


 俺は本気でびっくりした。

「ここはどこだ。病院じゃないよな…」


「心配するな。お前はあの病院に入院したことになっている」としげは言った。


「どういうことだ、病院も仲間、なのか」俺は聞いた。


 しげは言った。

「家族と部下に連絡しただろ?何も嘘はないさ。オマエが嘘ついた事以外はな」


 それは俺がついた胃腸で調子を壊したことか?

 全部、話を聞かれているということか。


「……」

 俺は黙った。


「いつでも殺せるからな、オマエに選択権はない。おぼえておけ。オマエと同じく死んだ理由を作ること、なんてさ、ここでは簡単だよ」

 そう、しげは言った。


 しげの言ったことで、俺はしげの後ろに強大な何かがいると感じた。


「殺さない理由はなんだ?」

 俺は聞いた。


「まぁ、お前に頼まなくてもいい気もするから、俺にはないよ。けど、光がどうしてもっていうから」


 ひかり?

 生きている??

 まさか。それこそ、まさか。


 いや、遺体はあがっていないから、ないこともないが、目撃者がいて、いなくなってどうやってここまで来るっていうんだ?


「そろそろ来るんじゃないかな」


 扉がノックされる。

 しげが「どうぞ」と言った。


 扉を開けて、光と古川さんが入ってきた。


 光は髪が背中ぐらいまで伸びて、軽くウエーブかかっている。古川さんは変わらず、髪の毛を頭の上でお団子にしていた。


「海斗、さん。…お久しぶりです」

 光は挨拶した。


 俺はびっくりして声が出なかった。

「…」


 その様子を見て、

「光、こいつ、光と話したくないんじゃないか。光が去ったせいで最愛の人を殺されたわけだからな」としげは言った。


 俺はびっくりしてしげを見た。

 どういうことだ、なぜ、それも知っているんだ。

 …誰にも、本人にすら言ったことがないのに。


「何、びっくりしてるんだよ。恒星だろ、お前の最愛の人。毎年、墓に花添えて供養して、けなげだよな」としげは冷たい視線で言った。


「な…んで」

 俺は声を絞り出して言った。


 しかも俺がびっくりしたのは恒星のことだけじゃない、しげは恒星が殺されたと言った。


「全部、知ってる。ついでに、お前が俺と佳奈を除いて、守っていた人もな」

 しげは光を見た。


 光はしげを確認し、俺に向かって静かに言う。

「海斗さん、…海斗さんは私のことなんて忘れたいかもしれない…でも私は海斗さんとずっと会いたかった」

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