61 父からの報告
父から呼び出されて実家に来た。
入口で義理弟の陸斗に会う。
「…海斗も呼ばれたのか」
大分、不機嫌な様子で陸斗が俺に言う。
陸斗からこんな風に話しかけられると思ってみなくて、どうしたんだろう?と俺は思った。
まぁ、でも彼に何があったとしても俺は俺で…何も変わりがないのだが。
今日は不思議と穏やかな気持ちでいられた。
今まで実家にいる時、俺は常に心を傷つかないように鎧で覆っていて、周りの様子など気にしたことはなかった。
これも母の手紙の影響なんだろうか。
母はこの家にいた時、こんな気持ちで見ていたんだろうか。
そんな風に思い返して、俺は陸斗に話しかけた。
「も、ということは陸斗”も”なのかな」
陸斗は俺を睨んだ。
「…お前に言う必要はない」
そして陸斗は振り返って後ろを向いて、壁にある椅子に座った。
時間にして5分ほど玄関で待った後、森下が現れた。
「海斗さん、陸斗さん、2階の書斎で蒼真様がお呼びです」
書斎?
珍しいなと俺は思った。
森下に続き、陸斗の後ろについて俺は書斎に向かう。
書斎の扉の前に立ち、森下は扉をノックした。
「はい、どうぞ」
中から父の声がして俺と陸斗は中に入った。
父は書斎の机の椅子に座っていた。
その机の前に平行に存在する長椅子に座れと言われて、座った。
「今日、二人にきてもらったのは、報告とこれからについて話がしたかったからだ」
父は椅子に座ってゆらゆらと椅子を左右に動かしながら話した。
そして急に椅子を止めたと思ったら、机に肘をついて両手を組んだ。
「義理母と離婚することとなった。ここ1年ほどずっと考慮を重ねていたが、婚姻関係を続けることは厳しい状況であると判断に至り、正式に手続を開始することにした」
父は淡々と状況を説明する。
父が離婚…俺は父の顔を見た。
「海斗、お前の離婚とその対応を受けて、離婚しないという選択が必ずしも西園寺家にとって悪い事ではないとね、そういう結論に至った」と父は俺を見ながら少し笑みを漏らしながら言う。
ドンという音がしたので見ると、隣に座っている陸斗が膝に手を強くあてたのだ。
陸斗の形相はひどく怒りに満ちていて、膝に置いた手は震えているように見えた。
陸斗の姿を横目で見つつも、俺は経緯を確認したかったので聞いた。
「一体、何があったのか、聞いてもいいですか、どういう状況なんですか」
俺は父に聞いた。
父はふっと笑って言う。
「海斗、お前は自分の離婚の報告時に自分が話したことを忘れたのか、自分の意見を尊重してほしいと言って、私に何も言わせなかったことを」
その言葉で陸斗は横で俺を睨んだ。
「離婚に対して意見はありませんよ、ただ離婚に至る経緯で何かあったのなら、その話を聞く権利はあるかと思っているだけです」
俺は父に冷静に返した。
父は俺の方を見て、ふうんと一言告げて、「海斗、お前も少しは状況を理解してきたようだな」と俺に言った。
「そうだ、海斗が気にしている通り、何もなければ離婚はしない。離婚する理由は義理母の金銭の使い込みと大事な資料の破壊行為がみつかったからだ。秘書の木下は義理母に命令されて対応したと言うのでね、あわせて木下にも辞めてもらうことにした」
大事な資料の破壊行為…絵梨は無事に届けたのだ。
俺は一瞬、心の中でホッとした。
木下が義理母のせいにした?
確かに木下の後ろ盾は義理母しかいないから、彼女が悪いと言うしかなかったのかもしれないが、運が悪かった。
父は木下のことも義理母に押し付けて、二人を西園寺家から除くことにしたんだ。
「これ以上様々な問題に、我々もかばいきれない、とはいえ、今までの功労もあるから、二人には十分に対応はするつもりだ」
父はそう言って陸斗の方を向いた途端、陸斗が椅子から立ち上がり、机に勢いよく両手をついた。
「陰謀だ、それは…二人を辞めさせるために、なすりつけているかもしれないじゃないか!」
陸斗は抗議し、もう一度、机を陸斗は叩いた。
「木下がそんなことをするわけない、母のことは今に始まったことじゃない、まだ離婚しなくても…やり直せるはずだ!」
「陸斗、いつからお前は俺に命令する立場になったんだ?」
父は陸斗をちらっとみて言う。
その姿を見て、陸斗は父のほうに向かい、激しく椅子を揺らして父に言う。
「そんな、そんなこと、ありえない…この生活が……もう子供の頃のような、生活には戻りたくない!!!!!」
陸斗は叫び、父は「海斗、森下、陸斗を押さえろ!」と呼んだ。
俺は椅子から立ち上がり、机のほうに行き、陸斗の手を後ろに組ませて落ち着かせた。
陸斗は俺を睨み、「お前のせいだ、何もかも…お前がいなければ、離婚しなければ…かいとぉぉぉ」と叫び出した。
森下は家のお手伝いさんを連れて、部屋に飛び込んできた。
喚き散らす陸斗を抑えて部屋から出して、「蒼真様、お怪我はありませんか?」と父に聞いた。
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