44 研究内容Ⅱ
<この回の登場人物>
西園寺海斗
この物語の主人公、兄の病院にあるクローンの情報を取得するため、古川さんと一緒に同居を始める。
古川佳奈:コードネーム:ルカ
3年前の事件で日本戸籍を消失、偽物のパスポートで日本に入国した西園寺海斗の大学の後輩(3歳年下)の女性、計画実行のため、コードネームをルカとした。
<今までお話(要約)>
二年前に命を失ったはずの友人たちが生きていた。
クローンとして生まれた友人の一人である光は、そのクローン研究を実施していた海斗の父の元にある研究の全てを回収してほしいと海斗に頼む。
海斗はクローン研究の実担当だった兄に接触し、病院の研究室にあるクローン研究情報を取得しようとそこにあるパソコンを確認する。ついにクローン作成の遺伝子の元となった人物、その人がウイルス感染で10歳で亡くなったことを知る。そして光の時々の発熱の原因がそのウイルスであるとルカは確信したのだった…。
ルカはデータのコピーをしつつ、パソコンを操作し、別の資料を漁りだした。
「…原因となるウイルスの情報もどこかに残ってるはず……そのために、ここまできたんだから…」
涙は流していなかったが、ルカの声は掠れていて、最後の方は小さく呟いた。
そこでちょうど目の前の作業中のフォルダしか入っていないパソコンのコピーが終わった。
俺はコピーされた情報が問題なく入っているか、内容を確認した。
そこで気になる名称を発見した。
父と兄の名前のフォルダがあった。
まず、父のフォルダの内容を確認する。
フォルダの作成日は母が入院して、1年後の日付あたりで作成されていた。
年月でフォルダは切られて、報告書が格納されていた。
どうも父はそのフォルダに、ある年月以降の全ての報告書を格納しているようだった。
一番過去の報告書を見ると、祖父が被験者として適切な人間の情報を集めており、一覧とそれぞれの詳細報告が記載されていた。
決定と書かれた部分にクローンの遺伝子元となった久我の情報も含まれていた。
久我の詳細情報としてその家系図が記載されており、そこに驚くべきことに…母の名前が存在していた。
そう遺伝子元の人間は…母の遠縁の親戚だったのだ。
苗字の一致は偶然じゃなくて…母の血縁の…関係者、だったのか。
俺は驚いたまま、その後の報告書をいくつか飛ばしながら、確認した。
ちょうど光が10歳になったころの報告書には、研究がひと段落した内容が書かれていた。
そこでこの研究は祖父から父に引き継がれていたようだった。
父はそこから個人的に研究員に報告をさせていた。
2つ目となるその報告書に、父と研究者とのやりとりの内容が入っていた。
その研究で母の親戚が選ばれて研究の元となった遺伝子の確認から、母の病気の経緯と臓器作成、さらには母のクローンの作成可能などうか等、細かく報告させていた。
そしてそれから5年ほど過ぎたあたりに、光の両親の死により、研究が一度打ち切られた旨の記載が書かれていた。
その後、父は兄を使って研究をこの病院で続けさせた。
そして年月最後のフォルダの報告書の結果に書いてあったのは、受精卵の育成がうまくいかない。
そう、光を除いて、クローン作成は成功しなかったのだ。
俺はそこまで読んで、次に兄のフォルダの中身を確認しようとした。
兄のフォルダはパスワードの入力が必要だった。これはCIAの作った解除プログラムで簡単に開けることができた。
なぜ?パスワードをわざわざかけているんだろうと思いながら、兄のフォルダを開いた。
兄のフォルダには1ファイルが残っていた。そこで兄は久我の精子に関する遺伝子を調べており、調査結果は…男性の場合、精液内に精子がほぼ存在しない特性の遺伝子だった。さらに兄は、その遺伝情報と自分の遺伝子を比較し、全く同じだという結論を導き出していたのだ。(久我がウイルス感染で亡くなったが、その後、このウイルスが性器内で変化して、最終的に共存した結果がこのような遺伝子になったようだと追記されていた。)
つまり、兄の精液中に精子がいない状態(無精子)であると、そこに結論づけられていた。
俺は先ほどの光のコピー元が母の遠縁の親戚だったという驚き以上に、兄の状況に絶句した。
ルカは横で作業に没頭している。
無精子であれば、兄の息子は誰だというんだ?あの子供は…赤の他人?
俺は子供が兄夫婦に似ていなかった姿を思い返した。
どういうことだ?
もちろん父からも、兄からそういう話は一切聞いたことがない。
そう考えて、…ここは病院だ、いくらだってなんとかできるじゃないか。
目の前のパソコンで病院の情報にアクセスした。
そして病院の出産記録を確認した。
子供は確か小学3年と言っていた。8歳から9歳になるころの出産…
1件、何も情報が書いていない出産記録が見つかった。
母親は事故で意識不明の中で子供を出産し、亡くなったという記録で、その後の情報が全く更新されていなかった。
これ以上、ここからは情報はなさそうと判断した俺は、次いで院長室のパソコンのフォルダにアクセスした。
同じ時期に何か対応していたら、パソコン内に資料が残っているはずだ。
俺はパソコン内のあるフォルダの作成時期を確認し、その年に作成されたフォルダを片っ端から開いていった、
1つの中に養子縁組のやり方やら、申請までの資料が入っているフォルダを発見した。
兄の子供は…養子だったのだ。
そして確信した。
結果は前に調べた通りであるが、自分の精液内に精子がほとんどないのは遺伝子の問題だったのだ。
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次回更新は来週の土日を予定しております。
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