42 研究室での計画の確認
<この回の登場人物>
西園寺海斗
この物語の主人公(33歳男性)、兄の病院にあるクローンの情報を取得するため、古川さんと一緒に同居を始める。
以下、3年前の事件で日本戸籍を消失、偽物のパスポートで日本に入国した3名
狭山光
前作の主人公であり、クローン研究で作られた唯一のクローン(30歳女性)で、西園寺海斗の大学の後輩
現在、ナリと一緒にかつてのアルバイト先で計画を見守っている。
成田廣重:コードネーム:ナリ
西園寺海斗の同級生(33歳男性)、かつての光の恋人、現在も光を好き。計画実行のため、コードネームをナリとした。
古川佳奈:コードネーム:ルカ
西園寺海斗の大学の後輩(3歳年下)の女性、事件後からナリが好き。計画実行のため、コードネームをルカとした。
<今までお話(要約)>
二年前に命を失ったはずの友人たちが生きていた。
クローンとして生まれた友人の一人である光は、そのクローン研究を実施していた海斗の父の元にある研究の全てを回収してほしいと海斗に頼む。
海斗はクローン研究の実担当だった兄に接触し、病院にあるクローン研究情報を取得しようとし、計画実施のために光とナリの潜伏場所である"和風洋風"というレストランで計画の内容を話し合うこととなった。
豪雨の中、大野さんとの電話は終わった俺は、ルカに電話した。
「もしもし…ルカ、寝てた?」
「うんうん、全然。実行前に仕込んでおくプログラムの確認してた。風花と会った?」
ルカは俺に聞いた。
「天候が悪すぎて、電話で話したよ。元気そうだったよ」
俺は電話の内容を一言で説明した。
「海斗…話、ほとんど省いてるよね?まぁ、想像できるけど」
半ば呆れた声がルカから発せられた。
「そういえば、大野さん、子供と赤ちゃん時代がそっくりと言って、写真もらったから、皆に、あとで転送しておくね」
先ほどもらった写真とその内容の説明をグループチャットで送信した。
「赤ちゃん時代の写真?…きたーーーー!こんなに似るもんなんだね。ありがと、海斗」
そういって言葉が途切れた。
すすり泣きが聞こえる。ルカはどうも泣いているようだ。
兄の子供の話をしようかと思ったが、それは今日じゃないかな。
そして俺はルカに言った。
「大野さんにさ、…生きていることはすごいことだって言われたよ」
ルカは鼻をすすりながら、少し涙声で言った。
「うん…海斗…それ聞いて、皆のこと、言いたくなったでしょ?」
図星をルカに当てられた。
電話口で俺は目に手を当てて、一呼吸おいて言った。
「そうだね…ルカ、…計画は必ず…遂行させよう、そして生きよう」
****
俺は出張を終えて、東京に戻った。
その週末の土曜日、明日の計画のため、俺、光、ナリ、ルカの全員で”和風洋風”で話し合うことになった。
俺とルカは13時過ぎに到着した。
この日は定休日でマスターはお店を貸してくれると言う。
扉を開けると、カランコロンと扉に付いていた鈴が鳴った。
テーブルに光とナリは横同士で並んで座っていた。
俺とルカは向かい合わせの席に並んで座った。
「お待たせ」と俺は言った。
「元気そうだな、風花ちゃんからの写真ありがとな。」
ナリはそう言い、光も隣で頷いた。
「ナリと光!マスターは?」
ルカは二人に聞いた。
「あぁ、出かけてるから好きに使って良いって」
ナリが答えて、ルカは「そっか」と返事した。
テーブルについて、まず俺はテーブルの上に出している光の左手にナリの右手が乗っているのを目にした。
俺の視線に気が付いたのか、ナリが「あ…マスターはさ、まだ俺たちのこと、恋人だと思ってるから…」と小さく呟いた。
そしてマスターがいないことに気が付いて、ナリは慌てて光の上に置いた手をひっこめた。
俺はそれだけの理由じゃないだろ?と心の中で思ったが、言わなかった。
その間、光は少し浮かない顔で、横にいるルカの顔色は伺えないが、複雑な気持ちだろう。
その様子をそのままにして、今日の目的である明日の計画について俺は話を切り出した。
「それで…明日の予定だけども、研究室のカギは手元にあるから、明日、ルカと二人で病院の研究室に行く。そしてルカは研究データをコピーして、最終的に内部からデータを全て削除する仕組みをセットする。その他、研究室に物理的な資料がないか確認する。俺は研究データのコピー中、データ内容の確認する分担としました」
ナリは「どうやって内部からデータを削除する?」と聞いた。
それに対して、ルカが両手組んで言った。
「あの病院内の端末を触っている誰かの端末からコンピュータウイルスを仕込んで、データを削除するプログラムを起動するつもり。プログラム自体はCIAで作ってもらったものだから、設定を間違えずに準備できれば実行できるはず」
「その誰かってどうやって決める?」
ナリはさらに突っ込んだ。
「あーナリ、それ聞く?やり方はね、あの病院内の一人ぐらいは勤務中にアダルトサイト見てると思うだよね。その人の端末をターゲットにさもウイルスがそこから入ったかのように工作するの」
ルカはドヤ顔で語った。その姿を見て、ナリは「うわー、それは恐怖」と言い、またそれにルカが「ナリはそこで恐怖というってことはさ、バラしてるもんだけどいいの?」と返して、ナリが「何でもない」と最終的に白旗を上げた。
横のルカの顔を見た。楽しそうな顔で話していて、少し安心した。
光はその様子を見て、微笑んでいたが、途中で何かに気が付いて、急に席を立った。
「マスターからデザート差し入れもらっていたの、忘れてた。コーヒーと用意してくるね」
そう言ってキッチンに入って言った。
「明日、よろしくな」
そうナリは言ったかと思ったら、「俺も煙草吸ってくるわ」と席をたち、キッチンに向かった。
その姿を横目で見ながら、俺はルカに声をかけた。
「ルカ、あのさ、明日、父の研究内容もあわせて確認したい…のだけども…」
そこまで言ったら、ルカから「うん…」と弱弱しい返事が返ってきたので、ルカの方に俺は向いた。
ルカはキッチンの方に視線を向けて、動揺している様子だった。
俺は「ルカ…もう、帰らないか?」と提案した。
ルカは静かに頷いた。
その姿を見て、俺はもう帰ると伝えようと、二人がいるキッチンまで行った。
お店のキッチンは入口から右側に向けて細長く作られているようで、二人がいるであろう奥に向かった。
そこで、俺は光を後ろから抱きしめるナリを目撃した。
ナリは光の首筋に手を当てて、顔を横に向けようとし、そのまま口づけをしようとしていた。
ガタッ
俺は動揺して、手をキッチン入口の棚に当てて音を出してしまった。
その音で、二人は俺に気が付いて、光はさらに奥に向かって行った。
ナリは俺に向かって「海斗…お前、良いタイミングで来るよな…」と言った。
「今日はもうルカと一緒に帰るから、この後はどうぞお好きに」
俺はナリにそう言って、くるりと反対側に向いてルカのいるテーブルに戻り、ルカに「待たせたね、さぁ帰ろう」と声をかけた。
ルカとのその帰り道、ルカが俺に言った。
「見たでしょ?ナリのアプローチ。それに対して…光はね…未だに、反応が薄い」
同じように感じたが、俺は何も言わずに歩き続けた。
ルカは俺の様子を見つつも、続けた。
「あの二年前の事件の前にね、一度、光に聞いたことがあるんだ。光はナリとそろそろ付き合ってもいいんじゃないかって」
ルカはしみじみと話し出した。
「光は『私とは好きかどうか話題にならないのに、どうしてしげとの場合は好きかどうかが大事なのかな』と言ってた。しげの光ヘの好きの意味と光のしげへの好きの意味は違うんじゃないかって、光はあの時、そう思っているようだった」
話を終えて、ルカの目の端から涙が一筋こぼれた。
俺はルカの背中をゆっくりとさすりながら、光の言葉を思い出していた。
-…言えたら、気持ちは少し楽、になるのかもしれない…でも、もし、それで今の関係が壊れたらと思ったら…言えないです。もう、誰も…失いたくないんです。
見に来てくださって、ありがとうございます。
次回更新は頑張れたら明日、または来週の土日を予定しております。
よろしくお願いします✨




