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月にキス-IdentityCrisis Rebirth  作者: MERO


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42/70

41 悪天候の中でⅡ

<この回の登場人物>

西園寺海斗(さいおんじかいと)

 この物語の主人公(33歳男性)、兄の病院にあるクローンの情報を取得するため、古川さんと一緒に同居を始める。


大野風花(おおのふうか) 結婚後苗字:佐藤(変わったにもかかわらず、主人公の脳内では結婚前の苗字で呼んでいる。)

 海斗の大学時代の後輩(3歳年下-30歳)の女性、海斗の紹介で出会った大学同級生と二年前に結婚&地元である北海道に移住、子供を出産した。


<今までお話(要約)>

二年前に命を失ったはずの友人たちが生きていた。

クローンとして生まれた友人の一人である(ひかり)は、そのクローン研究を実施していた海斗の父の元にある研究の全てを回収してほしいと海斗に頼む。

海斗はクローン研究の実担当だった兄に接触し、病院にあるクローン研究情報を取得しようとし、クローン研究が病気で亡くなった母を救うために実施したことと、

兄がその研究実施と引き換えに家の呪縛から解き放たれていたことを知る。

計画実施のために実行した妻との離婚と、兄に報告した次の週、出張で大学時代の友人の大野さんがいる北海道に行くことになり、久々に連絡し、会おうとしていたが悪天候で電話で話すことになった。

 大野さんは、間を開けて、俺の様子を伺うように言った。

「…子供が生まれて思うんですよね。……赤ちゃんは親がいないと生きていけないんですけど、……誰に何を言われたわけでもないのに、ミルクを飲んで、何かあれば大泣きして、…一生懸命に生きてて……生きるってすごい」


 …大野さんはきっと子供が生まれて…大野さん自身の生きるにも繋がっているんだろうなとその言葉を聞いて思った。

 そして俺に対して何を言うわけでもなく、大野さんから、『生きて』というメッセージが伝わってきた。

 生きている、ただそれだけでもすごいんだと、きっとそう言いたいんだと俺は受け取った。


「うん…そう、だね…」

 俺は相槌を打った。

 本当は、俺も…もがいて…そして光たちと再会して、なんとか『生きる』まで辿り着いたことを伝えたかった。

 伝えてくれてありがとうと、豪雨の音の中、静かに思った。

 いつものように、感謝を口にすればいいんだと思ったけれども、なぜかすぐに出てこなかった。

 

「…すみません、語ってしまいましたが…今度、ぜひ子供に会いにきてくださいね、私の子供時代に似ていて笑えます」

 大野さんは俺の返事を聞いて、話しすぎたと思ったようで話題を変えた。

 俺も伝えたい気持ちを必死に抑えて、その話題に乗った。

「そうなの?」


 大野さんは嬉しそうに話し出した。

「あとで写真送りますね~、子供と私の!あとついでに夫の子供時代も…そういえば、先輩もご結婚されましたよね?どうですか、結婚生活は?」


「あー…うん、先日、離婚しました」

 質問に俺はありのままを答えた。

 

「えっ?えーとそれは聞いてしまってすみません」

 驚いた様子で大野さんは(かしこ)まった。


「いや、全然、大丈夫だよ」

 もう過ぎたことだし、と俺は思った。

 そう答えたら離婚について大野さんは聞いてきた。


「それでは…どうして?奥さんとうまくいかなったんですか?…正直、先輩が離婚することが想像できなくて…先輩は何があっても決められた道を進むイメージがあったので」


「妻とうまくいかなくなったわけじゃないんだ。俺のね、自分勝手な理由」

 大野さんは「自分勝手な理由?」と聞き返した。

 俺は口ごもって、「…うん」と答えた。


「…何でもないです。あの…奥さんはどんな人だったのか聞いてもいいですか」

 その話は言えないという空気を感じたのか、勘が鋭い大野さんは質問を変えた。


 少し考えて、俺は今までに感じた美桜さんの印象を大野さんに伝えた。

「…俺をよく見てくれて、何かあったら家族に意見を上手に伝えて話を通してくれて、俺の心と体を満たしてくれる人、だった」


 大野さんは感じたまま(だろう)、俺に聞いた。 

「ふーーん?…先輩、まだその奥さんを好きなのですか?」


「え?」

 俺は固まった。


 美桜さんを…好き?

 …今まで、そんなこと、考えたこともなかったな。

 結婚することが決められていて、好きも嫌いも俺にとってそういう感情は必要なかったから。

 そのまま声を出さずに俺は考え込んでしまった。

 

 電話口での俺の反応に、大野さんは冷静に思ったことを伝えてくれた。

「えっ…て、うーーん、…個人的には好きかどうかと結婚生活を続けられるかは違うと思ってるので理解できないこともないですが、何でそんな風に思っているのに離婚したのか、ちょっと不思議です…そもそも先輩の所は私の家とは状況が違うので複雑なのかもしれないですけど…」

 そう話し出した時、赤ん坊の大きな泣き声が聞こえ始めた。

 その赤ん坊の声を聞いて大野さんは慌て始め、こう切り出した。

「…あ、もうこんな時間ですね…すみません、長電話してしまって…後で写真送るので!また連絡しますね!」

 

「こちらこそ、話せてよかったです。…生きるの話のくだり、ほんとにそうだなって…ありがとう、写真楽しみに待ってるよ、じゃあ、また」

 大野さんに伝わるかわからないが、最後に俺は今の率直な気持ちを述べた。

 そうしてお互い電話を切った。


 それから数分が経ったのち、大野さんの旦那さんから写真が送られてきた。

 子供(赤ん坊)の写真、大野さんと旦那さんの赤ん坊、子供時代の写真。

 確かに、赤ん坊と大野さんの目鼻立ちがよく似ていて、旦那さんとは輪郭と髪質が似ていた。

 遺伝子というものによって我々は祖先から出来上がっている、そう思った。


 その写真を見ながら、先日、兄の病院で会った兄の子供の顔が浮かんだ。

 兄とそして奥さんに、彼らの子供の顔立ちは全く似ていなかったと。

見に来てくださって、ありがとうございます。

次回更新は週末を予定しております。

よろしくお願いします✨

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