35 本心
離婚して独り身になった俺は美桜さんの最後の姿と、言葉を引きずりながら、光たちに連絡した。
来週末、日本に到着するという。
光とナリ、俺と古川さんという組み合わせで、光とナリは光が昔、アルバイトしていたレストラン"和風洋風"で過ごすという。
俺と古川さんは一日ごとに宿泊するか決められるアパートメントの隣同士でしばらく暮らしながら、連絡を取り合うことになった。
なんとか頭の中を切り替えようと思ったが、何もない自分の部屋にいると考えてしまう。
-…そう、ですね。…弱音を言わない、所だと思います。何か…抱えているように見えましたけど…それがあの検査結果だったのかもしれないですけど…もし伝えてくれたら…一緒に考えられたかもしれない…この結果になる前に…
美桜さんの言葉は最後に俺の心を抉り、かつての傷を呼び覚ました。
-………もっと早く知っていたら………
-もう二度とあんな状況に陥るのはごめんだ
俺が全てが終わった後で恒星に光が絶望しないように一緒にいてほしい、と言った時に、恒星に言われた言葉。
……最善を尽くした、なんて思ってない。
でも…俺と一緒にいて…巻き込まれたら…と思ったら…俺はもう二度と自分のせいで誰かを失いたくない。
美桜さんには幸せになってほしい。
この状況で、そう願うことも許されないのか…
そして、ふっと頭の中に恒星の言葉が浮かぶ。
-僕の気持ちは考えてくれないんですか
美桜さんの父親の言葉が浮かぶ。
-美桜の本当の気持ちは…
…そうか。
俺はまた自分の思いばかり先行して、相手の気持ちを見ていなかったんだ。
美桜さんの最後の笑顔が浮かんだ。
-…私、家同士で結婚した、なんて思っていないです。…できれば私が海斗さんの支えになりたかった。でも…私と離婚することで…もっと海斗さんらしく感じたまま、進んでいけるなら…それでいいと思ってます。
美桜さん、ずっと…こんな俺を…そのままの俺を受け止めてくれた君に俺は……
-でも…それは海斗さんだけじゃないんだと思います。私も海斗さんに話していないこと、たくさんありました。だからおあいこです
…そして今更、気づく。
美桜さんという人を俺は理解していたんだろうかと。
本当の美桜さんはどんな人で、何が好きで、何が嫌いで…そして君の本当の気持ちは…
顔に手を当てて、俺は嗚咽を出して泣いた。




