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月にキス-IdentityCrisis Rebirth  作者: MERO


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19/70

18 計画

「それは手伝ってくれるという意味に受け取ってかまいませんか?」

 光は両手を胸の前で組んで、俺に聞いた。


 俺は頷いた。

「どんな結果であろうとも、光を孤独させない。光がここにいる証明をしよう」


 身体を震わせながら、光の目には涙が溜まって目の端から一筋、流れた。


「海、斗さん…ありがとう…」


 ありがとうって言うのは、俺の方。

 

 光がいなかったら、俺、恒星の気持ち、わからなかったかもしれない。


 孤独を作ってたのは、自分だったんだなって、気がついたんだ。

 俺に気が付かせてくれた君を一人になんかさせない。


 たとえ、クローンであっても、俺にとっては唯一の『光』なんだ。


「涙拭いてあげたいけど…朝、ナリに止められたから…どうぞ」

 俺は昨日、借りて洗ったハンドタオルを光に差し出した。


「…ナリ?」

 光が聞いた。


「ナリが、心配してた。俺と二人っきりだから」

 俺は言った。


 光は少し笑った。


「俺はもうナリ止めないから」

 俺の言葉を聞いて、光の目が大きく開いた。


「光には光の理由があると思うけど、俺はナリの気持ちも大事にしたい」


 光を好きなナリを、ずっと見てきたから。

 朝の古川さんとのやりとりみて、ナリの光への愛情表現はアイツらしさの一部だって思ったから。


「…うん」


 光は少し目線を落として、考え込んでた。

 

 そして考えがまとまったのか、俺に向けて言った。

「私、着替えてきます。リビングでこれからについて、話しましょうか」


※※※


 光は長袖のシャツにカーディガンをかけて下は薄いピンクのパンツを履いて戻ってきた。


 光はリビングのソファーに座り、ノートパソコンで時系列で事象をまず見せてくれた。


「我々が持っている情報は少ないです。研究は政府主導で実施されて、15年前を最後に一時、凍結されました」


「研究所の爆発事件か」

 俺は当時、世間を賑わせた事件を思い出して言った。


「はい。両親が狙われていることを察知して、関連資料のほとんど全てを巻き込んで自殺しました」

 光はまた涙が流れたようでタオルで拭いた。

 

「それから最後の成果物である私が一人、残り、監視対象となったんです」


 俺は聞いた。

「研究はどこかに残ってたの?」


「元々は国会図書館にあったようです。国にあると盗んだ技術としてそこに置いておくのは危険であるということで当時の厚生労働大臣である西園寺創真さん、海斗さんのお父さんの元に渡ったみたいです」

 光は淡々の事実を述べた。


「それらの資料を手に入れて、西園寺グループは独自で研究を始めたらしいのです。それが…現在、海斗さんのお兄さんのいる病院と関連施設です」

 

 また、研究を始めた?兄の病院で?

 

 光はなるべく俺を見ないように、説明をした。

 気を遣ってくれているようだった。


「私の今までの健康診断の結果。それらは全て父と母がいた研究所経由でその施設に送られていました」

 それらの情報はその施設で分析されていたのではないかと光は付け加えた。


 それで病院関連施設と繋がったのか。

 

 そして光は少しトーンを落として言った。

「私がいなくなり、研究は頓挫しました。そのまま今に至ります」


 俺は少し考えた。

 光がいなくなって頓挫?

 

 ふと思ったことを俺はそのまま口にした。

「なぜ研究は継続、完成しなかったんだろうか」

 

 光がいなくなるまで、数年あるから研究資料があれば、光と同じようにクローンが誕生してもおかしくないのに、なぜ、そう完成しなかったのか、俺には疑問だった。


 光は下を向いて、途切れ度切れに話した。

「…それは父と母が一部を研究通りに実施しなかったからです。その一部が私の手元にあります」


「偶然に成功した?」

 俺は思ったことを聞いた。


「偶然なのか、意図していたのか、間違いなのかわかりません…私は皆が思っている成果物ではありません。……偽物なのかも…しれません」

 

 光はためらいがちに説明し、偽物部分を小さく呟いた。


 そして、「ただ私が持つ情報がなければ、私というものを再度、作り出すことはできないようです…」と言った。


 光が自分がわからないと言っていたのは、このことだったのかのだろうかと俺はこの時は、そう思った。


 これで光が持つ情報は全てのようで、光は計画の説明をしようとパソコンを準備している中、俺は今までの情報を頭の中で整理した。


 兄の病院か。


「…俺が…兄から聞けばいい?」

 俺は光に聞いた。


 光は俺を見て、パソコンから口元に手を当てて、重い詰めた顔をした。


「それが、最短ルートでしょ?」

 俺はさらに加えた。


「でも…」


「そうだな、正直、兄とはほとんど交流がないから、うまくいくかわからない。ただあの病院には知り合いも多いんだ。だから、なんとかなると思うよ」


 俺が隔離された病院。

 そして恒星と会うことになったあの場所。


 忘れられない場所。


「研究室は第1手術室横の通路から続く施設で実施されていたようです。そこに資料も存在しているはずです」

 光は俺にそういった。


「わかった。光が持っている情報、もらって内容を確認してもいい?」

 俺は言う言葉に光は頷いた。


「俺は先に日本に帰って、準備するけど…光たちはどうする?」

 俺は聞いた。


「偽の国籍・偽名のパスポートがあるので、それで日本に渡ります」


 光はパスポートを見せてくれた。

 さすがCIA。


 光はさらに続けた。

「一箇所に集まって動くと危険なので佳奈と動いてもらっていいですか?」


「ああ、それはいいけど、何で古川さん?」


 つい、仕事のようにいちいち突っ込んでしまう。

 光は俺のそんな姿に気がついたみたいで、少し笑った。


 そして光は説明してくれた。

「私は表立って動けず、研究の内容を把握していているのが佳奈だからです」


 俺は頷いた。


 計画の日程を話す前に俺はやらなければならないことがある。

 それを光に伝えなければならない。


「…その計画前に、日本に帰って手続してもいいかな?」


 光は俺を見た。


「妻との離婚の手続が終わったら、計画を開始したい」


「…」

 光は俺を見て、何も言わない。


「昨日、言ったでしょ。妻に…美桜さんに幸せになってほしいと。そもそもこの話があってもなくても、元々、別れるつもりだったんだ。美桜さんを巻き込みたくない。だから別れて何も関係がなくなってから、…実行させてほしい」


 まず、日本に帰って、俺はこの二年間、支えてくれた妻に別れを告げる。

 

 美桜さんの笑顔が浮かんだ。

 そして、なぜか昨日の一言が浮かんだ。


-謝るなら、言うべきじゃないですよ。でも、事前に言ってくれた気持ちは受け取ります。


 感謝を、そして彼女のこれからのために、俺は可能な限り、できることを尽くしたいと思った。

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