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月にキス-IdentityCrisis Rebirth  作者: MERO


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16 恋の苦しみ

 光の言えないという一言に、きっと事情があるんだと察した俺は、話を変えた。

 

 時計をみたら13時を過ぎていた。

 

 お昼は朝から光と古川さんと二人でサンドイッチと飲み物を準備してくれているというので、俺は提案した。


「もうお昼もとっくに過ぎてるし、食事を食べようか」


 光も頷いて、同意してくれたので、近くの遊歩道にところどころに設置されている椅子に二人で座った。


 光が持ってきたバックから昼食を渡してくれた。

 サンドイッチという話だったが、それは大きなコッペパンにベーコンレタストマトが挟まれた食べ物だった。


「いただきます」

 光と俺は一緒に声を出したので、お互いを見合って笑った。


 俺はサンドイッチを口に運んだ。


 光とのランチは何年ぶりだろうか。

 あの頃はいつも横に恒星がいた。


 サンドイッチは、間に入っているソースがアクセントになっていて、美味しい。


「…美味しいよ。準備、ありがとう」

「ほんとですか、それはありがとうございます」

 二人で感謝を述べあって笑ってしまった。


 そういえば、いつも食事をナリに持ってきてもらっていたけど、あれも光と古川さんが作っているんだろうか?


 俺は光に聞いた。

「いつも、食事は光と古川さんが作ってるの?」


「休日は作ってます。それ以外はお手伝いのケイティが作ってくれます」と光は答えた。


 そうか、お手伝いさんがいるんだ。

 俺は納得した。


 そして俺は食事を食べながら光に言った。

「…恒星のこと、よく思い出すよ」


「…私も、ですよ。特に食事してると…恒星くんの、『ちゃんと食べてますか』思い出しますね」

 光は少し微笑みながら、恒星がよく言ってたセリフを言った。


 俺はずっと光に聞きたかったことを言った。

「…あの、実際、一緒に暮らしてた時、光は恒星のことをどう思ってた?」


 光は食事する手を止めて、俺を見た。

「…友人とも恋人とも違う、家族、みたいな存在でした。…海斗さんが思うような、気持ちはないです。…恒星くんは海斗さんのこと、大事に想っていて、私にね、素直に話してくれましたよ」


「!?」

 俺は驚いて、言葉を飲み込んだ。


 そんな俺を気にせず、光は続けた。

「恒星くんは、愛っていう言葉に括れないほどの…気持ちを抱えて、これは想像ですけど、…きっと幸せだったんじゃないかと思っています」

 光は、俺にまた笑顔を見せた。


「光…」


 そうだね、俺は恒星からたくさん愛をもらってた。

 俺はあいつがいたから、自分という意識を取り戻せた。


 …でも俺はずっと恒星を子供みたいに困らせて、気持ちを都度、確認してた。


 俺は…恒星を失いたくなかったんだ。


 言葉にしたら、泡となって消えてしまいそうに感じてた。


 恒星にいつか、愛する人が現れたら、そうじゃないと言い逃れできるように、恒星を『俺に必要な大事な唯一無二の友人』という位置づけていた。でも、縛り付けたくて光の世話をお願いした。


 だから、ずっと心配で…気持ちを試してた。


 俺は膝にサンドイッチをおいたまま、考えこんだ。


 光はそんな俺から目を話して、空を見て、言った。

「…私、恒星くんが羨ましかったです。他人の評価ではなく、自分の気持ちに正直に、自信を持って相手を好きだと表す姿。…きっと空の上で、今も見守っていてくれるはずです」


「…そう、思ってたんだ。…俺は…」

 俺は…ほんとに、ズルくて情けないな。


 言葉が出てこなかった。

 代わりに目の端から涙が頬をつたってきた。


 今更ながら、俺は…恒星の俺に対する思いを光を通して、どれだけ想われていたのか、知った。


 それに対して…俺は恒星に愛していると、一言も言えなかった。


 俺はどうして言えなかったんだろうか。


 泣いている俺に光は少し微笑んで、横においたバックからハンドタオルを渡してくれた。


 そして光は言った。

「うん…海斗さん…私も恒星くんみたいになれたらいいなと思っているけど…いつまでたっても気持ちをうまく表現できない…」


 俺は光を見た。

「…光……は、ナリのことを?…」


 微笑んだまま光は俺から視線を外した。

 そして静かに言った。

「…言えたら、気持ちは少し楽、になるのかもしれない…でも、もし、それで今の関係が壊れたらと思ったら…言えないです。もう、誰も…失いたくないんです」


 ああ、そうか。

 …光は俺と同じ気持ち、なんだ。


 俺はやっと光の気持ちに触れた気がした。

 

 光は、まだナリを想っているんだ。

 別れてからずっと想っていたんだろうか。

 

 ナリだって好きなのだから、障害は何もないはずなのに…何か理由があるんだろうか。


 光から受け取ったハンドタオルを折りたたんで、言った。

「…言えないこと、…あるよな。俺も…言えなかった」


 相手を失いたくない。

 大事だから、言えないこともある。

 知られたくない部分がある。

 

 今は言えばよかったと後悔しているが、実際、もし過去に戻れたとして、俺はきっと言えないだろう。

 

 後悔してもしかたがない、ことか…。


 恒星もどこかで光の本音に触れたのかな。 

 そしてそれを見て、俺と光を似ていると言ったのかもしれないな。

 

 …恒星はそんな俺も受け入れてくれていたんだ。

 

 そう、…それも俺の一部だ。

 確かに…光と俺、似ているのかもしれないな。

 

 光に言おうかと思ったけれど、光は中断していた食事を始めた。


 それを見て、俺は残りのサンドイッチを口に入れた。

 そうして光も俺にあわせて、食事を終わらせた。


「ごちそうさまでした。…さて、飲み物飲んだら、駐車場に向かいましょうか」


 そう光は俺に言い、携帯を触り始めた。

 どうもナリと古川さんに連絡したようだ。


 そして渡されたコップに暖かそうなコーヒーらしき液体を注いでくれた。


「ご馳走さま、そしてありがとう」

 一口飲んだら、やはりホットコーヒーだった。

 それで身体だけではなく、心も温かくなった気がした。

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