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レッツ!薬草採取!



「ふふーん!」



 スターは俺が驚いた表情をしているのを、かなり満足そうに見つめている。俺相手に優越感などを抱いて何が嬉しいのやら。とはいえ、確かにライセンスをお金で買えるなんてことは初耳だし、ものすごく有益な情報だ。



「で、肝心のライセンス、どこで買えるんだよ?」


「塔の50階よ!」

「無理だろ!?そんなところまで行けるわけねぇよ!50階まで行ける実績があれば、大手冒険者ギルドだって雇ってくれるわ!」



 諸問題をぶっちぎった発想だ。

 そもそも、塔の50階へ行くのに、ライセンスどころかクラスに就く必要すらあるだろう。

 クラスのステータス補正やらレベルアップやらがなければ、とてもじゃないがたどり着ける場所ではない。仮に、上位の冒険者を雇ったとしても、一緒についていくだけでも困難な場所だ。




「安心しなさい!」



 しかし、そんな俺の問題点を前に、スターはドヤ顔を見せる。

 どうやら、何か手立てがあるようだ。




「何だよ、何か方法でもあるのか?」


「私は、塔の50階ならファストトラベルできるわ!」



「…スターさん、あなたは本当に何者ですか」



 ファストトラベルできるということは、この猫は塔の70階以上に進んだ経験があることになる。トップクラスの冒険者並である。そんな背景もあり、俺はスターの言葉に対して、思わず敬語が出てしまった。


 出会った当初ならこいつの言動に疑いすらするけれど、何だか、もう、それが真実だろうとすんなり入ってくる。



「言ったでしょ!私は勇者よ!えっへん!」

「…だけどさ、問題があるんだよな」


「何よ?私のプランは完璧よ!?」



 スターの言葉に俺は衝撃を隠せないでいた。

 ライセンスをお金で取得できるならば、こんな俺でも人生を変えることができるかもしれない。そもそも、どうやってライセンスを売るのか知りたいぐらいだが、話が事実かどうか以上に、大きな問題点があった。




「…俺、金がないぞ?」


「借金してでも、ライセンスは買っておいた方が絶対に良いでしょう!」



 ま、確かに。

 このまま就職できずに野垂れ死にするぐらいなら、ライセンス取得して、普通の職業に就きながら、地道に借金を返していく方が健全なプランであることに間違いない。



「うーん…幸いなことに、一文無しだけど借金はないからな。どこかで貸してくれるヤツいるかもしれないけど、そもそも、ライセンスっていくらぐらいするんだ?」


「剣術検定C級で300万ゴールドよ!」

「無理だろ!!そんな金!!」



 スターは、その実力もあってか、300万ゴールドぐらいははした金なのかもしれない。

 しかし、一般庶民以下の俺にとって、300万ゴールドはかなりの金額だ。



「借りられないの?」

「…」


「自分の人生を変えたいんでしょ?」

「…そこまでの額を借りるのは無理だ。俺に金を貸してくれるだろう連中は、おそらく真っ当じゃない」



 俺がスターへそう告げると、眉間に寄せて、口元に手を当てる。まるで人間のように考える仕草を行う。しかし、それ以上、俺へ借金を勧めてくることはなかった。


 これ以上を口にしないのは、きっと彼女も想像ができたのだろう。

 俺に金を貸してくれるところは闇金とかそういうところだけであろうと。


 野垂れ死ぬぐらいなら借金しようと考えたけど、普通の銀行や金融ギルドには断られた。それでも、闇金からお金を借りないのは、返せなくなった時、死ぬよりも酷い目に逢いそうだからだ。




「そう…そしたら別の手段を考えないといけないわね」

「ああ、そうしてくれ」









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 白い草が膝元まで伸びている。

 そんな光景が一面に広がっており、地平線の彼方に見えるアルガス山脈まで、このミンクフィールドと呼ばれる草原は続いているようだ。そして、背後をふり返ると、まるで天を突き刺すような高さでそびえ立つベグマの塔が見える。



「ほら!ボーっとしない!」

「へいへい」



 俺の肩でそう鳴くのはスターだ。

俺とスターが出会ってからすでに3日は経過している。まだ3日かと感じるほどの濃い時間に感じるが…




「…ほら、そこ!少しだけ草の背が高いわ」

「え?」



 スターは猫の手を草原に向ける。そう言われても、一瞬では指し示している場所がまったく判断できない。



「ほら!そこよ!そこ!」

「…どこだ…あ、あった!」



 よくよく見ると、確かに少しだけ草の背が高い。


 ミンクフィールドと呼ばれる白い草原には、なぜか一面の草が同じ背丈で伸びているのだ。

 しかし、スターいわく、細かく観察すると、稀に背丈が違う草が生えていることがある。



「これか」

「そう!」



 俺はスターに言われるがまま草を抜く。

 ミンクフィールドの白い草は、ここでしか見られない品種だが、こう一面に生えそろっていると希少価値などまるでない。そもそも、何の役にも立たないのだが…



「…抜いたけど、これが何かになるのか?」

「ええ、貴重よ!」

「貴重?」


「そう!一見すると、ここの草は全部同じに見えるけど、実は違う種類の草がこうして混ざっているのよ!ほら!薬草になるのよ!大事に扱って!買ってくれる人は買ってくれるわ!」



 スターのおかげで、その辺の草やキノコで3日間食いつないでこれた。こいつがかなり博識であることは、もはや疑いようのない事実であるため、こいつが売れると言えば、売れるのだろう。



 しかし、問題は…





「…これを買ってくれるヤツが塔の50階にいるなんて言わないよな?」



「大丈夫よ!ベグマにある冒険者ギルドが相手だから」



「いくらぐらいで売れるんだ?」

「そうね…1本で1,000ゴールドにはなるわね」


「…もっと探すぞ!!」

「ええ、その調子ね!」


「ああ!30,000本も集めれば300万だろ!」

「…3,000本よ」



「よっしゃ!そんなもんで良いんだな!もっとやる気が湧いて来たぜ!」







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