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【チーターで世界最強?】32歳未経験が大手冒険者ギルドへ転職できたわけ  作者: 魚介類
うるさい犬と指名手配された男
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コロン・ボ・ホームズ



俺達はベグマに到着すると、ゼルと別れ、ライトとチェルシーを家まで送ると、スターと俺だけでアルファギルドへ報告に向かう。


 そして、ベグマの中央通りを進んでいる時だ。

 街の騒がしさに紛れるようにスターは俺の耳元でささやく。




「クラッド」


 スターが明らかに内緒話をしたい素振りであるため、俺はそのまま何もリアクションを取らずに歩き進める。


 すると、スターはそのまま次の言葉を紡ぐ。



「…尾行されているわね」

「え?」


 元々、顔や仕草に出さないように意識していたため、思わず小声が漏れただけで済んだ。

 俺はそのまま周囲を窺ったりすることもせず、アルファギルドへと向かって歩み進める。



「…あのローブ、どうやらベグマギルドの冒険者みたいね」

「…」


 スターは俺が疑問に思っていることを次々と説明してくれるため、俺はただただ聞くに徹し、歩き続ける。


「それもGBIの連中ね…」

「っ!?」


 ベグマギルドの冒険者には3段階で捜査権限が分かれており、GBIと呼ばれる冒険者は最上位の権限を持つ存在だ。それだけの権限を持つだけあり、大規模な犯罪や大物の捜査を担当することの多い冒険者達である。当然、それだけの実力を備えている連中でもあり、俺なんかを尾行する暇があるような奴らではないはずだ。



「帝国の回し者ということはないわね」

「…」


 ベグマギルド、特にGBIは各国にまったく忖度をしない。

 その姿勢がベグマの独自の自治権を強固に保っているとも言える。裏を返せば、帝国の支持で俺を尾行している可能性は低いということだろう。



「目的はわからないわ…」

「…」



 スターですら、なぜGBIが俺を尾行しているのかわからないようだ。

 嫌な予感だけはするのだが…



「とりあえず、アルファギルドへそのまま向かいましょう」




 俺はスターの言葉に従い、そのまま中央通りを進んでいき、やがて大きなテントが見えてくる。あれがアルファギルドの本部である建物だ。


 しかし、そんなアルファギルドの本部が見えてくると…




「…おいおい」



 俺は思わず足を止める。

 なぜなら、先ほどまで周囲を歩いていた人々は姿を急に消している。

 目の前には、青いローブを纏ったベグマギルドの冒険者が隊列を組んでいる。

 そして…



「背後も…そうね。完全に囲まれているわ」



 俺はスターに言われて背後を振り返る。

 すると、彼女の言葉通り、背後にも青いローブを纏ったベグマギルドの冒険者が隊列を組んでいた。




「…クラッドで間違いないな」



 背後にいるベグマギルドの冒険者達の中から、ぬっと出てくるのは妙齢の男性だ。

 明らかに指揮権を持っていそうな人物である。



「あ、ああ…確かに俺がクラッドだ」

「そうか…単刀直入に告げる。貴様には殺人の容疑がかかっている」



「殺人!?」



 俺は思わず叫ぶ。

 帝国のことや村での出来事のことかと思っていたが、まさか殺人とは予想外であった。



「待ってくれ!俺は人殺しなんてしていないぞ!」

「…それはこれからの調査で判断する。今は大人しくこちらの指示に従ってくれ」


「指示に従うのは構わないし、暴れるつもりも、抵抗するつもりもない。俺は誰かを殺し…」


 俺は思わず口籠る。

 まさか、帝国の将軍のことか?



「…どうした?誰かを殺し?何だ?」

「1つ、聞かせてくれ」

「なんだ?」


「俺は誰を殺したってことで、こんな騒動になっているんだ?」

「トラッジ、お前のよく知る人物だろ?」

「トラッジ!?」


 まさか、トラッジが殺されているとは驚きだ。

 いや、なるほど、確かに、あいつが殺されたら俺に容疑がかかるのもわかる話だ。因縁はあるしな…



「…俺は今までベグマの外にいたんだ。アリバイはあるぞ?」

「そうか、言いたいことはあるだろうが、まずはご同行願おうか」

「了解だ」



 俺が妙齢の男性の言葉へ素直に応じると、すぐに周囲に人々が通り過ぎ始める。

 気づけば、今まで俺達を包囲していた青いローブの連中が姿をパッと消している。



「す、すげぇな」

「ああ、お前さんが素直に応じてくれたからな。ここまでする必要はないという判断だ」

「そ、そうか…」



 認識阻害やら人払いやら、そんな魔法の応用だろうか。

 俺は妙齢の男性に連れられて、そのままベグマギルドに向かって歩き続けると…



「ん?」

「こっちだ…」



 妙齢の男性は、ベグマギルドの方向ではないく、別の路地を案内し始める。



「…」

「…ま、警戒するのも無理ないな」



 妙齢の男性の雰囲気が変わる。



「で、プラチナは近くにいるのか?」

「プラチナ?」


「ん?俺のカンが外れたな。てっきり、お前さんは繋がっていると思ったがな」

「1度だけ鎧を売ったことがあるけど、それ以上の付き合いはないぞ」


「ふむ、ああ、話がそれたな。安心しろ、俺はお前さんの味方になれるはずだ」

「味方?」


「そうだ。まず、俺はコロンだ。よろしく」



 そう言ってコロンと名乗る男性は不敵に笑った。




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