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魔王降臨?




「…」


 俺はゆっくりと地面に降り立つと、そんな俺の目の前に白銀の騎士が歩み寄ってくる。

 助けてくれたお礼は言わないとなと、白銀の騎士が近寄って来るのを待っていると…



「…っ!?」



 俺は不意に思い出す。

 大魔公ベリアルスの主人の名前と姿を。


 白く輝く鎧に身を包み、赤いマントを風になびかせた騎士

 魔王のイメージのそれとそぐわない風貌をしているとの噂であった存在のことを。



「まさか…」



 古龍である緑龍が素直に言うことを聞くかもしれない存在

 圧倒的な戦闘力を持ち、勇者プラチナと同格であるとされている存在





「…そう、やっぱり、気付かれてしまったのね」



 俺が気付いた衝撃を隠せないでいると、白銀の騎士は歩みを止めて、そう呟く。

 どうやら俺が想定した人物と白銀の騎士は同一人物のようだ。



「今まで隠「魔王!!ディアホワイト!?」


「…」



 何か言おうとしていた白い騎士の言葉へ被せるように俺は叫ぶ。

 すると、少し落胆したような、安堵したような雰囲気が白い騎士から漂う。



「そ、そう、わ、私こそは魔王!ディアホワイトなり!」



 ディアホワイトはどこかぎこちない様子でそう叫ぶ。

 やはり、かの魔王であったようだ。



 ど、どうして…こんなところに魔王が!?



「俺は感じた疑問を口に出せずにいた。それほどの衝撃であった…」

「セリフと逆になっているけど、まぁいいわ」


「…あわわわわ」


 俺はあまりの恐怖に腰を抜かしてしまう。

 そんな俺へため息をつく魔王



「こ、ここで会ったことは他言しないこと!いいわね!?」

「…ごくり」


「返事は!?」

「は、はい!」


「よろしい!では!」



 そう言ってディアホワイトはパッと飛び立つと、そのまま森の彼方へと姿を消していく。

 まるで緑龍の脅威から救いに来ただけのようにも見えるが、相手は魔王だ。

 そんなはずは絶対にない。



「…な、何が狙いだ?」



 俺はまだ近くにいるかもしれないと考えて、そう叫んでみる。

 すると…




「あまり深く考えないほうがいいわよ」


「おわ!?」



 俺は背後からスターの声がすると、思わず驚いて飛び起きてしまう。



「びっくりし過ぎよ」

「う、後ろから話しかけんなよ!」



 俺の背後にはスターがいた。

 いつも通り不遜な表情を浮かべて俺を見ている。



「お、お前!?今までどこに!?」

「木の人形達を討伐していたわ」

「そ、そうか…勝手に姿を消すのだけはやめてくれよ」


「そうね。それは謝るわ」

「はぁ…えっと、状況を整理したいんだけど」

「ええ」


「古龍の脅威は去ったってことで良いんだよな?」

「ええ、大丈夫そうね」


「で、将軍はどうなったんだ?」

「どうやら古龍自体にオーソリティが設定されていたようね。それが中で競合して、将軍が負けたのかしらね。それで緑龍に意識が戻ったんだと思うわ」

「う、うん?何を言っているか分からないけど、とりあえず、将軍も去った感じか?」


「ええ、これで死んでくれていると良いのだけれど…」

「まぁ…そうだな」



「もし生きていたら、クラッドは今度も狙われるかもしれないわよ?」

「…ベグマからは迂闊に出られないってことだな」

「そうした方が良いわね」



 独立自治権のあるベグマだからこそ、帝国などの他国の干渉を受け難い。

 もし、ベグマから離れることになれば、今回のような事件になるし、誰かを巻き込んでしまう可能性もあるのだ。



「ベグマで暮らすと決めて、ここへ来たけれど、離れてはいけないってわかると、それもそれで窮屈だな」

「わがままね」

「そう言うな」


「さ、村へ行くわよ」

「あ、ああ、そうだな」



 俺とスターはゼルやシェリル達が待っているであろう村へと戻ることにした。

 インターンで受けていた依頼は解決した状態だし、古龍の危機も去った。帝国のことだけ不安はあるけど、一段落したと言える状況だろう。




 …そう、俺がベグマに戻るまでは確かに平穏であった。





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 へスパギルドの一室

 そこに青いローブを纏った男性2人が受付の女性に案内されて入っていく。


 男性を案内する受付の女性の表情は緊迫感に溢れており、何か事件が起こったことは容易に想像できる雰囲気であった。



「ここまでで」

「は、はい」



 部屋の前で男性2人は立ち止まると、案内してくれた女性へそう告げる。

 すると、廊下の壁のところまで女性が後退していく。



「…」



 男性2人は顔を見合わせると、すぐに部屋の扉を開く。

 部屋はクラッドの元上司であるトラッジの執務室であり、中にはトラッジがいた。

 文字通り過去形で部屋にはいたのだ。




「…害者は?」


 妙齢の白髪の男性が、目の前で倒れているトラッジの姿を確認しながら、片方の若い男性に尋ねる。

 すると、即座に若い男性は本を捲りながら答える。


「へスパギルドの課長、トラッジ・アルメトロです。かなり問題のある人物のようですね。ただ、物が盗られているため、怨恨以外の線もありそうです」


「…この有様でか?」

「もちろん、金品と怨恨の両方が動機だと思います」

「で、ホシに心当たりは?」


「はい、一番濃厚なのは…この人です」


 若い男性は本の1ページを妙齢の男性へと見せる。



「…クラッド?珍しい名前だな」

「珍しいですかね?」


「…いや、それよりも、こいつは?」

「はい、被害者の元部下で、トラッジによって解雇されています」

「なるほど…こいつはどこに?」


「現在、調査中ですが、そろそろ結果が出ていないか確認してきます」

「ああ、頼んだ。それと、資料をこっちに、その間に調べたいことがある」


「はい」



 若い方の男性は言われた通りに妙齢の男性へ資料を手渡すと、敬礼し、部屋を後にする。そして、残った妙齢の男性はすぐにその資料に目を通し始める。



「…確かに、こいつの直前の行動が妙だな…職を失ったから当然とはいえ、金に困っている感じだな…」


 妙齢の男性は、第1容疑者が確かに犯人として濃厚だと納得しつつ、そのまま資料を読み進めると、とあるページで手が止まり、その瞳が大きく開かれる。



「タレントがない…?そんなことあり得るのか?」


 妙齢の男性はそう呟くと、今度は虚空から別の資料を取り出す。アイテムボックス系の魔法によるものだろう。


 そして、取り出した資料を勢いよく捲っていくと、とあるページで彼の手が止まる。



「オーソリティ…ゼロ計画…」


 男性はそう呟くと、窓の外から見えるベグマの塔を見つめる。



「くだらない陰謀論だとばかり思っていたが…」




これで第1章は終了です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第2章は、書き溜めていたものが完結してからアップしていく予定です。

もし続きを読んでいただけるのであれば、恐縮ですが、少しだけお待ちいただけると幸いです。


第2章からは、クラッドがチート能力を少しずつ発揮していきます。

タイトルの半分を回収できると思いますが、就職自体はまだ先になると思います。

世知辛い世の中ですね…

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