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異変 パターンEX



「ちっ!!」



 ゼルは斧を振り回すと、風切り音が周囲に鳴り響くと同時に、緑の鮮血が舞う。




「ゼルさん!?」


「お前らは家ん中っ!入ってろ!!」

「で、でも!」


「邪魔だって言ってんだ!!」


「っ!」



 ゼルは村の入り口の前で、木で出来た人形のようなものを切り払うと同時に、背後にいるライトとチェルシーへそう叫ぶ。


 彼が視線を背後へと向けないのは、突如として山から現れた木の人形の群れがこちらへ向かい続けているからだ。



「じれってぇ!!」


 ゼルはそう叫ぶと同時に、斧を振り上げて、勢いよく地面に振り下ろす。

 放たれた衝撃波が地面を伝い、木の人形たちのところにまで到達すると、その地面を大きく爆ぜさせていた。



 そんなゼルの横合いで、その地面から急に木の人形が湧き始める。

 そして、斧を地面から引き揚げようとしているゼルの腹部へと向かって、鋭く尖った先端を持つ腕を突き出した。



「っ!?」


 不意を突かれたゼルは、隣に木の人形が突如として姿を見せたことへの反応に遅れ、無防備な状態で攻撃を受けようとしていた。


 そんな時だ。



「ファイアボール!」



 チェルシーの声が響く。

 そして、ゼルの腹部をその鋭利な先端を持つ腕で突き刺そうとしていた木の人形は、パッと燃え上がると、そのまま黒い粉のようなものになって、四散していく。



「で、できた…」



 チェルシーは震える手でそう呟く。彼女は周囲にほんのりと赤い光を帯びており、無駄な魔力の流れが多い状態とはいえ、火属性の精霊を召喚できている証でもあった。


 黒魔法の詠唱方法は道中でゼルやクラッドから聞いていた彼女だったが、ぶっつけ本番で、それも魔法の詠唱を試みたことすらない彼女が、まさかいきなり魔法を発現できるとは自身も思っていないのだろう。



「チェルシー!?」

「で、できちゃったよ!ライト!」


 隣で驚き喜ぶライトへ、チェルシーは全身を震わせながら答える。



「…すげぇな」



 そして、何の練習もなしに魔法を扱えるようになることは当たり前ではない。

 戦闘中のゼルでさえ、チェルシーがいきなり魔法を扱えたことに、ほんの僅かに意識を奪われるぐらいには、衝撃的なことであった。


 さらに、ゼルはすぐに思考を切り替える。



「…チェルシー!!援護を頼むぜ!!」

「は、はい!」


「ライト!さっきみたいによぉ!急に地面から湧いてくるかもしれねぇ!お前はチェルシーを護れ!」

「は、はい!!」



 ゼルに言われて、ライトは薪割り用の斧を構える。

 木の人形相手ならば最も効果的な身近にある武器だろう。





「…聞いてた話とちげぇじゃねぇかよ…大佐よ…」


 そして、ゼルは山を一瞥すると呟く。

 彼の視線の先には、巨大な緑龍の姿が映っていた。



「ま、勝手に取引相手を代えさせてもらったんだ。悪いこたぁ言えねぇか」



 そう呟いてゼルが笑うと、向かってくる木の人形相手に斧を横に振り払う。



「おらぁ!!かかってこいや!!相手は俺だぁ!」





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「お、おい!!」

「…」



「聞いてんのか!?」

「…」



 俺は目の前の巨大な爬虫類顔に叫ぶ。

 急に虚ろな瞳で呆然とした表情を浮かべている将軍になった緑龍


 俺の問いかけに対しても反応を示さずに、こうして呆然とした状態を保っていた。

 だが、俺には問いかけを続けないとならない理由がある。



「狙いは俺だろ!?みんなを巻き込むな!」

「…」



 地上では、木の人形が地面から湧き上がってきている光景が映し出されていた。

 そして、その人形たちは、ベグマへと向かう部隊、村へと向かう部隊に分かれていた。


 村へと向かう部隊の一部はシェリルやコボルト達が応戦しているようだが、それでも、村へと流れついてしまう人形もおり、どうやらゼルが食い止めてくれているみたいである。



「…大人しく言うことを聞く!だから!こんなことはやめろ!」

「…」



 俺は将軍がこんなことを始めたのが、俺に言うことを聞かせるためではないかと考えていた。

 やり直せるとはいえ、この世界はこれからも続いているかもしれない。こんな状況で合言葉を放ち、自害するのは躊躇いがある。



「…くそ!!おい!聞いてんのか!?」

「…に…ん…ぼす」


「ん!?何だ!?」


 すると、虚ろな表情になっていた緑龍は、かすかに何かを話そうとしていた。



「…人間…ほ…す」

「え?」


「人間…滅ぼす…」

「っ!?」



 急に、15歳ぐらいの少年が右目に右手を当てながら言いそうなセリフを言い放つ緑龍

 いや、昨今の15歳よりも、今の20代や30代の方が言いそうで怖いセリフなのだが…





「…お前?」


 段々と目の前の爬虫類顔に生気が漲り始める。



「お、おい!!」



 緑龍は手で掴んでいる俺を一瞥すると、地上へとその視線を移す。



「人間…滅ぼしてくれよう…我が主を憚った罪…我が主人に代わって裁かせてもうおう」

「待て待て!!お前!?何が狙いなんだ!?」


「…クラッド…貴様はそこで見ておれ!」

「いや、何なんだ!?何を!?お前!?」


「お前の恨みも我が一緒に晴らしてやろう!」



 緑龍はドヤ顔でそう俺に言い放つ。

 いや、訳が分からないぞ?



「恨み?お前?何を言っているんだ?」

「クラッド!貴様ぁ!!」


「おわぁぁぁ!!」

「ベグマ様を殺された恨み!忘れたというのか!?」


「…え?」




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