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量産型シェリル




「「わわわわ!!!」」




 左右からうるさい声が響く。



「「ど、ど、どうして!?私がいるんですぅ!?」」



「ちょっと!静かにしなさい!」



 スターは左右を見渡しながらそう叫ぶが




「「わ、私の偽物がいますぅ!こいつですぅ!!」」




 2人のシェリルは互いに指を差し合いながら俺達に主張してくる。

 互いに互いが偽物だと。




「あー…もしかして…だけど」

「ええ、もしかしなくてもね」


「…すげぇスキルだな」



 シェリルが2人に増えたことで、『コピー&ペースト』の効果が把握できた。つまり、『コピー』で対象を選んで、『ペースト』で対象を増やすことができるみたいだ。





「…最大MPが減る以外に、何かデメリットはあるかしら?」



 シェリル同士で不毛な言い争いをしている傍で、スターが俺に尋ねてくる。

 シェリルが2人に増えたことに気付く少しの間に、俺は自分のステータスに生じた変化をスターへ伝えていた。




「いや、特に変化はないが…最大MPが0になったことを想像すると恐怖だな」




 問題点は、『コピー&ペースト』を使うと、『コピー』でMP1を消費し、『ペースト』で最大MPが1減少する。


 つまり、『コピー』だけなら、MPを回復させれば何回でも発動できるが、『ペースト』は最大MP分しか発動できないようだ。そして、最大MP0になった人間は魔力枯渇で死亡する説がある。もし、『ペースト』の最大MPの減少が1で固定じゃなく、対象によって変動すると仮定すると、下手すればMP0以下になって死ぬ可能性もある。




「…今の最大MPは4ね」

「ああ、コピーした分のMPがまだ回復していないから、使えるのは3だけどな」



 スターは何やら確認めいた聞き方をしてくる。

 俺は嫌な予感がしてきた。




「…ね」



 そう思った側から俺に提案の前振りをしてくるスター

 俺は即座に…




「いや、本気か?」



 俺がそう聞き返すと、スターが少し不機嫌そうに言う。




「まだ何も言っていないわよ」

「だいだい予測できるぞ」



「この状況を突破するのに、これ以上の手はないでしょ?」

「…うーん」


「シェリルをもう1体作って、3人でコボルトと刺客の対処をしてもらいましょう」

「…将軍は?」



「私とクラッドで対応するわ」

「いや、ま、シェリルを増やすことに目を瞑れば、それが現実的だろうけど…」


「どうしたの?」

「…将軍のスキルの話、まだ途中だっただろ。陰陽2属性が扱えるほどの魔術の多様性だよ」



「ああ、それなら、おそらくだけれど、カラクリは分かったわ」

「え!?」



「…仮定だらけだけど、そこは了承してね」

「ああ、そりゃ、当然そうだよな」



 スターがすごく申し訳なさそうな顔で俺にそう告げる。

 そこまで悪いことでもなければ、これだけの情報の中であれば、当然の話だ。



「まず、クラッドは何の因果か、ユニークタレントを吸収するような能力がありそうなの」

「…そこは目を逸らしたかったが、そうかもしれない」



 俺とスターは前提条件の共通認識の確認を行う。

 話を進めるには、まずここからだろう。


 何で俺にそんな力があるのかは、後で考えよう。




「ええ、で、貴方が帝国に狙われている理由はそこかもしれないわね」

「…ゾッとすることを淡々と言わないでくれ」



「本題に戻すわね」

「ああ、続けてくれ」


「クラッドのトランザクションとランダムアクセスは、私が所有しているユニークタレントよ」

「ってことは、コピー&ペーストは将軍のユニークタレントか?」


「ええ、その可能性が高いわね。トランザクションやランダムアクセスのオーソリティは3で、コピー&ペーストのオーソリティ2なのが引っかかるけれど、そう解釈すると、将軍の魔法の多様性も説明ができるようになるわ」

「んー?」



 あまりピンっと来ていない俺だが、とりあえず、コピー&ペーストによって、将軍は陰陽2属性を使いこなすほどの魔術の多様性を見せているとのことのようだ。



「将軍は魔法を詠唱して発動しているのではなく、コピーしてペーストしているのよ」

「…シェリルを魔法だったと仮定すると…確かに、そんな感じになりそうっちゃ、なりそうだな」



 俺はあまりイメージができていない。

 だが、何となく、スターが言わんとしていることは伝わってくる。




「ええ、ユニークタレントの効果であれば、本人の素養とは関係なしに、古龍を召喚する魔法や光と闇属性を両方とも使いこなすことができるかもしれないわ」


「…だが、俺が近くにいるのにも関わらず、あいつは光属性と闇属性の魔法をそれぞれ使っていたぞ。俺の方がオーソリティは高いんだろ?」



「そこが引っかかるところよ」


「そうだよな?」

「ええ、クラッドの方がオーソリティが高いから、今の仮定が正しければ、将軍はコピーもペーストも、クラッドの前では使えないはずよ。にも関わらず…ペーストはできていそうなのよね」



 スターは顎に前足を当てながら考え始める。



「…だが、俺が近くにいると…洗脳まがいのことはできない。何かしらの影響をユニークタレントが受けているのは間違いないだろ」


「そもそも、コピー&ペーストでどうやって洗脳しているのかしらね」



 スターはそう言いながらシェリルとシェリルが言い争いしている光景を見つめる。

 確かに、俺が『コピー&ペースト』したシェリルは、その人格がそのまま残っている。


 しかし、将軍が『コピー&ペースト』したシェリルは、まるで将軍そのものかのように振舞っていた。



「…将軍の対応をするには、そのカラクリの全容を把握しなきゃいけないってことだな」

「ええ、その通りよ…古龍の召喚を何としても防がないとならないわ」



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