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作戦



 俺とスターの内緒話が終わると、離れていたシェリルを呼び寄せるスター

 そして、スターは作戦を伝えてくる。




「…帝国の将軍の対応はシェリルとクラッドにお願いするわ」


「おいおい!」

「任せてください!」


 シェリルはドンっと胸を拳で叩く。自信がありそうだが、俺はどんな結末になるのか想像できていた。なぜなら、前回の記憶で、シェリルが襲撃してきた将軍によって倒されているはずなのだから。



「スター!お前の話じゃ…シェリルじゃ将軍に勝てないはずだろ?」

「いいえ、単純な戦闘力なら、シェリルは勝てる可能性が高いはずよ」


「待て待て…前回、お前が将軍に殺されてから、シェリルも殺されているはずだぞ」

「クラッドの話では、私の体を将軍が乗っ取ったはずよ」


「それは…確かにそうだな」



 俺は将軍に乗っ取られたスターによって殺されていた。

 それは確かな記憶だ。



「これは推測の域を出ないのだけれど、今の体ではシェリルに勝てないから、私を乗っ取った可能性があるわ」

「うーん…なるほどな。だが、結局、シェリルが将軍に乗っ取られたら終わりじゃないか?」


「いいえ、これも推測なのだけれど、クラッドがいると将軍は私達を乗っ取れない可能性があるわ」

「どうしてだ?」


「クラッドは憶えていないと思うけれど、私と将軍が戦ったことは話したわよね」

「ああ」


「その時、将軍は私の体を乗っ取ろうとしなかったわ。その気配すらなかったの」

「いや、それじゃ根拠が乏しいだろ。魔法で防いだり、お前に耐性があったり、色々と他に要因が考えられるぞ」



「私の魔法や耐性で、将軍の乗っ取りを防げるのであれば、クラッドの記憶との齟齬が出るでしょ?」

「そうだな…確かに、スターが乗っ取られていたな」


「私が殺されていたから、乗っ取るのが簡単だった可能性もあるけれど、そもそも、殺されたというよりも、意識が乗っ取り潰されたという表現が正しいかもしれないわね」


「…俺を殺した時のスターは、確かに怪我1つなかったな」

「私も、急に視界が真っ暗になって、時間を巻き戻すことになったから、殺されたとばかり思っていたわ」

「わかった。スターの意図は理解した。やってみればわかることだし…やるしかないか」



「ええ、お願いね」


「な、何だか難しい話をしてますが!私は将軍をボコボコのけちょんけちょんにすればいいんですね!」

「ええ、頼むわね」

「はいです!」


「…お前はどうするんだ?」

「私は…もう1人の刺客と、コボルトの方を対処するわ」


「了解だ」

「お願いします!首謀者は生かして捕らえてくださいね!」


「ええ、捕縛は得意よ」






====================

====================





「追いかけます!」

「待てって!」




 シェリルは黒いコートの人物を発見すると、パッと地面を蹴り、その人物を追いかけようとする。そんな彼女の首根っこを掴んで止める俺



「わー!何をするんですぅ!?」



 首根っこを下手に掴んだせいか、シェリルはバランスを崩して前のめりに倒れる。

 すぐに起き上がると、不満そうな顔で俺を見つめる。




「スターの話を憶えていないのか?」



「…はわわ!私が乗っ取られるってやつですね!」

「ああ」



 俺の言葉に、シェリルは思い出したようにハッとした表情を見せる。

 肝心なことを忘れやがって…




「でもでも!姿を見せたのはどうしてですぅ?陰からパパっと私を乗っ取ってしまった方が簡単でしたよ?」


「スターの推測が正しかったってことだろ。俺がいると奴はお前を乗っ取れない。そう捉えても大丈夫かもしれないな」

「むむむ!」


「ああして姿を見せたのは、お前だけを誘い出すつもり…ん?」



 俺は周囲に霧が出てきたことを確認する。

 かなり濃い霧が足元から湧いて出てくるような印象だ。



「…おいおい!これが毒か!?」

「違いますぅ!毒性はありませんが…」


「が?」

「目が見えなくなり、耳が聞こえなくなり、鼻が利かなくなりますぅ!」



「おいおい!!やべぇだろ!?」

「私は平気ですから!クラッドさんは離れないようにしてください!」


「あ…ああ、すまないな、迷惑をかけて…」



 相手の狙いはなぜか俺だ。

 ここで迂闊に動いてしまえば、相手の思う壺になるだろう。シェリルは俺を護りながら動かなければならないわけだ。申し訳ない気持ちになってくる。



「いいえ!クラッドさんがいれば、相手は迂闊に攻撃できませんから!」



 シェリルは満面の笑みでそう告げる。

 まるで俺が囮として有効だと言いたいような印象だ。


 とはいえ、何の役にも立てないよりはマシか。



 そうこうしていると、周囲を完全に霧が覆う。

 辺りは真っ白な景色に包まれて、五感がすべて閉ざされる。まるで白い景色の上に、自分の意識がプカプカと浮いているような印象だ。




「…お?」





 すると、すぐに周囲の霧が晴れていく。



 そして…




「…」

「…」




 霧が晴れると、そこには黒いローブを纏った人物がいた。



「え、あれ?え?」



 さらに、緑の多い山の中にいたはずが、周囲は岩肌が目立つ景色へと変貌していた。つまり、移動させられたのだろう。




「っ!?」




 気づけば、尻がめちゃくちゃ痛い。高いところから落ちて、尻を強打したような時の感覚だ。かなり乱暴に運ばれたみたいだ。


 だが、それよりも、黒いローブの人物だ。

 奴は俺に向かってゆっくりと歩いてくる。




「こ、こんにちは」

「…」



 俺は思わず挨拶を口にするが、当然のように反応はない。

 俺はすぐに立ち上がると、踵を返して、駆け出そうとする。



「っ!?」



 しかし、すぐに俺の目の前に回り込んでくる黒いローブの女性

 さすがの戦闘力だな…


 こりゃ…すまん。

 スター、今回はダメそうだ…



 俺が観念しそうになったそんな時だ。





「見つけましたぁ!!」




 シェリルの声が下の方から響いてくる。








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