一貫性の消失
「がぁぁぁぁっ！！！いてぇえ！！…」
俺はスターによって両足を切断された。
すさまじい激痛が脳を焼き焦がす。
耐え難い苦痛が…
苦痛が？
「お、おい！クラッド！？どうした！？」
そんな俺の目の前へ、急にゼルが姿を見せる。
気づけば脳を焦がすような激痛はすっかりと消え去っており、背中から冷たい土の感触だけが伝わってくる。
「…あ、あれ？」
続いて、俺の顔を覗き込んでくるのはライトとチェルシーの2人だ。
「クラッドさん？」
「お腹でも壊しました？」
「あ…あれ？え、え！？ええぇぇぇ！？」
俺は気付けばゼル達と合流しているようだ。
それに、場所もかなり移動して…あれ？
何がどうなっているんだ？
俺、確か、スターに殺されたよな？
いや、その前に、何者かに襲撃されて…あれ？
「お、おい…お前…本当に大丈夫か？」
「あ…ああ…」
寸前の出来事が幻だったかのように、全身に痛みはなく、足は元通り、ゼル達とも合流している。
いや、それよりも、あいつは！？
俺は周囲を見渡すと、地面に倒れている俺を怪訝そうに見ている猫の姿を捉える。
「…スター？」
あれは…夢だったのか。
まさしく悪夢だったようだった。
「すまん…変な夢を見てた」
「夢ってお前…」
「さっきまで普通に歩ていましたよ？」
「急に倒れたと思ったら、暴れ始めたので驚きました！」
ゼル達が各々の反応を見せる。
「ん？」
そんな時だ。
急にスターが森の奥へ駆け出し始める。
「お、おい！！」
俺は慌ててスターを追いかけることにした。
「待てクラッド！！」
「お前らは先に行っててくれ！俺は猫を探してくる！！」
「そんなわけにはいくか！」
スターはどうやら俺と内緒の話でもあるのだろう。
ここは俺もゼル達と別れた方がよさそうだ。
「俺はお前の護衛だぞ！一人にさせられっかよ！」
「ライトやチェルシーを森の中には入れられないだろ！？」
「がぁぁああ！！それが分かってんなら！勝手なことすんじゃねぇ！！」
「悪い！すぐに戻るから！」
「おい！くそ！すぐに戻って来いよ！！」
「おう！」
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「ちょっと！どういうこと！？」
「おわ！」
スターはいきなり登場するや否や、物凄い勢いで俺に迫ってくる。
何となく、この辺りで姿を見せるだろうと思っていたが、あまりの剣幕に驚いてしまった。
「び、ビックリさせるなよ！」
「ビックリしたのはこっちよ！あれほど説明して！変なことしないでって言ったわよね！？」
「何の話だ！？」
「…覚えてないの？」
「…」
スターはやはり何か知っている様子だ。
前回、俺は確かにこいつに殺された。
あれは夢だと切り捨てるには、あまりにも現実味がありすぎる。
「俺は…お前に殺された…そんな夢を見た」
「…どういうこと？」
「俺が聞きたいぐらいだ！！あれは…あの苦痛は…まるで本物みたいだった…それに…この光景…夢で見た光景と同じだ！！スター！何が起きているんだ！？お前なら何か知っているんだろ！？」
俺が思ったままのことをスターにぶつける。
突拍子もない変な話をしているのは分かっているが、こいつの言動も同じぐらいおかしい。
しかし、そんな俺の問いに対して、スターは一呼吸置くと
「合言葉は？」
「あ？何だ？急に？」
「やっぱり…」
「おい！何だよ！？」
「クラッド、まずは、貴方に会わせたい人がいるわ」
「ん？あ、ああ…シェリルのことか？」
「ええ」
「ってことは！やっぱり！あれは夢じゃないんだな！？」
「とにかく急ぎましょう」
「お、おう！って、待て待て！勢いで誤魔化そう…っておい！待て！！」
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俺とスターが森の中をさらに進んでいくと、やがて修道服の少女の姿が見える。向こうは俺達のことを知らないが、俺は彼女の名前ぐらいは知っていた。
前回と同じように、彼女は森の奥でコソコソと何かを窺っている様子だ。
「居たな…」
「ええ…少し待っていなさい」
「ん？」
「…アテナ オープン ドローイング アイギス」
スターは魔法を唱え始める。
聞きなれない詠唱の仕方だが…
「うお…」
スターからは神々しいまでの魔力の波動を感じる。
やっぱり、かなり卓越している術者のようだ。
「オープン トレース イン サジタリウス」
スターが何かの魔法を発動させると、急に矢印がパッと姿を現す。
しかし、姿を現した矢印はただスターの近くで浮いているだけであり、何かの効力を示すようなことはしなかった。
「…乗っ取られてはいないようね」
そんな矢印がただ浮いているだけの様子を眺めているスター
何かが分かったような顔をすると
「乗っ取る？」
「話は彼女と合流してからよ」
「あ、ああ…」
