表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/45

第41話 恐竜の森へ

 あれから宴は更に騒がしさを増して、女性メンバーの輪から離れた私はゴリ将たち男性メンバーと隠し芸大会をしながら酒を飲み明かした。

 そうして大半が酔いと眠気に潰れて2日目の休日を終えたのだった。

 

 3日間の休日の最終日は、異空間バッグと転移門の鍵束の使い方を説明して、チュートリアルダンジョン探索の班分けを発表したら各自自由に休みを取らせた。


 私はというと猿の間の大広間で模擬試合をする皆を観戦したり、銭湯で裸の付き合いをして男女両方のメンバーとの仲を深めたりした(意味深)。

 

 模擬試合を見て戦力増強を図る必要性を感じた者には、ショップで購入したスキルチケットや武器などを与えたりもした。


 他にも錬金術スキルで毒液ボールの製造に勤しんだり、転移門の鍵束にマイルームを地点登録をしたりした。

 

 探索に備えて荷物や食料などの準備もこの日にしといた。

 DPは堕犬娘とカルシファーの写真が高値で売れたのでまだ余裕がある。


 食券販売機で食券を大量に買い、湧き池の水を入れた樽とスキル付与された水筒や水瓶を幾つか用意して異空間バッグに詰めといた。


 樽に水を汲み取るのは手が空いていた者たちに任せたりしたので、1時間も経たずに準備が済んでしまった。

 メンバーが増えたけど、それだけ人手が多いと準備が早くなって助かる。


 そうこうして3日間の休日を終えた私たちは、チュートリアルダンジョンの探索に向かった。


 探索に向かうメンバーで2階層の森を探索するのは、私、イヌ、ゴリ将、お菊、カルシファー、火鼠かそ、ユニ。

 それと新メンバーの内、自爆機能付き自動人形と蠱島ことうの主人も連れていくことにした。

 ここにゴリ将の配下召喚スキルで増える猿山脈の兵が探索中に何体か加わる予定だ。


 今いる猿山脈の歩兵たちは、マイルームに戻ってから召喚されたのも加えて28体いる。

 彼らには1班7体に分かれてもらい、4班で1階層の探索とDP稼ぎをしてもらう。


 1〜4班の班長は、順番に歩イチと歩ニ、そして新しく任命した歩サン、歩ヨンに任せた。

 各班には食券と水樽とスキル付与された水筒。それに探索済みの場所を手書きした1階層の地図が入った異空間バッグを渡した。

 彼らの異空間バッグにはショップで購入した低級回復薬と、生命の木の林檎が入れてある。これで怪我と疲労の心配は減るので、探索の安全度と継続性が上がることだろう。


 複製機の回数制限の関係で異空間バッグが班数分すぐに渡せないが、探索中にあと1回複製すれば足りるので問題ない。

 その間の荷物や道具はイヌの亜空間にまとめて入れといた。


 メンバーの内、マイルームに残るのは非戦闘員であるユフィとソフィと未知なる毛玉だ。

 彼女たちには焼肉パーティーで伝えた通りの仕事をしてもらう。


 未知なる毛玉は彼女たちの手伝いを頼んどいた。

 マイルームも広くなったし、彼らは小さいが、こまごまとした仕事の手伝いには向いているだろう。


 猿山脈の歩兵たちには物資が少なくなったらマイルームに補充しに戻るよう言いつけてあるし、私の班は転移門の鍵束でいつでもマイルームに戻れる。

 たまに銭湯に浸かりに戻ってもいいかもしれないな。



 私たちはチュートリアルダンジョン1階層を突き進んだ。

 その道中、1階層の中間辺りの位置で転移門の鍵束の地点登録しといた。

 1階層の移動は以前と同じく5日掛かり、何事もなく2階層へと降りて行く。


 その間、複製機で転移門の鍵束や異空間バッグなど数が欲しい物を複製して、サモンマルチバースカードのデッキからカードを6枚引いた。


 あいにくマナカードばかりで、ユニの信仰の証スキルの白マナカードを含めて、かなりの枚数のマナカードが手札に加わった。


 そこで私はゴリ将の配下召喚スキルで、手札を何枚か消費して歩兵以外も呼び出すことにした。

 忘れそうになるが、配下召喚スキルはなにも猿山脈の歩兵しか召喚できないわけじゃない。手札カードの支払う枚数で様々な兵種の配下を召喚できるのだ。


 しかもゴリ将の大将の器スキルは兵種が増える程、ゴリ将と配下の戦闘力が上がるので単純に戦力アップできる。

 というわけで5日間の1階層の探索中に、弓兵2体と騎兵2体と魔法兵1体を召喚した。


 試しに墓場入り口辺りのアンデッドモンスターを相手にしてもらったのだが、それぞれ2階層のモンスター相手なら1対1でも余裕で倒せるレベルの強さだった。


 弓兵たちは毛を1本抜いたと思ったら、瞬時に毛が針の様な矢へと変化させた。

 やじりの部分は鋭利な針の様に尖り、矢羽根の部分は毛が代用されており、持っていた強弓で正確にゾンビソルジャーとスケルトンソルジャーの頭を兜ごと射貫いてしまった。


 猿山脈の歩兵が思考共有スキルを持っているのと同じく、違う兵種である弓兵と騎兵と魔法兵もそれぞれスキルを所持している。

 ゴリ将に教えてもらったのだが、弓兵は自らの毛を矢へと変化させる矢毛変化スキルを持っているそうだ。


 続く騎兵たちは、騎獣たる狼と猪を進ませて襲い来る2体のゾンビ犬を蹂躙した。ゾンビ犬よりも一回り大きいサイズの騎獣たちで、その身に宿る力も速さも段違いだった。

 騎兵は、騎乗時限定ではあるが騎獣に半永続的なバフ効果を幾つも付与する騎獣一体スキルを持っているからで、あっさりとゾンビ犬は倒されてしまった。


 残るジャイアントゾンビとスケルトンナイト2体は、鈍重ながらも体格が大きく防御力や耐久力が高めのモンスターである。

 3体のアンデッドモンスターを相手にするのは1体の魔法兵だ。

 魔法兵は、扱う魔法の種類が個体ごとに異なっていて、今回召喚された魔法兵は風魔法スキル持ちだった。


 風魔法で生成したウインドカッターが高速で撃ちだされる。

 不可視の風の刃がアンデッドモンスターの首を容赦なく断つ。首と胴体を切り離されたアンデッドモンスターたちが、糸が切れた操り人形の様に地面に倒れていく。


 猿軍団の完勝である。

 地面から出現した全てのアンデッドモンスターが粒子となって消えていった。


「これで敵は全滅したね。実力を見せてもらったけど、これなら2階層のモンスター相手にも十分通用するよ」


「「「「「ウキー!」」」」」


 弓兵と騎兵と魔法兵たちが元気よく返事をしてくれる。

 やる気も十分だし言う事なしだね。


 ちなみに弓兵が簡素な革鎧を着て強弓を携えたオラウータンで、騎兵が腰みのだけ着たリスザルだった。

 魔法兵のマンドリルが、派手な顔に反して地味目のローブを羽織っているのは笑いでも誘っているのかと思ったものだ。


 私は2階層の墓場にある転移陣のそばに、転移門の鍵束の地点登録をしてから皆を引き連れて森へ向かう事にした。

 半日ほど時間を掛けて墓場を横断すると、暗い森の入り口にやっと到着した。


「今から森に踏み入るけど、おそらくここにいるモンスターは恐竜系になると思うから用心してくれ」


「恐竜っていやあ、墓場の奥でゾンビレックスとかがいやしたね。まさかあの恐竜たちがこの森をテリトリーにしてるんでやすか?」


 お菊が疑問の声を上げる。


「墓場の主のリッチが言ってた森の支配者が、龍の成り損ないの可能性がある。……龍と竜。しかも墓場の恐竜のアンデッドモンスターを考えると、あながち間違った予想じゃないと思う。もちろん死体じゃなくて生きた恐竜が襲ってくるはずだ」


「でしたら私が様子見でもしましょうか?」


 私の予想を基にした発言に、蠱島ことうの主人が助け舟を出す。


「やってくれるかい、蠱島ことう?」


 蠱島ことうの主人の名前は呼ぶには長い名前なので、蠱島ことうと呼ぶことにしていた。

 彼は優雅に腰を折って私の頼みを快く引き受けた。

 

「ええ、私にお任せください。……それでは新しく迎えたばかりの兄弟たちを呼びますので少々お待ちください」


 そう言った蠱島ことうは右目に指を差し込むと、何食わぬ顔で右目を引き抜いた。

 これまでの模擬試合や探索で、この行動が蠱島ことう接続スキルで必要なのは知っている。


 それに彼が痛みを感じず出血もしないのも知っているが、それでもカルシファーや知り合って幾ばくも無い猿軍団は、狂気的とも取れる行動と光景に若干顔を引きつらせていた。


「さあ、兄弟たち。出てきておくれ」


 自分の右目を握りつぶした蠱島ことうはその手を振り払った。

 手から放たれる白い煙。

 無惨に潰れた右目の残骸が飛び散ると思われたが、実際は白い煙が広がって空中に散っていく。


 ある程度広がった白い煙は空中でピタリと静止する。

 すると、その白煙の幕を突き破るように8体のモンスターが現れた。


 現れたモンスターは、チュートリアルダンジョン1階層にいるリザードマンたちだった。

 ただしその目はうつろで、開いた口からは涎がだらりと横から垂れている。

 しかも不規則に交差する白い糸状の線が鱗の表面に何本もあり、体のあちこちに黒い斑点があった。

 まともな状態じゃないのは誰が見ても明らかだった。


蠱島ことう接続スキルに目玉を使うのはどうにかならないのかい?」


「私もどうにかしたいと思っているのですが、蠱島ことう接続に必要なサイズの体の一部で、取り外ししやすい部位となると目玉ぐらいしかありませんよ」


 視線を蠱島ことうに戻して問いかけると、彼は頬をかきながら困り顔で私たちを見つめていた。

 空洞となったはずの右眼窩には右目が復元されている。先ほどの光景が嘘だったかと思ってしまいそうだ。


 人の姿を模した意思を持つ菌類の化物。

 それが蠱島ことうの主人の正体だった。


 端正な顔や細身ながら筋肉質な体つき。そしてアラブ風の服装の全てが菌類で擬態したものだった。

 だから血は出ないし、痛覚どころか神経も通っていないので痛みを感じることもない。


 右目だって大量の菌糸や胞子をこねくり合わせた偽物だ。潰してばら撒いても菌類操作スキルで不足した菌類を補充すれば済む話なのだ。


 蠱島ことう接続スキルで召喚される蠱島ことう生物も普通の生物じゃない。

 菌類が主となった蠱島ことうの生物なのだ。

 もれなく彼の寄生菌に体の自由を奪われ考える頭も失い、蠱島ことうの手足となる木偶人形の出来上がりだ。


 そうして出来た蠱島ことう生物を、彼は親し気に兄弟と呼ぶ。

 初めは見た目と言動に騙されそうになったが、蠱島ことうは正真正銘の化物なのだ。


 今、召喚されたリザードマンたちも1階層で捕らえたモンスターだ。

 捕まえたモンスターを蠱島ことう生物に変えたのを私たちはこの目で見ている。


 そんな彼に苦手意識を持つ者もいるが、信頼を得るには蠱島ことうの今後の働きに掛かっているだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ