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天啓の雲   作者: 古寂湧水 こじゃく ゆうすい
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またまた骨董品や抹茶茶碗や陶器に茶道関係者には興味ある展開ですよ

一人のお客さんが抹茶茶碗を3億8千万円まとめ買いするというのはあまりないことですよ。



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石の茶碗は今回が初めての展示なので様子を見るために、価格を250万円~5,000万円までの素材が勝負で付けているが、さてどうなることやら。


[まあ、珍しいわね。これは人間国宝の松井康成さんの練り上げよりずっとよろしいわよ。][ほんとうですね。本当の天然の色ですのでこれはいいです。普通のものでも3,500万円以上の価値はあると思います。]


[中国の磁州窯で焼かれた骨董の練り上げのものがあるのですが、こちらの方がいいですね。私は3,500万円のものを買います。]と言って、すずに対処をするように指示した。


他に2,500万円のものをグループの友人が1点、同じく仲間の人が3,000万円のもの1点購入された。買われた3人にすかさずにマスコミが殺到して感想を求めている。


小堀遠州もさすがという顔をして、苦笑いをしている。自身は今回より御本手茶碗を3,500~5,000万円で出しているのだが、こちらはこちらで期待をしているようだ。


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御本手というのは日本より型のお手本を送り朝鮮で焼かせたものである。なかでも今回、半使茶碗に5,000万円を付けている。


半使とは朝鮮使節の役職名であり、彼らの持参した茶碗にこの手があったのでこのように名付けられたのである。


御本手には遠州もかつて絡んでいたので愛着があるのである。やっぱり目の高いお客さんはいるようだ。御本手の彫三島に金海がそれぞれ3,500万円と3,000円で売れた。


ひとまずはほっとしたようだ。料亭や割烹の女将や仕事服姿の調理人が買い物籠にまとめて入れている。明日香陶芸店の名前が知られ信用も出てきたようだ。


ゴン太にユリが8歳ぐらいの双子の女の子を母親と一緒に連れてきた。[ママ、このワンちゃんのハチマキおもしろい。][ははは、そうね。2人にあうようなお茶碗を探しているのですが。]


[はい、いいものがございますよ。この高取焼の普及品はそれぞれ25,000円です。高台裏の印が違うだけで本体は本物と同じです。]


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同じようだが少し釉薬の流れが違う2個を用意した。[まあ、遠州さん直々の見立てですから間違いございませんね。どうあなたたちこれでいいかな。]2人ともコクンと相づちを打った。


[さ~て昼食にするか、すずさん縁起のいい天ぷら3匹載せ蕎麦をお願いしますよ。][はい、わかりました。行ってきま~す。]


サスケ、[ここのお蕎麦は天ぷらがうまいし、ダシも効いていてつゆがうまい。]すず、[私はどっちかというと、この昆布だしよりカツオだしのほうがいいな。][犬用に尾っぽをやってくれ。]ワンワンワン。


前回の展示会で1億円の礼賓の見込みに南無阿弥陀仏のお題目を入れた老師が、同じように弟子に支えられてヨタヨタ歩きでやってきた。


[あ、どうも老師久しぶりです。ようこそいらっしゃいました。][あんたの礼賓で毎日お茶を飲んでいたら、死にぞこないになってしまった。ふぁっ・ふぁっ・ふぁっ。][何かご用件がありそうですね。]


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[この私の友人がじつはとんだトラブルに、巻き込まれてしまって弱っているんじゃよ。][私でできることでしたら、協力しますが。]


[うん、それを見込んできたんだけど、五日後に落成式予定の本堂に収める仏像5体が、トラック事故で粉々になって壊れてしまって頭を抱えているんじゃよ。


そこであなたがダライラマのオーダーで、ジョカン寺の本尊釈迦牟尼と観世音菩薩を16体を、3日で造ったことを思い出してなここに来たんじゃ。]


[明後日までここで展示会ですので、1日で造って次の日に届けるということになりますね。]


[1体8億で5体で40億のしごとじゃ、仏像の詳細はここに書いてある。あなたならできるだろ、一客入魂のワンちゃんに聞いてみなさい。はっはっはっ。]


少し考えていたが、[どうだゴン太にユリ。]ワンワンワン。[はっはっは、できると言っているぞ。]


[わかりました5日後にお届けいたします。][持っていく場所と時刻は書類に入っている。よろしく頼むな。]


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青くなっていた老師は活力が出たのか、背筋を伸ばして帰っていった。サスケ、[ひえ~、いろんなことが起こりますね。でも40億ですよ。]


サスケ、[大本山仁和寺の住職はさすがに顔が広いですね。総理の御母堂さんのお仲間ですから。]


王様、[そうだな、今回もきちっとやれば次につながる。]すず、[やっぱり天ぷらそばの御利益は大きいですね。毎回いいことが起こりますよ。それからこれは志野さんのお手柄です。


というのはジョカン寺の本尊と16体の観世音菩薩をダライラマの依頼で、3日で造ったっていうのはまさしく世界一の仏師といっても間違いありません。


これは宣伝になると思って各マスコミに情報を送ったのです。案の定いい宣伝になりました。500億円の青銅製の花器のオーダーもそうですが、大きな商談2つ成功というのはすごいことですよ。]


[そうだなよくやったがみんなのチームワークがいいというのが一番だと思うよ。これからも、協力しあって頼むな。]


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マスコミがまた何かあると思って、王様にいろいろ聞いてきたがもちろん守秘義務があるので言えるわけがない。


[さあ、今日はそろそろ終了ですので、準備をしてください。]今日の売り上げはもちろん40億円が入ったので大きいが、食器や茶碗もよく売れた上々の一日であった。


2日目は新聞で石の茶碗が報道されたり、有名どころの普及品食器が料亭などの和風高級店に大人気という記事が出たので、名古屋、大坂に神戸近辺からもその関係者が多数来店した。昨年来た方も多いようだ。


今日は5,000万円のものが出展している中で最高の価格であったが、それの1.8倍の価値を持つものを7,500万円で出した。目利きで資金のある人はこちらを選ぶと思われる。


それは天然石のお茶碗でほれぼれとするような景色のものである。まさしく天然の芸術品というもので、色違いの層が見事な文様になっている。


もう一点は奥高麗で、昨年も販売したがそれの1.8倍の総合力を持ったものを7,500万円で提供する。


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これも見る人が見れば納得するだろうという、半分遊び心の設定にした。遠州も栄胡録の茶碗を7,500万円で出してきた。さてどうなることやら。


明朝色絵琳派風と琳派模様の染付の食器は京都で初めて展示したが、普及品でなく一点物を探している高級料亭などがよく買われていく。


[すずさん、今日は鴨南蛮蕎麦にしてくれるかな。]はいわかりましたが、昨年と同じですね。私も好きなんですよ。]食べ終わって、すこし寛いでいると犬が短く吠えた。


重要人物がやってくる知らせである。現れたのは京都で知られている有名な財閥の会長で数寄者である。昨年もたくさん買っていただいた。[どうも会長久しぶりです。]


[いろいろ派手にやっていますな。ロスチャコスにお茶碗一個を2億5千万円ですか。][あれはこちらの値付けが1億5千万円だったのですが、向こうの自分の目利きで1億円を上げて2億5千万円にしたのです。]


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[ははは、ほんとうのお金持ちは遊び心があっていい。ところで石のお茶碗を見せてくれるかな。][はい、これが最高のものです。]


[ほう、これは見事だ。よくこの素材が見つかったな。][天からの贈り物だと思います。][ふ~む、倍の価値はありそうだぞ一つもらっておこうか、それと奥高麗もいいな。


あなたのオリジナルの益子乾山もやっと私が買うレベルになってきた。浜田が開発した釉薬に琳派の文様がうまく融合してきた。いい感じになったぞ。


遠州さんのもいいよ、栄胡録の逸品でなかなかこれだけのものはあまりないな。御本半使茶碗は本来本歌に御本が勝てないことになっているが、これはこれでいい感じだな。


それでは石のお茶碗7,500万円、奥高麗7,500万円、オリジナル3,500万円×3=10,500万円、栄胡録7,500万円、御本半使茶碗5,000万円で合計3億8千万円+消費税3,800万円=4億1千8百万円。


こんなもんでいいかな。][はい、ありがとうございます。]


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秘書がすぐに振り込みを完了した。秘書は四角の革製のキャリーバッグに大事そうにすべて収納した。


[おかげさんでいい買い物をしたよ、またよろしくな。][たくさんお買い上げをいただきまして、ありがとうございました。]


サスケ、[よしやった~、王様やりましたよ。すごい売り上げです。][すずさん帰りに天然ウナギでも食べていこうか。どっかにいいとこあるかな。]


[鴨川沿いに看板だけ見たことがあります。たしか天然鰻と書いてあったと思います。][よ~し、そこに行こう。]


[え~、生まれて初めてです天然鰻なんて。][俺も食べたことないうまそうだな。][携帯で予約しておきます。]


2日目はみんな大満足で終了して3日目も順調に売り上げを伸ばし2回目の京都料飲組合招待販売会を無事に終了した。


次の日は予定通りに仁和寺住職依頼の5体の仏像の製作にかかった。国宝と同じレベルにしたので品質についての苦情はないものと思われる。


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仏像5体を収めるために王様とサスケにすずそれに犬2匹が京都の仁徳寺にやってきた。落成式のために五色幕が張り巡らされ、本堂の中に仏像が並んでいた。担当者がすぐに住職を呼んできた。


[約束を守ってくださり、まことに申し訳ない。して仏像はどこに持ってきましたか。]と不安そうなまなざしで一同を見渡した。


[大丈夫です。心配には及びません。]とニヤリと笑った。[それよりもどこに仏像を置きますか。置き場所と種類をおっしゃってください。]


[ここに千手観音菩薩。]と位置を示した直後にいつの間にか指定した仏像が収まっていた。居並ぶ関係者は唖然として言葉も出ない。[次の仏像の名前と場所を教えてください。]


このようにして5体を無事に届けることができた。出来上がりはもちろん国宝並みであるから出色である。関係者、[ほ~、これほどのものは他にあまりありませんよ。


さすがにダライラマ法王が、あまたの仏師の中から選抜しただけあります。]



7千5百万円の抹茶茶碗ですと国宝並みですね。これだけのお茶碗を焼けるのは現代で王様しかいません。

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