アンコールトム近くの観世音菩薩信者の集落で、井戸掘りと医院付きのお寺の設営に明け暮れる。
王様は観世音教の門主なので、このようなことも必要ですね。
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アンコールトム近くのシェムリアップ市街地の20万坪の販売地に来ている。
長[ローカル色満載ですが繁華街の真っただ中ですね。よくこんな土地がありました。坪単価はプノンペンより少し低めですけれど、いい価格しています。希少性を考えると安いかもしれませんけれどね。]
サスケ[安くはありませんけれど、出し値でいいと思います。ここでしたら一般客もたくさん入ってきますよ。たぶん日影も規則も減ったくれもなく、申請をすればすぐに許可が出ると思いますので面白いと思います。]
次に軍用地の20万坪に向かった。現況は畑地であるが市街地まで車で30分ぐらいなので立地としては悪くない。長[地形も悪くないし畑地もいいですね。合格ですよ。]すぐにトレサップ湖畔の自宅に向かった。
子供3人が目ざとく見つけてやってきた。長男[おじさんたちの仲間の人は3人来ていて、布団を干したり掃除をしていましたよ。]
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母親がすぐに出てきて挨拶をした。[どうもいらっしゃいませ。旦那さんたちが来たら、村長さんのとこに知らせに行かなくてはいけないので失礼しますよ。]
昴とチヨは子供たち3人と桟橋に行って遊んでいる。もちろん兆助とモモも一緒である。
やがて村長と役員2人に住職と副住職がやってきた。村長[どうも王様と知らずに失礼をしました。井戸が利用できるようになりまして、村民一同がたいへんに喜んでいます。]
[お寺さんは何か不足していることや問題はありますか。]住職[はい。村の人達も協力的で元々観世音菩薩の信者さんですので、とてもやり易いです。]
[村長さん、ここから7キロメートルぐらい離れていて井戸や医院付きのお寺が必要なところがあったら言ってください。基準に合えば設置しても構いませんよ。]
村長[それは大変に喜ぶと思います。すぐに村々を廻ってみます。それでは失礼します。]
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子供たちはチヨと昴にも親父さんが用意してあった子供用の短い竿で、桟橋で釣っていたが釣果は多いようである。[ほう。かなり多いけど、どの魚が美味しいの。]長男[そりゃあ、これですよ。]
と25センチのものを指差した。長男[僕たちはこの魚を小さいときからおさしみで食べているけれど、おじさんたちが同じようにしたら全員が下痢になっちゃいますよ。でも一番おいしいです。
この桟橋の側ではこんなサイズだけど舟で行けば40~45センチのものがたくさん釣れるよ。]釣り道具はロシアのものを分身して揃えてあるので、岸にあげてある舟を出して子供たちと一緒に全員で行くことになった。
定員オーバーだけども子供が5人なので、警護も2人乗ることになった。舵は長兵衛が取っている。餌は子供たちが用意したミミズである。長男[おじさん、このへんでいいよ。]
鱒の陸封型でビワマスに似たものが釣れ出した。サスケ[これは旨そうですが、これだけ型が揃っていると面白いですね。]
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しばらく夢中になって釣っていたが岸に村長以下が大勢でいるので、切り上げて陸に向かった。釣果と釣り道具の後始末は子供たちに任せて、村長たちの話を聞くことにした。
村長[ここにいる人たちはいずれもここから7~10キロの所にある3村の代表です。]それぞれがきちっと挨拶をした。
村長[いずれの村も飲料水に困りまた貧乏な村なので、医者やお寺のお坊さんも来てくれません。ぜひ王様にお願いしたいということでやってきました。]
[わかりました。明日の8時過ぎに3か所を廻ります。村長と役員2人は私達の車に乗って案内をしてください。井戸の場所は水の道がありますので掘る場所は私達が決めますが、
お寺を建てる場所は決めておいてください。]一同[わかりました。お待ちしております。それでは失礼します。]3村の代表たちは喜色満面で帰って行った。
サスケ[元々観世音菩薩を信仰している土地柄というのはたぶんゴンちゃんが選んでしょうね。]ワンワンワン。
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王宮の専属コック3人が分身をして来ているが、明日香の調理人は全員が除菌や除虫ができるので子供たちが刺身で食べているというものも、除菌除虫をして皿に盛ってある。
親父が漁から帰ってきたので、皆でバーベキューである。漁師一家には牛と恐竜鳥で王様達にはここの魚料理が満載にしてある。酒はアルチャナルビールに、名人のオレンジ米焼酎と芋焼酎である。
子供たちにはオレンジジュースが用意してある。親父さんは大物狙い専門なのでほとんど毎日が漁なしである。
[好きなものを勝手に飲んで食べてください。私達は魚が珍しいのでこちらがメインになりますが、どうぞ牛や鳥を食べてください。親父さんは酒は何にしますか。][ビールがあるならまずビールからだな。
勝手にやるよ。]と言って自分で栓を開けてグラスに注いでいる。漁師の子供たち3人は牛肉にむしゃぶりついている。
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親父[村長さんが言っていたけれど旦那さんは王様なの。全然偉ぶっていないので、何処かのお金持ちだと思っていたよ。他の3村にも井戸掘ってお寺を建ててやるようだけど、
貧乏人ばっかしでお金にならないけれどいいの。][はっはっはっ。他で稼いでくるから全然かまわないよ。]娘[あたいはこの牛肉も鳥もおいしいと思うな。]次男[毎日魚ばっかりで、肉なんて久しぶりだな。]
母[肉ばっかりでなく野菜も食べなさい。]親父[ここら辺はアンコールビールっていうのが人気だけど、最近はこのビールも出てきたよ。外国の物らしいけどね。私はこっちの方がコクがあって好きだよ。]
[漁はいつ頃が忙しんですか。][そりゃあ産卵で浅場に上がってくる3-4月だな。年間の稼ぎの7割ぐらいはこの時期に決まってしまう。だからこの時は寝る間もなく働くさ。
仲買人が持って行くので私らは捕まえるだけだ。この時期だけは学校も休んでいいから、家族全員の力で稼ぐ感じかな。]
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親父[最近、買い物でシェムリアップに行ったら、プノンペンに130階を建てた人がこっちにも90階のものを建ててその中にスーパーやデパートにホテルが入っているらしいよ。
プノンペンのスーパーは他よりも30パーセント安いんで、こっちもそのようになるだろうってみんな来るのを待ち望んでいるよ。出来たら家族全員で買い出しに行って、王様から貰った舟に積んで帰ってくるよ。]
[船は快調かな。]親父[船外機が2個ついているのはいいね。安心感が違うよ。それに何といっても燃料代がかからないので、思いっきりガンガン飛ばしている。]
[子供たちは明日泳ぐと思うけれど、危ないところはないかな。][ここら辺は岸から50メートル過ぎると急に深くなっているので、桟橋の先に行かないようにしていれば間違いがないよ。]
[わかりました。肉をみんな食べちゃってもいいよ。私達は魚でいいから。焼酎を飲むなら米と芋があるけれど、どうしますか。]親父[芋をお願いします。]
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翌朝村長と役員2人が8:00にやってきた。地図に落とし込み運転手の頭にインプットしてすぐに一か所目に2台を連ねてやってきた。すぐにゴン太が井戸を掘るための場所を指定した。
[ここに井戸を掘りますので8メートル下がってください。ゴンちゃんお願いね。]
ワンワンワン。”グッ”皆の歓声と共にポンプ付きの井戸が出現した。
早速、2・3回取っ手を押すと勢いよくきれいな水が出てきて、たくさんの手が出て水を掬い取って口に含んでいる。集まった人たちの表情が輝いている。
次にお寺の建設用地に行きゴンちゃんが簡単に立ててしまうと、今度は無言で呆然としている。あまりの驚きで声が出ないようである。
この村の村長に1か月以内に坊さん兼医者が来ることを約束して2軒目に行き、3軒目も同じように終了して湖畔の別荘に帰ってきた。子供たちは漁師の子供たちと一緒に泳いでいる。
王様と志野は部屋でくつろいで、サスケと長兵衛とすずは船で走り回っている。
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2泊を過ごしてプノンペンのホテルにやってきた。昼にガンダーラの舞踊と宮廷料理を食べて夕方はクメール舞踊のアプサラを見ながら宮廷料理を食べることになっている。
時間になったのでフロントに集まってきた。すず[宮廷料理を連ちゃんなんて贅沢ですね。]
[ここの様子を見て唐時代の舞踊と宮廷料理をイランの特別区に作り、分身してガンダーラと2パターンづつの3か所を作ろうと思っています。つまりガンダーラでガンダーラ舞踊と料理それに唐舞踊と料理、
イラン特別区に唐舞踊に料理とクメール舞踊に料理、そしてここのクメールとガンダーラだな。]すず[私は賛成です。興味があるところの舞踊と料理なんて最高の組み合わせですので、
世界的に有名になるんじゃあないんですか。][まあ、レベルがどんなもんか確認しないとな。]一行は特徴あるギリシャとペルシャの建築様式がミックスしたような建物の中に入っていった。
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間もなく踊りが始まるが、前菜が3品出てきた。まずひよこ豆のレモンとニンニクのペーストのホムスである。2品目は炭焼きナスのパースとに練白ゴマ入りのババガヌージ。
3品目は濃縮発酵乳のラバネである。
ガンダーラはギリシャ系の民族が支配したこともあるが最盛期のクシャーナ朝はペルシャ系の民族である。したがって踊りも料理もペルシャの影響が強いのである。
すず[これはアラビアンナイトのような独特のものですね。踊りはアラビアのベリーダンスやインドの舞踊がミックスされた感じです。これはこれで面白いんじゃあないんですか。
民族楽器が不思議な世界を醸し出していますね。]羊肉の料理がメインであるがシルクロード料理も加わっている。蒸し餃子に牛肉の黒コショウ炒めである。
デザートは楊貴妃が好んで日本でもおなじみの杏仁豆腐である。
楊貴妃は杏仁豆腐が好物だったんですね。この小説では朝廷に上がる前の、踊り子時代の設定で出てきますよ。




