瀬戸の加藤藤九郎や益子の浜田庄司を超えるスーパー陶芸家の誕生です。
いよいよ本業の陶芸家の道が開けましたね。陶芸ファンや骨董ファンお待ち同様でした。
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[船橋駅から近いところで現代と骨董陶器の小さな店舗を持ったらどうか]ということをゴン太に聞いてみた。ワンワンワンワン、力強いOKサインである。
資金は競馬の掛け金を増やしたので、余裕の2,000万円をプールしている。これなら裏通りの小さな店舗だったら借りられるかも知れないと思った。
タクシーで犬を連れて不動産屋周りをしたが、なかなか適当なところがなく諦めていたらいきなりゴン太が止まるように吠えたてたので、車を降りたら先導して不動産屋の張り紙の前でまた吠えた。
スケルトンだが10坪で500万円である。
まあ、本業は競馬で見てくれだけの営業だからこんなもんでいいかと思ったので不動産屋と交渉を始めてとりあえず3日の間この物件を押さえてもらうことにした。
出身が陶芸で有名な益子なので、そこら辺のつながりを生かして陶器を仕入れあとは青空マーケットで直観勝負の骨董がらくた買いである。
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こんな構想で犬の表情を見た。益子陶器の仕入れには反対も賛成もしない態度だったが、青空マーケットのことを言ったら鳴いて尾を振ったので、目利きはゴン太に任せようと思った。
益子で5人の作家から仕入れて並べたが、ほとんど売れない。公園の青空マーケットに犬と一緒に行ってみた。
大きさに驚かれていたが出品者のおばちゃんたちに頭をなでられていたが、ガラクタと思われる陶器の前で立ち止まった。
古伊万里風の壺であるが値段は3万円と記されている。どっちみ模造品だと思い躊躇をしていたが、ズボンを噛んで引いたのでこれは勝負だと思い3万円をスパット払った。
おばちゃんはえへへと御愛想笑いでかえしてきた。せっかく出張ってきたのに収穫この一点だけ、商売になるのかなと犬の顔を覗き込んだら、ワンワンワンワンの4度吠えのOKサインである。
店に戻り値付けをして展示をしなければならない。
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ゴンちゃんに5万円ぐらいかと聞いたら首を横に振った。近頃、ダメなことは首を横に振りOKの時には上下に振ることを覚えた。
犬がお座りをして手で8の字を描き追加で0を2つ入れた。なんかわからんけれど8万円かと言ったら、相変わらずに首を横に振っている。すかさず80万円という夢の数字を出してみたが同様に横振りである。
やけくその800万円でどうだと言ったんではなく叫んでみたら、ワンワンワン3連発のOKサインである。激しく首を上下に動かし嬉しそうに尾を振っている。
3万円が800万円になっちゃうの・・・この犬狂ったのかと薄ら笑いを浮かべ馬鹿にした態度を取ったら、いきなり腕を噛まれた。もちろん本気でなかったが、かなり痛かった。
ほんとに800万円か再度聞いたら、ワンワンワンの3連発OKサインである。高台の裏を見たら李参平の銘である。本当かなと思ったが思い切って800万円の値段をつけて、表の張り紙に新入荷のお知らせを張り出した。
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普段は見るだけの陶器好き骨董好きが冷やかしで大勢がのぞきに来た。一様にこれ本物かと猜疑心の声をかけていく。李参平の本物が出たということで、うわさを聞き付けた青山の有名な骨董店の主人が来店した。
表情は厳しい感じだったが急ににっこりと眼鏡の奥が柔和になり、[いいものですね]と感嘆の声、[よく見つけなさった、なかなか出るものじゃありません私が買います]と手付金200万円を置いて行った。
うわ~ゴンちゃんは神犬なのか、おそれいった。ドッグフードも最高級のものにしなければな。もうご飯に味噌汁をかけた汁かけ飯なんてできんな。ゴン太様さまになってきた。
10坪の狭い店だけども冷やかしオーケーのオープンな雰囲気で、それなりに人気が出てきた。
だけども本業はあくまで競馬なので店が留守がちになる。犬が店番をしているがもちろん売れない。だれか気の利いたひとがいないか・・・ガラス戸に張り紙を出してみた。
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一週間ほど音沙汰がなかったが、いきなりホットパンツでロングヘアーの娘が中を覗き込んできた。ゴンちゃんはなぜか大歓迎で、せわしく尾を振っている。
16歳ぐらいだろうか、私も陶芸とは関係があるんですよと言いながらゴン太の頭をなでまわしている。甲賀の中学を卒業して、通信の高校に在学中ということなので暇はいつでもあるということである。
土、日は必ず仕事であとは好きなようにしてかまわないという条件の、時間給のアルバイトである。それでも面白そうに展示品を見ながら、私の実家のものも並べていいですかといきなり言い出した。
なんでも甲賀の旧家で父親が陶芸家の大地主で、伊賀と同じ陶土が出るので伊賀焼として作品を作っていて、それなりに有名だということだ。伊賀焼は信楽焼をしのぐ茶陶の人気NO1で、
よく似ているが見る人にはきちっと違いが分かるようである。ビードロ釉がグリーンで澄んでいるのが伊賀ということである。
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さて、ゴン太の歓迎の仕方が尋常ではないようである。オスの年頃犬だから若い娘が好きだけでないようである。なんか約束の人のような必然的に出会ったようである。
すずというこの娘はとてもスポーティーで、甲賀忍者宗家としての基本は習っているとのことである。実家の作品は好きなように並べて、値段は犬と相談してくれと言ったらとても面白がっていた。
相変わらず競馬でかなり稼いでいるが、最近、自分をもっとグレードアップしろという、どういうわけか何とも言えない気持ちが強くなってきた。
普通のサラリーマンの息子で三流大学を卒業で不動産屋に勤務の後、チベット香の専門店を立ち上げたが、中国人の原料買い占めにあい、あえなく商売は終了をしてしまった。
今までで思いで深いことと言ったら、北インドのダラムサラのダライラマ法王の公邸を訪問したことである。
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その時には全く分からなかったのだが、このことが人生の分かれ目になったというか、必然的にここを訪れたようである。
なぜならダライラマは観世音菩薩の化身とされているが、それは超能力のない形だけのものである。
観世音菩薩は私の人生に大きな影響を与えるのだが、まだこの時には全くわかってなかったのである。ダライラマ法王は行住坐臥弟子に見取り修業をさせている稀有の人である。
それとは別の形で私に命題を与えて観世音菩薩の意志を伝えるべく、すでにレールが引かれていることが後からわかってきた。
まず自分をグレードアップしろとの命題だが、それなら好きな道でトップを張れば有名になれるし、世間にも認められる。それにはどのようにしたらいいのか、ゴン太の顔をじっと見つめた。
作陶はしていないが陶器は好きなので、加藤藤九郎に浜田庄司の陶器作りと尾形光琳のそれぞれの3倍のセンスをくださいとゴン太にお願いをしてみた。
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ちょっと首をひねって考えていたがワンワンワンのOKサインである。
本当に人間国宝以上になってしまっていいのかなと思ったが、この際やっちゃえと決意をした。是も世を楽しませる法楽の一種である。
お香を焚いて神気を統一し、自分の好きな図柄と焼き方を考え観世音菩薩の真言オム マニ ペ メ フ ムを唱えてみた。
しばらくしてから、なんとなんと、尾形光琳の絵付けで益子焼の技法でできた大皿が出てきた。これは何というんだろう、異次元焼きとでも呼ぼうか、
益子の人たちが怒こってしまうような浜田庄司を超えた出来上がりである。
自分で作って自分の作品に惚れてしまったが、いったい値決めはどのようにしたらいいのか・・・。追加でもすごいのができてきた、
唐九郎を超えた油揚げ手の黄瀬戸の一輪挿し、決めては黄瀬戸の色でほんとの油揚げのような食べてしまいたいような色をしている。
これから島津義弘や真田昌幸それに石田三成など歴史上の傑物が出てきますよ。