茶道界の大御所の千宗〇もお買い上げになりました。
日本橋四越デパート本店八階の展示場で茶道界のトップや首相の御母堂もお買い上げです。
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いろいろ話せば都合のいいように捻じ曲げられる。それなら最初から無視したほうがいい。通訳がこの人は韓国一の陶芸家で日本の重要無形文化財と同じだ、といっても別にどうでもいいのである。
なぜなら私は喜左衛門井戸の180パーセント、総合力が1.8倍の作品を作っている。実力から言ったらまるで桁違いなのである。年配者はもう一度深いため息をついて肩を落として帰っていった。
自分が冷やかし専門でいろいろな展示場に行っていた関係で、ここでは食堂のおばちゃんが制服で覗きに来ても、ウェルカムでスタッフ一同が愛想を振りまいている。
買ってくださいというような態度は絶対にダメだと申し渡してあるので、一見やるきのないようなタラタラムードが漂っているようだがあえてそのようにしているのだ。
でも今日はまだ買ってくれるようなお客様が来ないなと思っていたら、品のいい奥様と囲碁の10歳の女性プロ中村菫初段のようなかわいい娘が入ってきた。
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ゴン太はどういうわけか愛想を振りまいて、尾っぽを振っている。かわいいワンちゃんと頭をなでながら[ママ、ワンちゃんと遊んでいるからゆっくり見てきていいよ。]
スタッフに軽い会釈をしてゆっくり見て回っている。大井戸茶碗の前で[これを作った方はただものでありませんね。父もそのように申しておりましたが、私も同感です。]私は首をひねって、誰だろうと思った。
[それにこの犬は普通の犬ではありませんね、父も同じように思っています。][わかりますか?お目が高いですね。ただ本当のことを言うとキチガイ扱いされてしまいますのでできないのです。]
[なるほどね。いずれ父と一緒にゆっくりお話をうかがいます。この花入れと小壺をくださいな。同じパーソナルチェックでよろしいですか。][もちろん結構です一緒にお届けいたします。]
600万円と700万円のお買い上げである。娘はゴン太と仲良しになり、お手のお替わりをしている。
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[どうもありがとうございました。そのうちに犬と一緒にお伺いさせていただきます。]スタッフ一同は出口まで出てお見送りをした。[ワンちゃんバイバイ]
今日はこんなものかなと思っていたら、意外な人が入ってきた。[やぁ~やぁ~だいぶ盛大にやられていますね。]明日香王国で軍師の参謀長である竹中半兵衛重治である。
[今の方達は大事にしたほうがよろしいですよ。お金もあるけどもそれ以上に、大きな人脈を持っています。現次元に接続した場合、大きな味方になりますから。][ふ~む、そんな感じがするよね。]
軍資金も貯まってきましたのでもう少しの辛抱ですよ、それでは自分の仕事に戻ります。陶芸の仕事頑張ってください、では失礼します。]飄々と風のように現れ去っていった。
[今日は4点売れたので、あと残り半分の25点です。明日は新聞に載った関係で大勢ののお客さんが来所の見込みです、こんなところかな帰りの準備をしてください]
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[ゴンちゃん晩飯は何にする、たまには汁かけ飯にするか~。]ゴン太はフンという感じで横を向いてしまった。
3日目になった。今日は混み合いそうでスタッフはやや緊張気味である。[たぶん人数は多いと思うけど、もう半分は売れているんでゆっくりやればいいよ。ただ重要なポイントは頑張ってください。]
デパートの売り場責任者がお茶の有名な師匠が来ることを伝えに来た。
そりゃ当然に来るでしょうよ大井戸茶碗の歴代最高のものが展示してあるんだから・・実物を見たら驚くでしょうな。さあ~てどんなもんかと思っていたら、
はじめてのお客様は以外にも女子学生でお茶を習っているとのこと[練習用のお茶碗を師匠を通じて12,000円で購入していますが、全くしょうもないものです。練習用でももっといいものはないものですか?
もちろん同じような価格でです。]うわぁ~これは難しいパターン、ゴンちゃんどうしたらいいのと思ったら、ワンワンワンと尾を振っている。
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なんとかなるというサインだな、ふ~む[練習用はわざとテリをだして、本物とすぐに見分けができるようになっているものもあるけど、本当にしょうもないですね。
練習用のほかにその店のオリジナルも出していると思うけど、今度は価格との釣り合いが取れていないということが往々にしてあります。
利休好みの楽焼は7種類でしたっけ、まあ総合力で長次郎と同じようなものを作ってみますよ。ただし私のサインの隣に庵の印が付くようになります。量販品だけども総合力は長次郎並みで価格は15,000円です。
これでどうですか?すぐにはできませんが、準備が整い次第連絡をします。]
[どうもありがとうございます。父は美術品のコラムを書いているのですが、良心的な作家さんがいたことを知らせておきます。1億円のものを売っている作家さんが15,000円のものを真剣に考えてくださり、
ありがとうございました。期待をして待っていますのでよろしくお願いします。]
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本物を1個作って分身でいくらでもできるわけだから、1個のもうけは少ないがコンスタントに売れる商品になればこれはこれで、大きな戦力になる。
さていよいよ本日のクライマックスお茶の師匠がそろそろではないかな・・・取り巻きを3人連れてやってきた。
[話は伺っております。ご来所いただきましてありがとうございます。]一緒について案内をしたが、大井戸茶碗の前で唸ったまま動かない。透明ケースを開けて高台を確認してまた唸った。
[大井戸茶碗は日本に30個程伝わっているが、これは最高のものだな。これをほんとうにあなたが作ったの?]
[はいそうです。ただあまりありすぎるのはどうかと思いますので、ほどほどにしたいと思います。][残念ながら売約済みだけども、同じようなものができるかな?
できるならここにある大井戸・熊川・三島他に青井戸をお願いしたい。]少し日数がかかりますがやらさせていただきます。税込み3億3千万円になりますが、手付金はいりません。]
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[出来上がりましたらご連絡をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。][よろしくというのはこちらのほうだ、こんな満足をした買い物は初めてだな期待をしているよ。]
とにこにこしながら満足の態で帰っていった。
しかし今までにここの展示会でこんなに商談がまとまったのはなかったんじゃないかな。浜田庄司や加藤唐九郎でも無理だったでしょう。一段落が付いたので休憩しようと思ったら、
60歳ぐらいで温和だが切れ者のお役人のような貫禄のある人が部下を伴ってやってきた。[迎賓館で外国人に喜んでもらえるようなお茶碗を探しに来たんだがちょいと見させてくれるかな。]
[どうぞ、ごゆっくり。]ゴン太がすかさず頭で足をたたきサインを送ってきた。
[ここに展示してあるものは8個ですが倉庫にはまだ用意してあります。どのくらいの個数をお望みですか][そうだな、ここにある琳派模様のものを20個在ったら見せてくれるかな。]
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[サスケにすずさん、12個不足だけども20個持ってきてくれるかな。すみません、すぐに追加でお持ちしますのでお待ちくださ。][乾山の絵付けはいいけど焼きが甘くてね、
あなたのは浜田庄司で広がった釉薬の幅が琳派風の絵とうまく融合して焼きもしっかりしているので、落ち着きがあっていい感じですな。]
追加で運んできた20点を丁寧に点検してピックアップし[これを展示会が終わったら持ってきてください。その時にお金を払いますので見積書を送っておいてください]名刺を置いて帰っていった。
会場にはまだ売れ残りがあるが、予約を入れたらちょうど50点ぐらいの売り上げである。
[志野さん充分に資金ができたので、借家住まいから一戸建てを買って事務所のビルも、一棟買えるなら買っちゃいたいと思うけどどうかな。][将来に備えて一戸建てではなく、
小さなマンションタイプの社宅をそして事務所も一棟買えるなら買ったほうがいいと思います。]
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志野[石田財務大臣がとんでもない軍資金をすでに蓄えてあります。足らなかったらそちらを充当したらどうですか。]サスケにすずもうなずいている。
[うわ~腹減っちゃったな、営業時間内に勝手に閉めたらいかんのだろうな、誰か弁当でもなんでも腹に入るものを適当に買ってきてくれるかな、人数分とゴンちゃんの分もね。]
地下の食品売り場はまだやっているので、志野が手をあげて自分で行くと言ってきた。[じゃあたのみます]休憩室で交代で食べて・・このような感じで3日目は終了した。
さて4日目、今日は平日でもありいろいろ知れ渡ったことでもあり少し閑散としている。スタッフも手持ちぶさたな感じでいると、取り巻きに囲まれて90過ぎのおばあちゃんが入ってきた。
柔和な表情をしているが一瞬鋭いまなざしをする時もある。ゴン太は例によって合図を送ってきた。高麗茶碗の前で立ち止まりうなずいている。
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どこかで見たような特徴的な顔、まちがいなければ喜四元総理ということは娘さんの和子様で首相のご母堂様。[ほとんどが売約済みですが、この年寄りにあうようなお茶碗はございますか?]
[ございます。倉庫からお持ちしますので、少々お待ちください。]自分で取りに行って3個ほどもってきた。
[鶴の文様はいいですね、柿釉や鉄釉で型抜きというのも益子の雰囲気が出ています。浜田庄司さんの後はあなたがリーダーですね、頑張ってください。
それぞれ趣向を凝らして楽しめますわ3点ともいただきます。息子にも申し伝えておきます。]
とその時7,8歳ぐらいの子供が騒ぎながら入ってきた。展示品にペタペタ触り、キャッキャ言っている。スタッフはあっけにとられてキョトンとしていたがそのうちガチャーンと最悪の響き、
1,000万円の花入れが割れてしまったのである。母親がすぐにやってきて、深々と頭を下げて[まことに申し訳ございません、できる限りのことはやらさせていただきます。]
陶芸界のトップに駆け上がっていますね。




