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5.出会い


 「最近、召喚された勇者が逃げたらしいのよね。知ってる?ローズウッド??」


 「そーなのか。凄いなそいつ。逃げられるもんなんかねぇ」


 「でも指名手配を受けて王宮兵団まで派遣されたらしいわよ。王国としても欲しい人材だからってやりすぎな気もするけどね。」


 たわいもない話を続けながら騎馬している三人は森を進む。


「アリシア〜 この辺からか?」


「そうね。魔物の索敵範囲内だわ。一応、警戒」


「はいはい」



「前方に生命反応あり、一体よ」


「あいあい、チャチャッとやってきますか」


 男が乗った騎馬がスピードを上げる。剣を右手に持ち、キョロキョロと見回す。


「アリシア、さっきの反応はコイツか?」

 倒れ込んでいる男を指さして言う。


「ええ、そうみたいね」


「助けなきゃ!」


 一人が男に近づいていき、呪文を唱える。


「大丈夫?」


 男に尋ねる。目を開けた男はしがれた声で言った。


「……水を……ださい」


「水?喉が乾いてたのね。ちょっと待ってね。


 ……ヒーリングウォーター!」

 

 そう叫ぶと水の塊になった球体が現れる。男はがっつくように啜る。


「ヤバっ……ちょっ……」


 女がそう叫ぶと水は勢いよく爆発する。男は吹き飛ばされて地面を転がる。


「ごめんごめん。私、小さい魔法の制御が下手っぴなんだ〜」


 騎馬していた2人も近づいてきて、男に謝る。


「俺はローズウッド・バーガンディ。ごめんなウチの仲間が。あっちの怒ってる方がアリシア、怒られている方がアンリだ。ところでこんな所で何やってるんだ?」


「――俺は悠真。旅をしてたら水を忘れちまって、このザマだ。」


「ふふ、水? 忘れることなんてないだろう。1番身近にあるものなのにさ」


 そう言って男は空中に水で文字を書き始める。


 お前は勇者か?


「魔法を知らないなんて、ありえないもんな。」

 冷や汗を書いている男とは対照的に笑みを浮かべて見つめる。


 俺は焦っていた。すぐさま嘘を見破られ、思いのほか切れ者だったローズウッド。こいつは強いぞと経験が警告する。ナイフをポケットから滑らせて背中の方で取りだし、刃を音がしないようにゆっくりと出す。俺は張り付く空気感の中、飛びつくタイミングを伺っているとさっきの水爆発女が泣きながら謝ってくる。


「……ごべん……なぁさい……」


こっぴどく怒られた様だった。それによって警戒を解いてしまった俺にローズウッドは言った。


「俺らは捜索しにきた訳じゃないんだ。少し試したんだ。よろしくなユーマ」


 そう言って握手し、これからどうするのかを尋ねてきた。


 俺は安堵し過去の事を少しずつ話した。グレていて、恨みをかってしまったこと。妻と娘を守るために帰らねばならない事。そしてこの世界に召喚された被害者である事。

 それを聞いてアンリはまた、涙を流していた。


「俺にはあてがないんだ。助けてくれないか?」


「もちろん! いいよね皆んな?」


 無言で二人とも頷く。アリシアも目が潤んでいる様だった。


「んー当てが無いこともないかな」


 ローズウッドが呟く。本当かと尋ねるとまぁ試してみる価値はあると言葉を続ける。


「召喚系の魔法を使える奴らは王族だけじゃないんだ。エルフ族の長は精霊を召喚して魔法を使うって言うし。他にも魔王族だけどネクロマンサーは死体召喚。魔女の中にも召喚獣を使うものもいるらしい」


「エルフ一択ね。私たち人族とは同盟関係にあるから。他は危険な匂いしかしないわ」


「なら北東を目指して、出発しよう!!」


「馬鹿アンリ、任務が先よ。ここに来た意味を忘れたの?」




 現実世界に戻れるかもしれない。この世界に来て初めて希望が見えた。張り詰めていた空気が少し緩むのを感じる。俺はこのパーティーに加わるようになった。


 ローズウッドは優しい顔だちのイケメンでファンクラブなんかが有りそうな雰囲気をしている。ピンク髪のアンリは元気で皆の妹と言った感じだろうか。仲間には必須のムードメーカーを担っている。アリシアは知的でスタイルもよく美人。現世なら俺にはあまり縁がないような雰囲気をしている。

 うん、最高だ。ゴブリン達とは比べ物にならない。


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