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1.召喚


「――なんだテメェ。急にこんな所連れてこられて俺は……」


 そう言うと鋭い眼光と首元を掴んでいた手の力が抜けて倒れ込む。


「どうしましょう殿下。勇者がこれではお話になりません」


 睡眠魔法をかけた神父は頭を悩ませ言った。


「転生者には勇者の加護が付く、ゆえに殺してはならん。適当な魔法でも見せて実力の差を見せつけてやれば良い」


その女性の声と共に周りの衛兵たちが男を乱暴に叩き起す。


「――ぐはっ。お前らいい加減に……」

そう言うと男は掴んでいた衛兵の手首を反対に回す。グラスが割れるような音がする。


「下級でよい。打て」


 白髪の男がそう言い放つと一斉にブツブツと唱え始める。


 指揮官が誰だか理解した男は白髪に狙いを定めて飛びかかっていく。腕を伸ばしてラリアットを決め、そのまま首に腕を回す。ポケットに入っていた折りたたみナイフを出し、冷徹に声を出す。


「俺を元の世界に戻してくれ、じゃないとこのジジイの命は無いぞ」


 衛兵たちは唱えるのをやめ、タジタジになっている。ただ一人、堂々とその場にいた奴を除いて。俺は顔を隠した人物にナイフを向けて話しかけた。


「お前、知ってるのか? 答えろ」


「還る方法は……ある。しかしそれは100年に1回の召喚の儀でのみだ。そして今、儀式を行い貴方を召喚したのだ。」

 女性にしては低く、威厳に満ちた声でそう答える。


「つまり、後100年って事か? ふざけるなっ……」


 片手で封じこめていた白髪の太ももにナイフを刺す。なんの抵抗もなく肉は刃を吸い込んでいく。

白髪は言葉にならないような呻きを上げたが気にせずにもう一度刺した。


「――悪いようにはしない。貴方には勇者としてこの国を先導して欲しい。今起きていることも不問に……望むものならなんでも。それだけ魔王を倒すための貴重な存在なのです」


 さっきの冷静で威厳のある声から動揺があらわになった。本当に還る方法はないのだろう。


「そうか」


 を男はそう一言呟くとナイフを白髪の首にあて、そのまま素早く振り抜く。傷口から流れる赤が地面まで這い、身体は形を保った水のように崩れていく。

誰の足も動かなかった。誰の声も聞こえなかった。

怒りで全身が硬直していた男の右手からはナイフが離れなかったが扉を左でこじ開け、駆け足で宮殿から去っていった。




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