表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/71

12話

       十二


 前半終了が近づいた。スコアに動きはなかった。ヴァルサもよく攻めてはいたが、モンドラゴンたちの好守に阻まれていた。

 神白は、依然として不思議な感覚に支配されていた。スタンスは、味方の攻撃時はディフェンスラインのわずかに後ろに移ってパス回しに参加、守備時もゴールから遠い位置、暁たちの十mほど後方に待機というものだった。

(俺の今のスタイルに名前を付けるなら「偽キーパー」ってところか。リスクの大きさはわかってる。だけどそれ以上にメリットはある! 俺が敵を引きつければ、パスコースが一つ空くんだ!)

 不安もあったが、ねじ伏せて堂々と振舞っていた。上手くいっているからか、監督、チームメイトからは異論は出ていなかった。

 ロスタイムに差し掛かった。敵がゆっくりとボールを回し、モンドラゴンがコート中央でボールを持った。

 ヴァルサ8番が詰め寄った。モンドラゴン、右足で小さく跨ぎ左に出した。動きは速く、8番は従いていけない。

 プレッシャーを躱し、モンドラゴンはオルフィノに出した。だがアリウムは密着マークしている。

 オルフィノ、後ろを向いたままリフティングを開始。刹那、神白の頭にスパークが走った。すぐに身体の向きを変え、ゴールにダッシュを始める。

 ドンッ! 低い音が背後から聞こえた。神白は振り返らずに駆け続ける。

 視界をボールが縦断した。(それが水たまりに落ちるんだろ! わかってるっての!)神白の予想通り、ボールは水たまりに落下。急激に加速しゴールへと転がり行く。

(間に合う!)神白は強く信じて走る。そして頭から跳び込んだ。

 神白はボールを片手で止めた。ゴールラインぎりぎりだった。

「あっちゃー、防がれちゃったか。ざぁんねん。良いアイデアだと思ったんだけどな」

 オルフィノの声が耳に届いた。天真爛漫で無邪気な声色だった。

(モンドラゴンのプレーでインスピレーションを得たって訳かよ。恐ろしいほどのサッカー・センスだな。だけど、さっきのプレーで何かを掴んだ! お前の一人舞台もここまでだ、オルフィノ!)

 神白が勇ましく心中で叫ぶと、高らかにホイッスルが鳴った。ヴァルサ、一点ビハインドで前半終了。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ