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15話

       十五


 暁がシュートを撃ってきた。だがレオンのマークがあり、苦し紛れの感があった。

 神白は悠々とキャッチした。前方に視線を向けて、パントキックを放った。

 その瞬間、ピッ、ピッ、ピー! 主審がホイッスルを吹いた。試合終了。二対一でヴァルサが勝利した。

「くあー、負けたか! 悔しいなぁ! 俺があれを決めてりゃなぁ!」

 数秒後に暁が吠えた。無念さが強い口振りだったが、どこか爽やかさも感じさせた。

 試合後の挨拶を終えて、神白たちはゴドイの話を聞いた。難しい試合だったがよく勝ったと、高揚した口振りで神白たちを称賛した。また天馬が守備に難があるため、今回の布陣はもう少し検討する必要があるともゴドイは話した。天馬は難しい面持ちで、ゴドイの言葉に聞き入っていた。

 神白は、最後の自分のドリブルでの持ち上がりに言及があるのではと考えていたがなかった。神白自身、あの不思議な直感を持て余している感じだった。

 解散の声が掛かり、神白は歩き出した。ヴィライアのメンバーがフェンスから出ようとしているところだった。

「遼河! 今日はありがとう」神白は落ち着いた心境で、暁に感謝を述べた。

 暁は振り返り、神白を認めて雄壮な笑いを見せた。

「もう一歩で大ボスヴァルサ退治完遂、ジャイアント・キリング達成だったってのによぉ! 世の中、甘くねえな」

 強い野心を感じさせる声音で、暁は言い放った。

(遼河らしいな)と神白は得心しつつ、暁に笑いかけた。

「しっかしやっぱりヴァルサはヴァルサだな。一体感が半端ないっつうか、ノッた時の破壊力がとどまるところを知らねえ。ルアレの唯一にして永遠のライバルチームたるゆえんを、今日はまじまじと思い知らされた気分だぜ」

 ルアレの名前が出て、神白はわずかに反応に戸惑った。

 すると暁は、笑みを大きくする。

「樹はわかってるだろうがよ。俺は別に、ルアレの連中を恨んだりはしていないぜ。昇格できなかったのは、純粋に俺の力が足りなかったからだ。恨む筋合いはまったくねえ。だから出て行く時も、監督から寮の部屋の掃除のおばちゃんまで、きっちり全員に感謝の念を伝えた。とってつもなくお世話になったからな」

 ヴィライアもすばらしいチームだし、仲間はみんな良い奴ばっかで充実した毎日を送ってるよ。でも俺は、ヴィライアにい続けるつもりはねえ! 俺の成長に繋がるチームからオファーが来たら、ソッコーで去るつもりだ! 監督から寮の部屋の掃除のおばちゃんまで、全員に感謝の念を伝えてな! でもそれまでは粉骨砕身、ヴィライアのために尽くして、できるだけ大きな置き土産を残せるようにする。サッカー選手ってのは、そういう生き物だろ。なあ樹!」

 暁はぎらぎらした瞳で熱弁を振るった。神白も負けない笑顔で無言の賛同を示す。

「良い試合だった。またやろうよ」しばらく見詰めあってから、神白は率直に本心を告げた。すると暁は握った拳を顔の前に置いた。

 神白も真似をした。すぐに二人はこつんとグータッチを交わした。


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