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13話

       十三


 後半二十分、左サイドでヴィライア8番がボールを持った。5番が走り寄り、ボールを要求する。

「させないっすよ!」天馬が肩をぶつけるが、5番は意に介さない。駆け上がる8番へとダイレクトではたく。

 8番、小さく助走を取る。ヴァルサ3番が寄せた。

 しかし8番はその足を避けてクロスを入れた。ゴール前へとふわりとしたボールが上がる。

 敵味方六、七人がポジション争いを繰り広げている。その中には暁もいた。片足で踏み切り、頭で捉えようとする。

「李!」神白が指示すると、李が飛び上がった。身体の横側をぶつけて、暁と競り合いをする。

 だが暁のほうが到達点が高い。上半身を大きく反らしてヘディング・シュートを撃ってくる。

 神白は右上に跳躍。片手にどうにか当てると、ボールは零れた。ゴールラインまで一mもない。

 アリウムが寄ってきた。右足で蹴ってクリアする。

 ボールの行く先を目で追いつつ、神白は驚嘆する。

(遼河のやつ。まだ同点だってのに、どんだけ攻め上がってくるんだよ! ルアレにいた頃より、アグレッシブさが一段と増してる!)

 斜め前方にボールは飛び、危機は一時的に脱した。

 その後、ヴァルサはヴィライアを押し続けるのだが、得点には至らなかった。また時折、暁の前上がりを交えた鋭いカウンターがあり、神白たちは肝を冷やしていた。


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