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5話

       五


 二十分が経過した。両チームともいまだ無得点だった。ヴァルサのボール支配率は非常に高く、シュートも何本も浴びせていた。だが、暁たちの身を挺したプレーによって、ぎりぎりで防がれてばかりだった。

 ヴァルサがフリーキックを取った。キッカーは天馬だった。両手持ちしたボールを下ろし、とんっと地面に据えた。やがてゆっくりと下がり、静止する。

 笛が鳴った。天馬、おもむろに駆け、右足で捉えた。横回転のボールは人の壁を越え、左下に鋭く落ちながらゴールに向かう。

 キーパー跳躍。左手に当てた。カンッ! ボールはクロスバーに当たり、壁のほうへと跳ねていく。

 駆け寄った暁が腿で止めた。しかしヴァルサは、レオン含めて三人が詰める。

 暁、後方に倒れ込みつつ右足を振り抜いた。暁が足の甲で捉えたボールは、大きな弧の軌道でヴァルサ陣地へと飛来する。

(オーバーヘッドキック! 開始早々のダイビング・ヘッドといい、アクロバティックだな、遼河! ……それにしても、一点が遠い。嫌な雰囲気が漂ってきてる)

 神白が危惧を強めていると、ボールが落ちてきた。落下点では、ヴァルサ6番とヴィライア8番がポジション争いを始める。

 競り勝った8番が頭で触れた。ボールはもう一度弧を描き、ヴァルサディフェンスまで到達する。

「李!」神白が反射的に叫ぶと、センターバック、フリーの状態の李が反応。左足を出して止めようとする。

 だがトラップしたボールは、神白の想定より前に行った。(やばい!)身構える神白の視線の先で、零れたボールを奪取すべく敵9番が走り寄る。

 先に9番が触れた。李は滑り込んだ。スライディングが右足首にかかり、9番は倒れた。ピピーッ! 高らかに笛が鳴り、主審が李へと走ってくる。

 胸元に手をやり、主審はカードを取り出した。色は黄色。イエロー・カード。もう一枚貰えば退場である。

 失意の表情を浮かべつつ、李はとぼとぼとゴール方向へ歩き始めた。

「李! 気にするな! 次だ、次!」神白は即座に励ましの声をかけた。李は顔を上げ、小さく頷いた。


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