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10話

       十


 その後、ミーティングは五分ほど続き、最後にゴドイから解散の声がかけられた。一同は動き始め、神白も帰途につこうとした。すると、左手に柔らかい感触が生じた。

 神白は振り返った。目の前にエレナが立っていた。神白の手を両手で包み込んでいる。

「やったね! 監督たちにお褒めに預かれた! 今日だけで十歩も二十歩も前進したね!」

 エレナの口振りは弾んでいた。茶色の大きな瞳は、眩しいものを見るかのようにきらきらとしている。

「ありがとう。エレナのおかげだよ。あの謎のクラシコを体験して、プレーの幅が広がったっていうか。選手として一段階、成長できた感じがするよ」

 エレナを直視しつつ、神白はゆったりと告げた。嘘偽りのない、率直な気持ちだった。

 神白の言葉を受けて、エレナは満足げに笑った。

「監督も仰ったけど、神白君のサッカー人生はまだまだ始まったばっかりだよ! 倦まず弛まず、私と一緒に進んでいこう! 最終地点はキーパーで二人目のバロンドールだ!」

 力と愛に満ちたエレナの言葉が、じんわりと神白の胸に広がっていった。

「むむっ! 『私と一緒に進もう』っすか! そんなプロポーズまがいの言葉! オレとしては聞き捨てならんにも程があるっすね! やっぱりデキてるんじゃないっすかお二人さん!」

 無邪気な声が割り込んできた。神白は声の主に目をやった。天馬だった。きりっとした表情で神白とエレナを交互に見やっている。

「ちょっと天馬くん? 勘違いしてもらっちゃあ困るわよ。私と神白くんはそんな間柄じゃあないんだから」

 焦った面持ちのエレナは、あたふたと天馬に返事をしていた。「ムキになって否定するあたりがいっそう怪しいっす!」と、天馬は頑なな口調で言い返していた。

 神白は改めてエレナに視線を向けた。端正な横顔を注視しつつ、神白はこれまでのエレナとやりとりを想起する。すると不思議なことにエレナの美貌はいっそう際立ち、神白にとって唯一無二のものに感じられるのだった。


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