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3話

       三


(イレギュラー・バウンドでボールが抜けて、ポストからの跳ね返りが背中に当たってゴール? くそっ! 何でこんなアンラッキーが続く?

 それにビジャル! スピードに乗った状態でも、ドリブル、シュートとも精度が高い! 監督の言葉に誤りはなかった! ジムナスティコ、一番の要注意人物だ!)

 神白は焦燥を深めつつも、ボールをゴールから取り出した。コート中央目掛けてどかんと蹴り込む。

「今のは仕方ないよ。神白君、切替え切替えー!」ベンチのエレナが、手でメガホンを作って叫んだ。高く澄んだ朗らかな声に、神白はわずかに落ち着きを取り戻す。

 ボールがセンターに置かれて、笛が鳴った。天馬が蹴り出して、試合が再開される。

 ヴァルサはゆっくりとパスを回し、中央のレオンへとボールが渡った。レオンは足下に止めて、上がってきた5番に簡単に捌く。

 外にトラップし、5番は顔を上げた。右ウイングの9番が斜め前方に走っている。

 5番は9番にパスした。9番は右で掬ってボールの勢いを加速。縦への突破を試みる。

 背後の6番が足を伸ばした。爪先に掠り、ボールはその場に留まる。

 6番はさっと立ち上がった。そこにレオンが詰める。

 焦った6番は、大きく蹴った。ボールは勢いよく飛び、ヴァルサの守備ラインは後退を強いられる。

 刹那、ジムナスティコの全員が前へと移動。連動して、ヴァルサのパスの出しどころを消していく。

 ヴァルサ同様、ジムナスティコの守備戦術もプレッシング主体だった。前線から最後列をコンパクトにして、敵がどこに蹴ってきても取れるようにする方法である。

 アリウムが背走する。6番のキックをゴールライン上で収めた。だがビジャルがチェイスに来る。

「右だ!」神白が声を張り上げると、アリウムは右方を見た。5番が平行にまで引いてきていた。

 アリウムは5番に出した。5番、滑らかにトラップし、前を見やる。しかしどの選手も空いてはいなかった。

 敵11番が5番に詰める。「ヘイ!」と、神白はそちらに移動した。

 5番からパスが出た。神白、ボールが来る寸前に周囲を見回す。ぴたりと止めて、フリー気味になったレオンに転がす。

(とにかく球離れを早くしていこう。一点目は記憶から消去だ。守りだけがキーパーの仕事じゃあない。頭をフル回転させてビルドアップに貢献しよう)

 神白は冷静に思考を巡らす。視界の端ではゴドイが、難しい面持ちでゲームに見入っていた。


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