15話
十五
一瞬の後、神白は目を覚ました。すぐに地面に目を遣り、自分がサッカー・コートにいると気づいた。
慌てて前方に視線を移した。試合開始直前なようで、相手チーム、白色のユニフォーム姿の二人がセンターサークル内にいた。その足下にはボールがある。
(敵は、微妙にユニフォームが違う気がするけどルアレか? そんで味方は──ヴァルサか。俺は今、ヴァルサのキーパーとして試合に出てるって訳かよ。エレナ、いったい俺に何をした? 催眠術ってレベルじゃあないぞ!)
驚嘆する神白は、相手ゴールの上方に目を遣った。八割方埋まった観客席とスタジアムの屋根とがあった。しかし屋根は透明の素材でできており、鉄骨の梁はどこにもなかった。
(屋根に支えが、ない? どんな技術を使ってるんだ よくは知らないけど、あれで保つのか?)
訝しむ神白は、次に観客席の椅子に着目する。屋根と同じ素材なのか椅子も無色透明で、流線型の滑らかなフォルムだった。スタジアムは全体的に未来を感じさせる様だった。
ピーッ! 高らかに笛の音が鳴り響き、神白は我に返った。ルアレの9番がちょんっとボールを突き、試合開始。