能力説明タイム①
神から聞いた能力などの説明をする為、まず、と絆愛は優信に視線を向ける。
「とりあえず優信は通信能力で、電波が無くともスマホを繋げたり出来るらしい。勿論地球にアクセスするのは不可能だそうだが、スマホ同士での連絡なら可能と言っていた」
「うわあ、僕のそれ中々に強いというか、便利だね」
「ああ、そしてここからがファンタジーなんだが」
「?」
首を傾げる優信に、己は両の人差し指を空中で動かして四角を描いた。
「こう、こういう、ウィンドウをイメージ出来ないか?ファンタジーでよくあるホログラム的なもの」
「イメージって、こう……」
優信は考えるように目を細め、
「……えっ」
驚いたように、パチリと目を見開いた。
が、突然目の前にホログラム的なウィンドウが出現すれば無理も無い。
クラスメイト達も、ブナ王達に対する警戒がまだあるからか声は出さなかったが、誰もが驚きに目を見開いていた。
「よし、出たな」
「出たって、コレ何?絆愛」
「ウィンドウ」
「いや、それは流石にわかるけど……」
「それを私達クラスメイトの前に出現させるイメージをしてくれ」
「サクサク言うね」
「チュートリアルみたいなものだと思ってくれれば良いと思うぞ」
「あー、チュートリアルかぁー……」
うん、と優信は頷いた。
・
クラスメイトで家にお泊まりしてゲームする事が多い為、優信は結構ゲームの知識がある。
立場や家の大きさや一人暮らしという事で優信の家に集まってゲームするのが定番なのだ。
基本的にはパーティゲームが多いが、交代交代でストーリーが重厚な一人用ゲームをする事もある為、どのゲームにも大体あるあの時間帯だと理解した。
・
優信が納得したように眉を下げながら口の端を笑みにしたのを、絆愛は見た。
「えーと……こんな感じ?」
「よし!出来てる!」
己は自分の目の前に出現したウィンドウを見て思わずガッツポーズした。
「うわー、本当に出てるよ……」
「これ触っても壊れない?大丈夫?」
「触って壊れる以前に、ホログラム的なら触れるかどうか……あ、触れる。普通に触れるぞこれ」
「薄い板というか……あれだな、硬い下敷き」
「「「「あー」」」」
口舌、従人、宝がわちゃわちゃとウィンドウを見回し、ソッコで触っていた体刀の感想にクラスメイト達は納得の声をあげた。
彼らもウィンドウを触り、覚えがあるような無いような感触に首を傾げていた為、答えが出た事によって腑に落ちたのだろう。
「で、何かよくわからないまま出せたけど、これ僕どうすれば良いのかな?ウィンドウって言っても無反応というか、電源切ったスマホみたいにオフ状態になっているように思えるよ?」
「確か神は……そうだ、チャットのイメージを重ねてくれ」
「……ごめんね、僕一応先生ではあるけど、流石に今まで習ってない未知の類にはちょっと反応遅れちゃうんだ」
意味が伝わらなかったらしい優信は困ったように苦笑を浮かべた。
「ゲームとかならまだ頑張れるんだけど……えっと、重ねるって、何をどう?」
「ええとだな……」
……神は空中に図を浮かばせて教えてくれたから良かったが、いざ説明するとなると難しいぞこれ……。
我ながら説明が下手でとても困る。
目を伏せ、神に見せて貰った図を思い浮かべながら、己は告げる。
「確か、こう、ウィンドウをパソコンのウィンドウに見立てた上でチャットを想像する、というような」
「あ、出来た」
「早いな」
見れば、目の前のウィンドウには確かにチャット画面が表示されていた。
身近だからこそイメージしやすい、というのがあったのかもしれない。
「それで、これでどうするんだい?」
「これはこうやってチャットが出来るはずだ」
そう言い、絆愛はウィンドウに表示されているキーボード部分を指先で叩く。
愛 『こうだな』
愛 『出来ているか』
「うわ」
愛 『天恵、いきなり「うわ」は無いだろ「うわ」は』
愛 『ただのチャットだ』
愛 『そしてこれはウィンドウを、ええとだな、こうして前に出ているウィンドウは優信が主ではあるものの私達が持ち主認定みたいなもので』
愛 『だから私の前にあるウィンドウの場合、私がブナ王達に見られたくないと思っているとその画面を認識出来なくなると言われたんだが』
愛 『理解出来るか?』
「絆愛って結構説明下手だよね」
「言わないでくれ心声」
絆愛もそれは自覚している。
……口説くだけなら自信はあるんだが、説明はどうにも、なあ……。
しかしこのチャット、どうも能力がハンドルネーム状態になるらしい。
端っこにオプションがあるが、ハンドルネーム設定は弄れ無さそうなのでとりあえず放置にしておく事にした。
地面『あ、普通に書けるのねこれ』
絆愛の様子を見ながら試しにキーボード部分を叩いた地狐がチャット内でそう言った。
地面『じゃあとりあえず私の理解だけど、つまりこれって優信が大元で私達の前にあるのは端末、って事じゃないかしら』
時 『もっとわかりやすくならないかな?』
地面『優信が運営で、私達はゲームプレイヤー。そのゲームをダウンロードした、ね』
因果『成る程』
飛翔『メンテ入ったらこっちはログイン出来なくなるやつだ!』
肉体『画面が見れない云々に関しては、覗き見防止系という事か』
愛 『そうそう、大体そういった理解で良いはず』
愛 『流石は地狐だな』
地面『絆愛が説明下手過ぎるだけだと思うわよ』
ぐうの音も出ない。
が、さて、とブナ王達に向き直る。
「これで準備は整った。今から私達が神から授かった能力についてを解説しよう。ただし私達は私達の共通の知識から連想したりで理解する必要があるので、キミ達への口頭での説明とは別に、通信の方で勝手に独特な説明をさせてもらう。良いだろうか?」
「ああ、構わん」
頷いたブナ王に、己はにっこりとした笑みを返した。
愛 『いやあやはり良いなブナ王!素敵だ!是非とも口説きたい!』
穴 『おいこら』
穴 『独特な説明どこいきやがった』
愛 『表では真面目に説明する必要があるからな』
愛 『あと、皆はまだ彼らを信用し切っていないだろう?』
腐 『そりゃまあな』
木刀『凄い勢いで話がポンポン進むとはいえ、信用まで出来るかって言われたら、ね』
金 『お世話になりはしますが、やむを得ない状況だから、というのもありますし』
愛 『うん、それがわかったからこうしたんだ』
「え?」
顔を上げてどういう意味かとこちらを見る幽良に、絆愛は笑みを浮かべたままチャットを示す。
愛 『信用ならない相手に、自分達の情報を全て開示されたくはないだろうと思ってね』
愛 『私は基本的に皆を愛しているが、クラスメイトである皆の事はとびっきりに好きなのさ』
愛 『そんな皆の嫌がる事はしたくない』
愛 『と、いうわけで先に優信の通信能力でこれを用意して貰った』
愛 『これなら口で最低限の説明をして、詳しい説明はこっちで、という事が出来るだろう?』
通信『成る程』
通信『だから最初に僕の通信能力についての説明だったわけだね』
愛 『そう』
愛 『あとさっき地球へのアクセスは無理だと言ったが、あれは嘘だ』
天 『えっ』
愛 『いや連絡が出来ないのは事実なんだが、どうも検索とか閲覧とか、そういうのは出来るらしくてな』
愛 『ただ時間の流れが違うからなのか、情報の更新はされないらしい』
木刀『絆愛なら普通にそこまで言いそうなのに、嘘を吐くだなんて珍しいね?』
愛 『私達が色々判断した上で利用するならともかく、メリットデメリットを正確に理解出来る程の前提知識が無い異世界人に利用されたら流石に駄目だろう』
愛 『それで戦争が起きたらどうするんだ』
愛 『私は私がこの先出会うだろう素敵な人達の為にも、そういうバッドエンドルート行きの選択肢は潰していくぞ』
木刀『あ、うん、いつもの絆愛だった』
群 『相変わらずイタリアかフランスの血が入っているかのような性格だな……』
耳 『軟派、って言っても良いと思うわよ』
耳 『事実だし』
通信『うんうん、盛り上がってるのは良いけど、とりあえず詳しい事は後で話そうか』
通信『ブナ王達待ってるから、巻いて巻いて』
「おっと」
ついチャットに夢中になっていたので改めてブナ王に向き直る。
・
ブナ王は、勇者達を急かそうとは思っていなかった。
……数十年も昔、まだ幼い頃だったとはいえ、父上の行いはよく覚えている。
あれは酷いものだった。相手に喋らせる隙を与えず、ただ質問を矢継ぎ早に投げかけていた。
突然一人で異世界に召喚された勇者は酷く混乱していた為、わからないまま協力する事に賛成させられ、そこから勇者として戦わされる事になっていた。
最初は勇者と呼ばれ、期待される事を喜んで。
けれどすぐに現実だと、命の危険があるところに出されているのだと気付き、酷く荒れていた。
……イチョウも、思い出してはよく後悔していたな。
ただの一般人を巻き込み、まだ年端も行かぬ少年に酷い事を強制させた、と。
戦う能力では無いのに前線で戦わせ、休みも与えず次の仕事を与え、闇討ちと逃亡を警戒して碌に自由も与えず、ただ利用した。
己はそれを、忌まわしき歴史だと思っている。
二度と、繰り返してはならないと。
……そうだ。
だから己は急かさない。マイペースに語ったり何か手元の板を操作している彼らに何かを言ったりもしない。
だって、彼らに言えない事がある。
……彼らに頼るしかないからと無理矢理連れて来ておいて、帰す術が無いとはとても言えぬ……!
自分とて、父と同じだ。
勇者を人扱いせず、駒扱いした父と同じ。
けれど、せめて。
せめてかつての反省を活かし、きちんとした扱いをしたい。
……誰にも言えはしないが……。
かつての勇者と話した事がある人間ならば、誰もが言う。今この現状は魔王ではなく、勇者の呪いなのではないか、と。
帰りたい、もう嫌だ。
そう何度も泣き叫んでいた彼を知る者は、その恨みを放ったのではないかと、そう言っている。
自分もまたそう思う一人だ。
……呪いは間違い無く魔王のものだが、ここまで酷い有様になったのは、恐らく……。
言わないが、恐らくはそうなのだろうと思う。
その結果がこの有り様であり、ある程度の文化や物資はありながらも心を荒ませ、滅びに向かう一方となった世界。
革命や個人の争いはあれど、戦争をするようなカリスマも余裕も戦力も無いというのが世界の現状。
……このままでは……。
もし魔王の呪いがはびこり、闇の気配に支配されているこのままでは。
そう思った時、
「ではまあ、やはり先程同様、出席番号順に説明するとしようか」
敵意と警戒を剥き出しにしている他の勇者と違い、唯一こちらに好意的な態度の勇者がそう言って笑った。
「優信のは既に説明したから、無しで良いだろう?」
「うむ」
頷けば、その勇者はにこりと笑う。
それは、とても好意的な笑みだった。
・
まずは掃潔だな、と絆愛は思う。
「最初は掃潔の能力だが、能力は病だ」
「本当にどういう能力なんだ、俺のそれは」
「まあ、端的に言うと病を治したりが可能な能力だな」
「ほう」
己の言葉に、ブナ王は興味ありげに頷いた。
「魔王亡き後、呪いによって病で床に臥せる人間も多いのでな……それはありがたい」
「どうやら生活習慣病などまで治せるようだが、まあ最初の頃は危険な病状の患者を数人、という程度だろうな」
「ああ、制限というものか」
「その通り」
追従『制限?』
愛 『ゲームでもMPとかそういうのがあるだろう?アレに近い』
愛 『特典ポイントであるTPという名称らしいが、最初はかなり制限があるぞ。優信が出すこのチャットも、今出ているのを消せば明日まで使えないだろうしな』
通信『成る程、発動用のエネルギーというわけだね』
金 『それってレベルが上がると自然と多くなるタイプですか?』
金 『ゲームのMPみたいな感じで』
愛 『いや、どっちかというと筋トレで身に着く筋肉みたいなものらしい』
愛 『使えば使う程馴染んでいって、能力が向上していき、上限も上がるとか』
水 『つまりはアップデートですね』
水 『不具合が認識されたら不具合を修正したり、新しくスキップやオートシステムが更新されるのと同様、能力の使い勝手が良くなっていく、と』
愛 『そういう事だ』
通信『ところで僕は今こうして通信能力を使っているわけだけど、これって大丈夫?』
通信『回復まで時間掛からない?』
愛 『明日まで使えない、と言っただろう?』
愛 『基本的にこのTPに関しては寝れば回復するというRPGの勇者的システムらしいから問題は無い。今は魔法を連発するとすぐにMP切れを起こしてしまう序盤、みたいなアレだ』
「「「あー……」」」
その声としみじみした皆の頷きに、納得してくれたらしい、と判断した絆愛はブナ王との会話を続行する。
「ただし、この時に……患者を治す時に重病患者のみだと言うと「自分もそうだ」「家族がそうだ」とか言う困った人が居るかもしれん」
「…………確実に出るであろうな」
心当たりが物凄くあるらしいブナ王は神妙な顔でそう言った。
愛 『あ、ちなみに病を操る能力だから、病を治すだけじゃなく病にさせる事も可能らしいぞ』
愛 『一時的に鎮静化させたり、一時的に悪化させたりも、な』
通信『うわあ』
耳 『物凄くヤバいヤツじゃない』
病 『俺一人でマッチポンプが出来るぞ。どうしよう』
水 『いえ、普通に使わなければ良いのでは?』
追従『でも使わないとどのくらい扱えるのかわからなくないかい?』
再生『そっちの方が危険、だよね』
見 『実はさっきから私、能力によるものなのかめちゃくちゃ外の様子が見えていてな』
見 『魔王が居る辺りお察しだが普通に魔物が居る世界感のようだし、魔物相手に試したらどうだ?』
穴 『あー、それ良いんじゃね?』
心 『魔物相手には出来るけど人間には無理、って言っておけば良いかもしれないねん』
病 『成る程』
チャット内で話している間、ブナ王は真面目な顔で考え込んでいた。
「あらかじめ能力による限界があるからという事で人数制限を設けるか……」
「可能人数より三人少ないくらいが上限だと思うぞ。緊急の患者が出た時用にな」
「成る程」
……やはりブナ王、かなり良い人だよなあ。
ふむふむと頷くその姿はこちらの意見を柔軟に取り入れようとしているように見える。
基本的に絆愛はナンパされたらソッコでのこのこついて行くタイプなので一切参考にはならないが、そう思えた。
「……一応こちらとそちらの文字は共通、または神の恩恵故か問題無いようだが、常識が微妙に違っていたりする。その為しばらく王城で滞在していてもらい常識やこちらの文化や歴史についてを学んでもらう予定だったが……その間に、滞在場所を用意しておくか」
「滞在場所という事は、私達が活動する用の本拠地を用意するという事か?」
「いつまでも王城滞在というわけにもいくまい。貴殿らも儂らが居る空間というのは、監視される空間のようで落ち着かぬだろうしな」
その言葉に、絆愛は一瞬きょとりとした。
愛 『やっぱりブナ王良い人だぞ!?なあ!』
愛 『ああもう口説きたい!』
愛 『その透き通った瞳はとても美しくて、けれどその奥には憂いが見える。その憂いもまた美しいものだが、私がその憂いを取り払う事が出来たならどれだけ良いか!そして憂いが晴れる事でより美しくなった瞳を一番に見る事が出来たならどれだけ最高かと、ああ!』
愛 『口説いちゃ駄目か!?』
全員『駄目』
因果『あ、これ複数人で同じ返答すっとこうなんのか』
新発見だが、口説いちゃ駄目と言われて絆愛はちょっとしょぼんとなった。
素敵な人は男女関係無く口説きたくなり、その人と同じ時間を少しでも良いから過ごす事でその幸せな時間を引き伸ばしたいと、そう思っているだけなのだが。
皆にはどうにも止められてしまう。
……私の場合、口説いた結果ストーカーになった相手でもつい褒めてしまうからなあ……。
守られている自覚がある為、駄目と言われたら従っておいた方が良いのも事実だ。
どうしても否定より肯定をしてしまうのが絆愛だった。
「ええと、口説いちゃ駄目口説いちゃ駄目…………」
「どうした」
「いや、うん、何でも無いぞ。ではなく少し気になったんだが、旅をさせたり、というのではないんだな?本拠地と言う辺り」
「魔王は既に討伐されていて、世界中に呪いが蔓延している状態が現状だ。そして他の場所の民には申し訳ないが、儂としてはこの辺りから着手してもらいたい」
やむを得ずの消去法と言わんばかりに、ブナ王は苦々しい顔で拳を握った。
「今、民の心は荒れている。例えば二割の重症患者が治され、貴殿らが他の患者を治す旅に出るとする。そうすると、残りの八割の内悪化するものがどれだけ居るか。残りの八割の身内が、治った者に対し、お前が居なければこちらが治せてもらったのに、と……そう八つ当たりをする事が無いとも言えぬ」
「……それが現状か」
「うむ……」
……それは異世界人の勇者を召喚してでも対処したい事ではあるな。
心が荒めば世界は荒れる。
確かに、着実に世界全体を向上させたいと言うならば、一カ所ずつ完璧に向上させていく方が良いだろう。ゲームだって、基本的には一章を全部クリアして初めて二章に行けるようになるものだし。
「まあ、そうだな。出来れば本拠地は全員で住めると良いんだが……可能か?」
「…………正直、分野ごとに分けざるを得ぬと思う。勇者が二桁も居る場所だと思うと、そう気軽に治療を頼みには来れまい。荒れた心のまま、理不尽を掲げて突入する者ならばともかく」
「安全面的にもそうなるのは仕方がないか……」
飛翔『え、私バラバラとか嫌だよ!?』
穴 『だがバラけた方が安全っつーのは確かだろ。カチコミは警戒しとけ』
通信『一応僕の能力があるから連絡は出来るけど……』
通信『行き来がしやすい位置にそれぞれの拠点を構えてもらって、尚且つ一つだけ大きな拠点を用意して貰うとか?』
群 『そこに集まる、というのは良いだろうな』
腐 『能力別に分かれたりってなるのか?』
情報『いっその事一部は拠点無しにして、あちこちの拠点をその時によってふらふら移る、というのもありかもしれませんね』
地面『似た能力、あるいはそこに必要な能力別で分けられる可能性があるから、それもありね』
時 『あ、皆結構普通に受け入れる気満々なんだ』
耳 『しばらくはここで皆一緒に居られるらしいから問題は無いわ』
耳 『それにお泊まりはすれど今まで皆、別の家に暮らしてたじゃない』
耳 『そう思えば組み分けでシェアハウス、っていう方が距離は近いわよ』
肉体『懸念は学校が無いから会う頻度が下がる部分だが、まあ私達だからな』
肉体『会話をしようとも会わずに居たら物凄く寂しくなるから、勝手に集まるだろう』
愛 『進言しよう』
……ブナ王の様子からすれば、こちらの安全を考えながらも、応えられる要望には応えようとしてくれているようだからな。
「拠点についての頼みなんだが、一つだけ大きくする事は可能だろうか」
「一つだけ、か?」
「時々直に会ったり無事を確かめたり情報を交換したりする為の、集まる場所を設けたいんだ」
「ふむ、わかった。ただしこの人数が集まり違和感が無い場所、かつ相当の広さとなると……何かしらの施設を開く事になってしまう可能性が高いが、良いか?」
「ものによる。選択肢が浮かんだ際には逐一意見を聞きに来てくれると助かるな、その場合」
「了解した」
ブナ王の頷きを見て、やはり良い人だなと思う。
適当を言う事も無くしっかり真摯に向き合ってくれているその姿は、口説きたくなる程に素敵だ。
まあ己は基本的に老若男女問わず口説きたいと思ってしまうが。
「……と、能力についての続きを話すか」
つい脱線してしまった。